奇跡のフォント 教科書が読めない子どもを知って―UDデジタル教科書体 開発物語
高田裕美(著)
/時事通信社
作品情報
読み書き障害でも読みやすいフォントが生まれるまでのノンフィクション!
UDデジタル教科書体の完成から3年が経った頃、私は仕事の関係で、障害のある子どもの教育や就労を支援している会社を訪れました。
そこでは発達障害、学習障害、ダウン症といったさまざまな困難を抱える子どもたちを支援する学習教室を運営していたのですが、あるベテランの女性スタッフの方が、こんな話をしてくれました。
「うちの教室に、ディスレクシアの小学生の男の子がいるんです。その子は普通の本や教科書では文字がうまく読めなくて、『どうせおれには無理だから』って、いつも途中で読むのを諦めていたんです」
「それで、あるときUDデジタル教科書体のことを知って、試しに教材のフォントを変えてみたんです。そしたら教材を見た瞬間、その子が『これなら読める! おれ、バカじゃなかったんだ!』って。暗かった顔がぱあっと明るくなって、その顔を見たとき、私、思わず涙がこみあげてきてしまって。その場にいたスタッフ皆、今まで男の子が悔しい思いをしてきたのを知っていたから。みんなで男の子の周りに集まって、泣いてしまいました」
(「はじめに」より抜粋)
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この作品のレビュー
平均 4.0 (22件のレビュー)
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自分のPC(Windows10)にも入っている「UDデジタル教科書体」フォントが世に出るまでを描いた本。UDとはユニバーサルデザインのことである。
ロービジョン(弱視)のため文字がはっきりしない…。ディスレクシア(読み書き障害)で文字が動く、重なって見える。視覚過敏で明朝体の「はね」とか「はらい」が突き刺さるように感じられる。そうした子供たちに配慮したフォントがUDデジタル教科書体。
本書では、作者が書体デザイナーになるまでの道のりから、ロービジョンの当事者や教師、研究者の方から意見を聞くなどしてフォントを開発してきた経緯が紹介されている。
さらには、UDデジタル教科書体を使用する際のアドバイスも載っている。
そして、本書の本文には「UDデジタル教科書体」が使われているのだ。続きを読む投稿日:2023.07.07
フォント自体は素晴らしいです。それによって多く人が救われたのも事実でしょう。
ただ、そこに至るまでの筆者の人生は自分が求めているものではありませんでした。大変申し訳無いのですけれど蛇足のように感じ、半…分以上は読み進めるのが困難でした。
肝心のフォントについての説明はとても良かったです。いままでの教科書体との違いもよくわかりました。
こちらのフォントが教育現場でどのように活かされているのか、子どもたちにどう受け止められているのか等、そのあたりのエピソードはとても良かったです。
9割読んできたのだし、具体的な話が載っているであろうラストのほうが自分が求めていたものだろうとは思いつつ、力尽きました……。残念です。
フォントについて知りたい方は、「はじめに」と「第4章」(あるいは「第5章」)以降だけ読んだら良いと思います。
2024/05/07 p.2-22
p.5,7
どのように見えているのか再現しているこの表現、素晴らしいです。わかりやすいです。
p.6
“
(前略)文字がゆらいだり、ねじれたり、反転して見えることさえあります。
こうした障害を「ディスレクシア」(発達性読み書き障害)と言います。
”
(中略)
“1クラス(35人)のうち2〜3人の子どもは、読み書きに何らかの困難を感じていることになります。”
(中略)
“それだけ“隠れディスレクシア”の子どもたちが、身近にいる可能性があるのです。”
聞こえているのに聞き取れないAPD(聴覚情報処理障害)のように、実は身近にいるけれど、気づいていないのでしょうね……。
2024/05/08 p.22-28
p.25
“それなのに、私には何もない。私も「これだけは人に負けない」というものがほしい。”
多くの人は平凡で、何もないのが当たり前だと思います。全員に負けたって別にいいのです。
どんなことであっても、誰よりも……と思ってしまうとかなり苦しくなります。自分が穏やかに過ごせるなら何だって良いのです。
2024/05/09 p.28-33
2024/05/11 p.33-47
2024/05/14 p.48
2024/05/19 p.48-124
p.48
“私は毎朝、硯で墨をすり、墨汁を足して、その配合を先輩にチェックしてもらい、合格が出ないと作業ができませんでした。”
そんな時代があったのですねえ……。それだけで数十分、下手したら最初の1時間が消えてしまいそうです。
日にちが変わればまたやらなければならないですから、なおさら大変ですよね。ベストなものを保存できたら良いのですけれど。
p.51
“いつの間にか、脳内でデザインチェックを始めてしまい、書かれた内容が全く頭に入ってこないなんてこともよくあります(完全に職業病ですね……)。”
日常生活を送る中で仕事に関するものに反応してしまうのは、いつの時代でもあるあるですね。
p.55
“私も男性社員と同じように働かせてください!”
ここまで熱意があるのは凄いです……。わたしはそんなに働けないです……。
p.76
“このカリグラゴシックの骨格をベースとして、「UDデジタル教科書体」が誕生することになるのです。”
ようやく、この話につながりましたか……!
あまりにもお仕事の話が長くて挫折しそうでした……。こんなお仕事があったのだなぁ……と思う気持ちはあるものの、興味があるのは教科書のフォント。そちらがメインではないの? と困惑してしまっていました。
2024/05/21 p.124-195,以降挫折
p.152
“展示会などでフォントの説明をすると、教育関係者や出版社、役所の人々から非常に高い評価を得ていたためです。”
その評価を高田さん等社内の方に伝えていなかったのではないか? と思ってしまいました。伝えていたらきっと、あんなに落ち込むこともなかったのではないかと思います。
他の会社のやり方にどうこう言える立場ではないですけれども。大人だって褒められたいです。
p.162
“2016年5月、モリサワは東京ビッグサイトで行われる「EDIX」(教育総合展)で、UDデジタル教科書体のリリース発表展示を行うことになりました。”
EDIX出ていたのですね。最近その展示について知ったので、なんだか感動してしまいました。
p.170
“先生は、教材を従来の教科書体とUDデジタル教科書体で作成し、見やすいほうを子どもたちに選ばせているそうです。”
子どもが自分で選べるのが良いですね。読みやすいかどうかは人それぞれですから。続きを読む投稿日:2024.05.21
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