【感想】法服の王国(下)

黒木亮 / ボイジャー
(8件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
3
3
1
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • lasttrainhome

    lasttrainhome

    再読。読了後に参考文献一覧を見たら、検察講義案などの白表紙や過去の修習生団体が出した本など入手しづらいものまで挙がっていた。著者の本作にかける熱情の強さが表れているように思う。
    下巻は、群像劇の趣が強くなった。退官後も権勢を維持する弓削、弓削の子飼でありながらエリートの矜持をつらぬく津崎、誠実な裁判官としての信念を貫く村木、欲望のままに突き進む黒澤、などなど。
    著者は出世を目論む女性裁判官の黒澤に悪役を押し付けているが、少々不当だと思う。黒澤には信念がないような描き方をしており、弓削のように悪役でも新年のある男性とは明らかに描かれ方が違う。著者のジェンダー感が古いのではないか。不健康な色気を振りまく黒澤に対し、正義漢である村木の妻は何度も何度も「健康的」と描写される。悪女と賢妻という対比は、フェミニズムでいう主婦・娼婦モデルの引き写しとなっており、男性が女性を分断する際の枠組みである。強い違和感を持った。
    あと原発の話がむずかしくてよくわからなかった。それは仕方ない。
    楽しい読書だった。
    続きを読む

    投稿日:2020.04.27

  • Στέφανος

    Στέφανος

    裁判長交代
    天を恐れよ
    最高裁調査官
    招かれざる被告人
    平成の風
    鳴り止まぬ拍手
    エピローグ

    著者:黒木亮(1957-、北海道秩父別町、小説家)
    解説:梶村太市(法学)

    投稿日:2018.10.14

  • shogotanaka

    shogotanaka

    めちゃくちゃ面白かった。
    戦後の裁判所及び判例の積み重ねの背景にはこんなことがあったのかと大変興味深く読みました。
    私は弁護士をしているので有名判例が書かれた文脈や裁判官という仕事について興味深く読みましたが、法曹関係者以外には専門的すぎたり、そもそも興味持てない部分が多いのではないかと心配になりました。
    すごい取材力と骨太のストーリー、2011年7月からという連載開始のタイミング、産経新聞にて連載というところもすごい。
    続きを読む

    投稿日:2018.01.14

  • ゆうだい

    ゆうだい

    相変わらず見事な一冊。金融畑出身の著者が、取材の賜物もあろうけど、裁判所の中をここまでリアルに書けるのか。
    著者のエッセイで、日本の裁判所には酷い目にあったので小説にしてやろうと思った、的な記述があったのですが、それをここまで純度の高いストーリーに仕立て上げられるのだから凄いものです。

    下巻は昭和51年から平成23年まで、上巻よりも少し早いペースで進んでいきます。テンポが良く、かなり熱中して読み進められました。
    原発問題や住基ネット訴訟、ブルー・パージ等の現実の出来事を軸にしながらも、舞台裏のドロドロした話として出世を狙う人たちの人事のゴタゴタなんかが出てきます。

    なお、解説は完全なネタバレなので本編読了後に読むのが吉です。
    続きを読む

    投稿日:2017.05.07

  • tatsuyaokamoto

    tatsuyaokamoto

    経済小説家が法曹の世界を書く。法曹界の人には申し訳ないのだが、司法試験をパスしたあとのキャリアのことを全く理解していなかったことに気づいた。
    裁判官、弁護士、検察官とたがいのキャリアは全く異なる。本書では二人の裁判官を主人公にし、それぞれのキャリアに切り込む。組織のやっかみや政治の影響などのなか一見異なる裁判官キャリアを積んでいく二人。が、任官後数十年経ったところでまた交錯するのが爽快。
    新聞で何気なく書かれてある諸々の判決は、無味乾燥なものではなく裁判官達の熟考につぐ熟考の末にたどり着いた結晶に見えてくる。
    続きを読む

    投稿日:2016.10.02

  • Hiroyuki

    Hiroyuki

    戦後の日本の司法の大きな流れがよく分かる。それとともに、司法と行政、立法の問題も浮き彫りになる。時の政権が国策として裁判に影響を与えるだろうということは分かりきっていると、思っている自分がなんだか怖くなった。というのも、本来の裁判官のあり方が本書の中で色濃く出ているからである。裁判官は本来自分の良心のみに立脚し、何物にも左右されることなく、憲法に立脚し判決を出すものである。その当たり前を、当たり前にやる裁判官が冷遇される現実に恐ろしさを感じた。それがあたりまえでしょとどこか思っている自分にである。
    原発訴訟に関しても、専門的ではあるが、その立証の過程がよくわかる。この流れであれば原告側が勝利するだとうと思うが、勝てない現実。自衛隊と原発は国策だから負けてはならない。こんなことでいいのか。
    そう思い読み進めていって、最後の最後には救いも見えてくる。しかしそれは遅すぎたのか?原発事故は実際のものとして起こってしまった。ではもう遅いのか?
    日本のこれからの裁判官の良心を信じたい。信じなければ、この国はどこに向かってしまうのだろか。
    続きを読む

    投稿日:2016.07.28

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。