太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで(下)
イアン・トール(著)
,村上和久・訳(訳)
/文藝春秋
作品情報
攻撃か、防御か。戦力か、情報力か米国の若き海軍史家が“日本が戦争に勝っていた百八十日間”を日米双方の視点から描く。米主要紙絶賛の、まったく新しい太平洋戦史。【目次】第7章 ABDA司令部の崩壊第8章 ドゥーリットル、奇跡の帝都攻撃第9章 ハワイの秘密部隊第10章 索敵の珊瑚海第11章 米軍は知っている第12章 決戦のミッドウェイ終章 何が勝敗を分けたのか
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商品情報
- シリーズ
- 太平洋の試練
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 書籍発売日
- 2016.02.10
- Reader Store発売日
- 2016.03.25
- ファイルサイズ
- 4.8MB
- ページ数
- 512ページ
- シリーズ情報
- 既刊6巻
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この作品のレビュー
平均 5.0 (5件のレビュー)
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ミッドウェー海戦の敗戦の決定的な要因は、暗号解読ではなかった
この本を読むまで、日本にとってミッドウェー海戦は、事前に米側に暗号を完全に解読されていた時点で、負けるべくして負けた、振り返るのも気の重い戦いだと思っていた。
しかし本書によると、敗戦の決定的な要因は…、必ずしも暗号解読ではなかったようだ。
もちろん作戦が筒抜けだったのだから、さすがに日本側の完勝はあり得ないが、少なくとも痛み分け、もしくは不戦敗ぐらいにはできたのかもしれない。
勝敗を分けたポイントは、一度は見失った日本空母を再び発見できたという幸運とヨークタウンのあり得ないほどの不沈ぶりと日本側の消火のまずさ。
これまで言われてきたように、ミッドウェー海戦は米側が、日本側の暗号をまるごと解読できたから負けたわけではない。
苦労しながら少しずつの成功だっため、現場では不確かで矛盾する情報に最初は信じられていなかった。
確かに、事前に日本軍の攻撃目標がわかり、さらにその日時までつかめたのは、「空母機動隊二個分に匹敵する価値」だった。
念のため、ひっかけをして再確認が取れた時も、その目標の戦略上の重要度の低さのため、日本側がかついでいるのではと疑ったくらい。
これを読んでわかったが、暗号解読者のその後は不遇で、きちんと評価されはじめたのは戦後しばらくたってから。
前もって攻撃目標と日時が分かっていたにもかかわらず、米側は勝利までに犠牲を出し過ぎ、その勝ちさえも幸運によってひろっている。
ただ、空母に群がる米軍機が悉く返り討ちにあったことで、それまで動揺していた日本側の油断を誘ったというプラスの面はあるかもしれないが、それは意図せざる結果だろう。
スプルーアンスは攻撃隊が全機揃って発艦する前に攻撃を命じているが、これは日本軍に比べて発艦にそもそも時間がかかりすぎていたことと、日本側にこちらの艦の所在を知られたためであるが、それによって第8雷撃飛行隊はすべてゼロ戦に撃ち落とされている。
むしろ、それだけ発艦に時間がかかるのに全機揃って編隊を組んで向かわさせようとしたので、著しく時間をロスしており、事実目的地に駆けつけた時には日本軍はおらず、ただ大海原が広がるだけだった。
探し回った末に、たまたま運良く見つけることが出来たのも、パイロットの勘がすぐれていたことと、南雲提督があろうことか米空母に接近するよう命じていたため。
第一撃でミッドウェー島の攻略に成功しなかったことと、ありえないほど早く敵空母が周辺海域に現れていることをもって、作戦を中止し撤退していれば良かったが、南雲艦長はむしろ敵艦に向けて前進したことが、一度は見失った敵パイロットに発見される不運を招いたようだ。
