進化しすぎた脳
池谷裕二(著)
/ブルーバックス
作品情報
『しびれるくらいに面白い!』
最新の脳科学の研究成果を紹介する追加講義を新たに収録!
あなたの人生も変わるかもしれない?
『記憶力を強くする』で鮮烈デビューした著者が大脳生理学の最先端の知識を駆使して、記憶のメカニズムから、意識の問題まで中高生を相手に縦横無尽に語り尽くす。
「私自身が高校生の頃にこんな講義を受けていたら、きっと人生が変わっていたのではないか?」と、著者自らが語る珠玉の名講義。
メディアから絶賛の声が続々と!
『何度も感嘆の声を上げた。これほど深い専門的な内容を、これほど平易に説いた本は珍しい』――(朝日新聞、書評)
『高校生のストレートな質問とサポーティブな池谷氏の対話が、読者の頭にも快い知的な興奮をもたらす』――(毎日新聞、書評)
『講義らしい親しみやすい語り口はもちろん、興味をひく話題選びのうまさが光る』――(日本経済新聞、書評)
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商品情報
- シリーズ
- 進化しすぎた脳
- 著者
- 池谷裕二
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 数学・物理学・化学
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- ブルーバックス
- 書籍発売日
- 2007.01.19
- Reader Store発売日
- 2024.03.27
- ファイルサイズ
- 30.9MB
- ページ数
- 400ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (223件のレビュー)
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【まとめ】
1 進化しすぎた脳
人間の臓器の中で、場所によって働きが分かれているのは脳以外にはない。聴覚野では個々の場所によって聞き取れるヘルツ数が代わり、体性感覚野にいたっては、脳場所に応じて指、舌…、足など対応する体の部分が細かく決まっている。
視覚野に届いた情報は、側頭葉に向かう「何」を見ているか=「whatの回路」と、頭頂葉に向かう「どんな」状態か=「howの回路」とに分かれ、処理される。そのため、この部位を損傷すると、ペンやボールが目の前にあってもそれが何かわからないが、触ると(触覚を使うと)わかるようになる、といった現象が起こる。
これを利用したのがネズミを電気でコントロールする実験だ。
ネズミの脳に3つの電極を刺し、うちふたつはヒゲを感じる脳部位に、もうひとつは報酬系に刺す。ネズミは「右側のヒゲが触られたな」と思ったとき、右側に動く。そこで、右に動くと報酬系が刺激されるようなリモコン装置を作っておく。また、「左側のひげに何かが触ったな」とネズミが感じて左側に動くと、これまた報酬系が刺激されて報酬が得られるようにしておく。そうすると、ネズミはどんなに美味しいごちそうが目の前にあっても、右左、右左と、リモコン装置の操る人のとおり、報酬を求めて死ぬまで移動しつづけるのだ。
生まれながら指がつながったままの人の脳を調べてみると、5本目に対応する場所が無い。これは、人間の体には指が5本備わっていることを脳があらかじめ知っているわけではなく、生まれてみて指が5本あったから5本に対応する脳地図ができたのだと考えられる。また、4本の人が手術をして後天的に5本にしたとする。そうすると、わずか一週間後には5本目の指に対応する場所ができ、動かすことができるようになった。
つまり、脳と言うのは入って来る情報に応じて、臨機応変でダイナミックに進化しうるのだ。
生まれ持った身体や環境に応じて、脳は自己を生成していく。人間にもし手が10本あれば、それに対応する形で脳が適応できていたかもしれない。
人が成長していくときには、脳そのものよりも、脳が乗る体の構造とその周囲の環境が大切なのだ。逆にとらえれば、脳と言うのは身体に比べて過剰に進化してしまった、と言えるだろう。人間の全能力がフルで使いこなされていないのは身体に制約があるからだ。
2 感情は脳の解釈にすぎないのか?
