【感想】ショック・ドクトリン(上) 惨事便乗型資本主義の正体を暴く

ナオミ・クライン, 幾島幸子, 村上由見子 / 岩波現代文庫
(1件のレビュー)

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  • yurisyo

    yurisyo

    次の読書会課題図書が、「堤未果のショック・ドクトリン」なので、その前に本家(?)を読んでおこうと思って図書館で一緒に借りてきた。

    副題にあるとおり、ショック・ドクトリンとは、惨事に便乗してしっちゃかめっちゃかしている間に一般民衆…特に経済的に下層にいる民衆に対し、無慈悲な資本主義をゴリゴリ導入し、国の一部の人間や多国籍大企業にとって都合の良い状況に持っていくという、政治的、経済的手法のことを言っているようだ。

    上巻はショック・ドクトリンの誕生からその手法と、CIAが主導する拷問の方法との類似点、実際に南米や南アフリカ、中国、ソビエト連邦にロシア、イラクなど、ショック・ドクトリンによってどのような歴史的経緯を辿ってきたのかを解説していく。

    いやぁ…難しい。
    内容も難しいけど、これをそのまま鵜呑みにして良いものかという判断も大変難しい。
    「ショック」という言葉をハブにして、目を背けたくなる感情的にピンポイントでとても嫌な印象を引き起こす拷問の手法と、規制の少ないより純粋な市場経済原理を広める行為を同一視する書き方は、ちょっと偏りすぎてはいないか?と思ったり、そこから流血や人権抑制を伴う軍事クーデターがあたかも一部の経済界の人間により、全てが裏で計画されたもののように綴られているその信憑性がどこまで高いものなのかという疑問がうまれたり、…著者の意見は、一貫して新自由主義への疑義、ひいては経済学者ミルトン・フリードマンへの強い批判を見てとれるんだが、私自身が勉強不足な故にこれをそのまま受け取るのは危ない気がする。

    ただこれを読んで思ったのは、私が学生の頃は共産主義、社会主義は悪で、資本主義こそ善であり、民主主義下の資本主義経済の元では世界は右肩上がりに豊かになっていく…という言説をわりと誰もが信じていたな、ということ。
    いや、つい最近まで私、そう思っていたな。
    だけど違う角度から見てみると、著者の言うように、格差はどんどん拡大され、救われない、国家から切り捨てられる社会的弱者は増大し、グローバル社会という名のもとで一部の大企業だけがそんな人々を陰で日向で踏み台にして発展しているという点は、私が今実感している世界からも確かに見受けられるのだ。

    新自由主義の定義、資本主義と民主主義との関係性についても、この本からアップデートする必要を感じたので、読んでいて思考があっちこっち忙しく巡るなかなか得難い読書体験になった。

    下巻も読まねば。
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    投稿日:2024.04.13

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