この作品のレビュー
平均 3.9 (105件のレビュー)
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不良債権と寝た男の物語
1975年の安宅産業危機、連鎖倒産を防ぐために引受先を探した住友銀行の交渉相手は伊藤忠の瀬島龍三、不毛地帯のモデルだ。この時からイトマン事件の種がまかれている。安宅産業は152億円相当の東洋陶磁コレク…ションを持っていたあたりは半沢直樹の世界だ。
1978年安宅産業の処理が済んだ住友銀行は事業本部製に組織を改めた。本部内に審査部門と業務推進部とを入れるようにしたのだが西川氏は当時の銀行としては画期的と評価するが同じ責任者が両方を見ることになった。今ならガバナンスがないと言われるだろうが、じゃあ分けたままならバブル時代にちゃんと審査できたかと言うとそれも怪しかろう。西川氏自身が後に組織を元に戻している。
当時の磯田頭取は後に天皇と呼ばれた人で東京進出を狙って平和相互銀行を合併しようと狙っていた。当時は銀行業は規制が厳しく新店舗の出店はほぼできない状態だったからだ。平和相銀のオーナー小宮山家は持ち株を資産管理会社「川崎定徳」に売却するのだがその資金を用意したのがイトマン系列のノンバンクだった。そしてその株式を住友銀行が買い取る。西川氏は正当な取引と説明しているが・・・まあそう言うしかないわなあ。買ったはいいが平和相銀はボロ店舗ばかりでまた問題融資先もたちが悪く追い貸しを続けていた。それ以上に禍根が残ったのはイトマンに借りを作り元磯田当時会長の子飼の部下河村社長の影響力が増したことだった。バブル期に不動産事業にのめり込んだイトマンは金融引き締めと不動産価格引き締めの影響で危機に陥る。マスコミが許永中などの闇社会とのつながりで住友銀行をたたいたのもこのころだった。西川氏は住友銀行が闇の紳士と関係が深いダーティーな銀行だと言う、実態とはかけ離れたイメージが植え付けられたと言う。しかし、磯田会長がイトマンに借りを作り元子分の河村社長が関わる以上関係があると見られて当然だろう。磯田会長の退任を取り付けようと西川氏は巽頭取に電話し怒鳴り上げた「頭取、磯田さんをなんとかしてください。早く辞めさせてください。こんなことが続いては銀行はもちませんよ!」退任会見まで開いたにも拘らずいつまでも辞めようとしない磯田会長の態度に当時常務企画部長だった西川氏は本店の部長をほぼ全て集めて退任要望書をまとめ巽頭取に渡した。やはり十倍返しか。
西川氏は最後に磯田氏は周りに載せられただけで真っ当な人だったと書いている。そこで持ち上げてもしょうがなかろうに。
住専問題では西川氏は銀行は被害者だと言う。大蔵省主導で出資させられ、店舗網が十分でない住専に融資先を紹介したのに焦付いたら銀行の責任と言うのは到底承認できないと。また、頭取就任時にはリスクを取って貸し出しを増やしたとも言う。流れた大和銀行との合併、UFJとの合併、さくら銀行との合併などでも西川さんの言い分を聞いていると住友銀行には何一つやましいことはなく正しい決断ばかりだと言うがこれは一方的な見方だと思う。違う人の話を聞けば全く違う物語に聞こえるだろう。
最後は日本郵政社長就任の話で鳩山邦夫との確執が面白い。さすがにこれは鳩山の方が無茶苦茶でかんぽの宿をオリックスが入札で取ったのに取得価格に比べ売却額が低過ぎるなどは言いがかりだ。資産価値がぼろぼろなんだから責任を問われるのはそこに投資した人たちだろう。
西川氏が大変な苦労をされたのはその通りなのだろう。30年間も不良債権処理ばかりだったのだから。しかし、そう言う銀行になった責任については特定の誰かが悪かったと言う話ではないと思う。続きを読む投稿日:2014.01.01
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面はゆいとか忸怩たると言いながらも、ラストバンカーというタイトルを自らの手向けとして許す、そこには謙遜を必要としない自信があるのだろう。自らより前の頭取を品の良いお公家様と言いながら、後継にバンカー無…しという意味にも取れる「ラスト」の称号。この傲慢さが語りを象徴する。
安宅産業の破綻処理やイトマン事件、さくら銀行との合併から三井住友銀行の頭取を務めるまでの歴史を綴りながら、やはり気になるのは、郵政民営化から日本郵政社長に就任した後、かんぽの宿の問題だ。本著で語るのは払い下げ金額の適正さ、議事録を残さなかった反省程度。民営化に関わったオリックスが払い下げの対象になった事の危うさには触れず。李下に冠を正さず、という態度は見えず。
行内から政治抗争にも巻き込まれながら、相当タフな人生を送り、そこには本著に書けない闇の部分も多々あったろう。銀行マンの守秘義務は厳しい。事実ベース、言い訳混じり。本として、面白いかは微妙である。
続きを読む投稿日:2022.10.01
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