脳は、目で見えていない部分や気づかない部分についても、まるで穴を埋めるかのように自動補完する機能がある。
例えば、眼の網膜。網膜は中心に近づくにつて、色を感じる細胞の密度が高くなっていくが、周辺にいくと密度が下がるどころか、ほぼゼロになってしまう。そのため、人間の見ている世界は、視野の中心部のごく狭い範囲しか色が見えておらず、周辺部は白黒に映る。にもかかわらず隅々まで色が見える理由は、脳が色を勝手に埋め込んでいるからだ。
人の活動の大部分を占める「見る」という行為でさえ、脳が無意識のうちに補完をかけている。そう考えると、人間が意識的に行っていることはいったいなんなのか?
●筆者の考える「意識」の最低条件
①表現の選択
②ワーキングメモリ(短期記憶)
③可塑性(過去の記憶)
もっとも原始的な人間の感情は「恐怖」であり、恐怖という感情を生み出すのは「偏桃体」という脳の場所である。重要なのは、偏桃体が活動していれば危険を回避できるが、偏桃体の活動には「こわい」という感情はどこにも入っていないこと。偏桃体が活動してその情報が大脳新皮質に送られると、そこではじめて「こわい」という感情が生まれる。動物は「こわいから避ける(感情→行動)」ではなく、こわいかどうかという感情とは無関係に避けているだけだ。「こわい」「かなしい」といったクオリア(我々が意識的に主観的に感じたり経験したりする「質」のこと)は、神経の活動の副産物、つまり幻想でしかない。
見るとは、物を歪める行為であり、一種の偏見である。その理由は、世の中は三次元なのに網膜が二次元だからだ。二次元の網膜に映ったことを脳は強引に三次元に再解釈しなければならない。これは脳が背負った宿命である。
見るという行為は、おそらく人間の意識ではコントロールできなくなってしまった。僕たちは脳の解釈から逃げることができない。見えるというクオリアは、脳の不自由な活動の結果なのだ。
3 あいまいな記憶
人がなぜ抽象的な思考をするのかというと、おそらく生きるための知恵として、目の前にある多くの事象の中から隠れたルールを抽出する必要があるからだ。
人間の記憶は他の動物に例を見ないほどあいまいでいい加減だが、それこそが人間の臨機応変な適応力の源になっている。そのあいまい性を確保するために、脳はものごとをゆっくり学習する。色んなものを見て、それらに共通している特徴を抜き出すために、脳の判断は遅くなっている。
では、あいまいさが発生する原因はなにかというと、シナプスが情報を伝達したりしなかったりするからである。
脳は、電気信号を発して情報をやりとりする神経細胞のネットワークによって成り立つ。そのネットワークをつくる神経細胞の接続部をシナプスと呼ぶ。シナプスに向かって活動電位(スパイク)が来たら、次の細胞に向かってその情報を伝えるために物質を放出しなければならない。しかし、必ず放出されるわけではなく、シナプスによって確率が違う。例えば筋肉をつかさどっている運動系のシナプスはほぼ100%の確率で放出されるが、大脳の細胞などは確率がとても低く、場合によっては20%の確率でしか起こらない。これが理由で、脳の正確性はあいまいなのだ。
4 人間は進化のプロセスを加速させる
アルツハイマー病が自然淘汰されなかったのは、ほとんどが歳をとってからの病気だからだ。人間という動物は長生きをしすぎため、本来だったら発症しなくて済んだ病気にもかかるようになっている。
今人間のしていることは自然淘汰の原理に反している。いわば逆進化だ。現代の医療技術がなければ排除されてしまっていた遺伝子を人間が保存している。その代わりに人類が何をやっているかというと、自分自身の体ではなく環境を進化させている。環境に合わせて身体を作り変えるのではなく、逆に環境を支配してきたのだ。
現代では「進化のプロセス」自体が進化し、新しい進化法が生まれようとしている。続きを読む投稿日:2021.08.28
講義形式で進む内容は、著者の思考にも触れることができ、論理的な展開は痛快だった。題名の「進化しすぎた脳」と表現されている意図は汲み取れず、本の内容と一致しきれていないように感じる。
投稿日:2024.02.21
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