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東雲めめ子, 西條ユリカ / 集英社オレンジ文庫 (1件のレビュー)
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いこ
このレビューはネタバレを含みます
ゆっくりと、本当にゆっくりと明かされていく「マリア」の本当の姿。 ぽろぽろと完璧だった姿が剥がれて見える様は、終始見てはいけないものを見ているかのような罪悪感が付きまとった。 周囲は彼女が完璧な「マリア」だったという。 彼女を貶せば学内が混乱するほど。 崇拝するあまり彼女のために殺人を犯す人まで出てくる始末。 誰もが彼女に憧れ、彼女の唯一になろうとし、そしてその唯一になれずに絶望する。 彼女の謎を追うことになった鮎子もまた、彼女にとって唯一の存在がいた。 ただ皆の「マリア」ではなかったけれども。 だからこそ、鮎子は辿り着けたのかもしれない。 本当の「マリア」の姿に。 とにかく不思議な雰囲気の話だった。 通常とは違う狂気というか不穏さというか、そしてそれを見てしまった罪悪感、この先を見てもいいのかという禁忌感、とにかく終始不思議な感覚に陥った。 着地点が気になって、結末がどうなるのか気になって、とにかく必死で読み進めた。 7章までは本当にローペース、7章からは急展開。 そして、最後の最後に見せられた光景は……あの場面は最大級の罪悪感があった。 凄惨な殺人事件の現場を見るより余程恐ろしいものを見たような、それでいて酷く美しいものを見たような…… 未だに何だったんだろうあの場面はと嚙み砕けずにいる。 ただ今思うのは、これで「マリア」が手に入ると思っていた男性陣が哀れでならない。 彼らはきっと一生気付かないだろう。 今のままで幸せだから。
投稿日:2024.04.30
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