今を生きる思想 福沢諭吉 最後の蘭学者
大久保健晴(著)
/講談社現代新書100
作品情報
一九世紀後半、西洋は近代文明のモデルである一方で、独立を阻む脅威でもあった。この文明と独立の矛盾を乗り越えるために、福沢が重視したのが学問であった。グローバル化の始まりを目撃した蘭学者の軌跡。
【本書の内容】
当たり前の常識を疑い、意見の異なる他者と討議する。それこそが自由な空間であり、社会は前進する――。
学問と政治のあるべき姿を求めた福沢の思索を辿る。
●演説・討論を生んだ徳川期の知的共同体
●大坂の片隅でグローバル化の原理を探る
●攘夷思想とは異なる福沢の「兵学論」
●自由と専制の戦いだった明治維新
●自由は不自由のなかに生まれる?
●統計学ブームの火付け役
●トクヴィルを援用した「地方分権」論
●メディアの発展が情念をかりたてる
●蘭学者の「脱亜論」
福沢自身、明治八(一八七五)年公刊の『文明論之概略』のなかで、儒学が主流であった徳川時代と、西洋文明が洪水のように押し寄せる明治日本とは大きく異なると指摘し、まるで一つの身体で二つの人生を生きているようだとして、「一身にして二生を経るがごとく」と評した。政治社会は、「革命」的に変わった。では、この大きな動乱のなか、なぜ福沢はそうした鋭く冷静な洞察を提示できたのか。それは、福沢が徳川期から「蘭学」を通じていち早く西洋学術に触れていたからに他ならない。歴史は重層的であり、江戸と明治を架橋する文化的鉱脈の持続と変容に光を当てる必要がある。
徳川日本は、文化的な成熟を背景に、部分的とはいえ世界に開かれていた。その際、当時の学者たちが世界の情勢や学問を知るための手がかりとしたのが、蘭学であった。西洋世界との出会いについても、開国期からではなく、江戸期の西洋学である蘭学に遡って考えなければならない。――「はじめに」より
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商品情報
- シリーズ
- 今を生きる思想 福沢諭吉 最後の蘭学者
- 著者
- 大久保健晴
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書100
- 書籍発売日
- 2023.03.16
- Reader Store発売日
- 2023.03.10
- ファイルサイズ
- 2MB
- ページ数
- 128ページ
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この作品のレビュー
平均 4.7 (3件のレビュー)
-
いつも利用している図書館の新着本リストで目についた本です。
“福沢諭吉” という人物には以前からちょっと関心があったので、今までにも、その著書である「学問のすゝめ」「福翁自伝」や北康利氏による「福…沢諭吉 国を支えて国を頼らず」といった本を読んだことがありました。
本書は、久しぶりの“福沢本”です。“蘭学者”という側面を基点にした「福沢諭吉再考」ですが、100ページ強のボリュームのなかでその論旨は要領よく紹介されていました。続きを読む投稿日:2023.06.10
蘭学が日本の文明を変えることに寄与した軌跡がわかる。「窮理」など、その時々で福澤が触れた学問からその本質をつなげる力、日本の今に大きな影響を与える思想家。押し付けではなく、人々それぞれが自分の頭で考え…るに必要なことを福澤は示唆する。
福澤の思想や考え方は、混沌とした今を生きること、未来においてもおそらく必要なエッセンスがある。お札の肖像でなくなることがもったいない。続きを読む投稿日:2024.03.10
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