ジェンダーで読み解く男性の働き方・暮らし方 −ワーク・ライフバランスと持続可能な社会の発展のために
多賀太(著)
/時事通信社
作品情報
新型コロナウィルスの蔓延にともなうリモートワークの拡大は、男性の働き方と暮らし方を根本から揺るがしている。多くの男性は、仕事場が会社から家庭へと変化し、家庭で過ごす時間が格段に長くなった。それにともない、男性の家事・育児参加の促進が期待される一方で、一部の男性による虐待やDVの増加を懸念する声も聞かれる。
これまで、男女平等化の流れの中で、長年にわたり男性の仕事中心の生き方が批判され、男性の家庭参加やワーク・ライフ・バランスの必要性が訴えられてきたが、あまり大きな変化は見られなかった。ところが、コロナ禍は、瞬く間にそうした従来の男性のライフスタイルを大きく揺るがした。今後、私たちの働き方と暮らし方はどう変化していくのだろうか。それは、社会の男女平等化を促すのだろうか、それとも形を変えながらも男性優位の社会が持続していくのだろうか。そうした中で、特に男性たちは、どう振る舞い、どう生活を組み立てていけばよいのだろうか。
コロナ禍に伴う働き方や家庭生活の変化については、すでに多くの論者や各種メディアによってさまざまに論じられているが、男女平等化(ジェンダー平等)という社会の大きな流れを背景とした男性の仕事と家庭生活をめぐる戸惑いに、さらにコロナ禍が追い打ちを掛けようとしている状況を正面から取り上げたものはいまだほとんど見られない。
本書は、コロナ前からコロナ後にかけての日本社会における男性たちの仕事と家庭生活をめぐる現状と課題について、労働社会学、家族社会学、ジェンダー学などの学術的知見に基づいて多角的に考察し、一般読者に向けて平易な言葉で分かりやすく論じるものである。これにより、混迷を極めるポストコロナ社会に向けて、各職場における新たな職場づくり、各家庭での新たな生活設計、そして個々人による新たな生き方の展望となる1冊である。
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この作品のレビュー
平均 4.3 (4件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
ジェンダーというと、女性差別を連想し、身構えてしまう人も多いと思う。特に男性。
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この本は男性視点で書かれているので、男性にもとても自然に内容を受け入れられると思う。もちろん女性が読んでも不自然なことは何もない。
子育てを終えた筆者がその経験と、コロナ禍で急速に進んだ在宅勤務などの環境変化、オーストラリアはじめとした海外の男性に関する考え方などを踏まえて、とても分かりやすく書かれている。
家庭の中においては、家事分担はもとより、中学受験など教育サポートにおける父親の役割。介護やDV問題。
仕事においては、仕事人間の期待に応えようとして、地域や家庭での居場所をなくす悲哀や健康の問題、パワハラについてなど。
これらの話題について、関心をもつ鼻緒ともなる良書。
個人的に刺さったフレーズは
「理想の男性像がインフレ状態」ではないかという問題提起。
稼ぎ手としての役割が軽減されないまま、家事育児教育が理想の父親のすべきリストに加わり、このような役割を全うできる人が理想の男性像として確立してしまってはいないか。
そうすると、独身の人、子どもを持たない人などに疎外感を与えないかと書かれている。
前半部分は、今まで働く女性が担ってきたところを、淡々と分担してくれよと鼻白む感覚もあったが、確かに男性の理想像とは何かを考えた。
家庭や社会に男性が参加することは、楽しいことも多く悪いことではない。そのような活動と仕事が両立できるような社会にするためには、いったん理想像として設定することは必要だが、数年後には理想像を含めて多様性が認められるようになっていくのだろうと思う。期待を込めて。投稿日:2023.03.04
ジェンダー問題、フェミニズム
男性のいきづらさ、女性のいきづらさ
を扱った本の中で、最もよくまとまっていると思う
投稿日:2023.01.27
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