一度は大破させたはずのヨークタウンだが、実はまだ沈まず動いていて、日本側のパイロットが戻って再度二艦目の標的を探していたところまたも発見され、さらに致命的な打撃を受ける。
日本の潜水艦が魚雷を見舞うまで沈没しなかった。
珊瑚海海戦から数えて4回目の攻撃でやっと沈没すると言う不沈ぶりが凄い。
米側にとっては、
・暗号解読によって日本側の奇襲をさけられ、ミッドウェー島の防備を固めることが出来たこと、
・無敵の日本艦隊やゼロ戦に対して不安はあったものの、不思議と戦闘意欲は高かったこと、
・ゼロ戦に対する必勝戦法を編み出しつつあったこと、
などがこの戦い前までの有利な点であったが、それでも、
・暗号解読していたにもかかわらず不完全な奇襲になったこと、
・米空軍パイロットの技量が極めて拙かったこと(命中率が悪く、弾を無駄にしすぎたり、発艦に時間がかかりすぎる)
などによって、危うくこれほどの大勝を逃しかけていた。
日本側にとっては、
・暗号解読により思わぬ奇襲にあったが、それまでが相手を呑んでかかっていたためか、さほどパニックにもならず冷静に対処できたこと、
・零戦乗りの技量がずば抜けていて、稚拙なトップの失敗を何度も救ったこと、
など有利な面もあったのだが、最後には挽回しきれない不運とミスが重なった。続きを読む投稿日:2016.05.13
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ミッドウェイの陰に隠れがちだが珊瑚海海戦もだいじ
下巻では、ドゥーリットルの東京空襲、米軍の暗号解読、珊瑚海海戦そしてミッドウェイ海戦へといたる。前線の兵士の証言も収録し、歴史的なところだけでなく戦争の悲惨さも伝わる。
むかし空母ホーネットのプ…ラモを作ったのだが、それにはB-25 も付いてきていて、子供心ながら「こんなデカイ飛行機が空母から飛び立てるのだろうか」と思ったものだ。実際、空母から双発爆撃機を飛ばすのはかなり意表をついた作戦で、発艦させるだけでもギャンブル的なところがあったようだ。
日本海軍の暗号が米側に解読されたいたことはよく知られていると思うが、本書ではそれがなかなか一筋縄ではなかったことがよく分かる。既知の出来事に関する暗号文が、解読のための良い手がかりになるというのは面白い。
ミッドウェイの陰に隠れがちだが珊瑚海海戦こそ初の機動部隊同士の交戦であり、まさに日本軍のターニングポイントという要素を複数持っていた。本土から遠く離れて伸び切った兵站線、開戦以来の疲労がたまった部隊、空母が被弾した際のダメージコントロールの重要性、米軍の新型レーダー。日本軍は微妙な戦術的勝利こそおさめるが、ポートモレスビー攻略という戦略目標は果たせない。
そしていよいよミッドウェイなわけだが、皮肉かつ面白いところは、米軍が事前に日本軍の作戦内容をかなり詳細に把握しながらも、その主たる、かつ唯一有効と思われる作戦目的である米機動艦隊のおびきだしに結局は乗っかっているところ。キング提督は味方機動部隊を危険にさらさないように指示したが、スプルーアンスの追撃自重をのぞけばあまり遵守されたとも言いがたい命令だったと思う。ただその一方で、連合艦隊は、米機動部隊が誘いに乗ってきたにもかかわらず、ミッドウェイ環礁の攻略か敵機動部隊の捕捉・殲滅かで、戦略レベルでも戦術レベルでも目標を絞り込めなかった。そのもっとも大きな要因は米機動艦隊の所在がまったく分からなかった情報不足だが、それを脇においても作戦計画そのものの不明確さは否定しがたい。
いろいろ書いたが、日本にとってはどうにも勝ちようがない、これ以上やりようがない戦争であったのは強く感じた。仮にどれかひとつに絞り込めたとしても、ハワイもオーストラリアもインドもちょっと無理な作戦目標だっただろう。続きを読む投稿日:2017.08.21
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