【感想】正しき地図の裏側より

逢崎遊 / 集英社文芸単行本
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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ブクログレビュー

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  • かな

    かな

     逢崎遊さん、デビュー作!?とは思えないほどに、すごくよかったです。今後が楽しみな作家さんができました!

     主人公は定時制高校に通いながら、無職の父の生活をもアルバイトを掛け持ちしながら支えていた井口耕一郎…。必死で貯めこんだ8万円を使い込まれた上、当時付き合っていた彼女にも手を出したと告げられた時、カッとなり父を殴ってしまい、その日から耕一郎の逃亡生活が始まります。ホームレスから日雇い労働者になり、頼れる仲間と一緒に一念発起してたこ焼きを売る仕事を始めて…。

     それぞれの場所で、耕一郎のことを認めて手を差し伸べてくれる人たちがいました。辛い別れも経験しつつ、耕一郎は人間的にも成長していき、過去ともきちんと向き合います。序盤はちょっと長く感じましたが、ラストに近づくにつれて読むのがとまらなくなります。人とのつながりや優しさに加えて親子愛…心に響き、涙を誘います。
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    投稿日:2024.05.14

  • hosinotuki

    hosinotuki

    このレビューはネタバレを含みます

    雪の中、父親を置き去りにして、家を出るまだ高校生の主人公。無計画ながら案外器用でしっかりしているため、浮浪者になり日雇い労働者になり最後はたこ焼き屋までやって、そのバイタリティに驚く。グイグイ引き込まれながら最後まで読むが、殺したと思った父親が生きていたことを知って後悔するが、こんなに底力のある主人公のどかか抜けているところが、残念だった。

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    投稿日:2024.05.09

  • hutaro

    hutaro

    父親を殴って放置し、逃げた。逃げた先でホームレスとなり、その日暮らしの生活を送る主人公耕一郎。転落具合が凄まじい。
    理不尽にシマを荒らしたと責められたり、苦労して購入した時計をカツアゲされたりと、他にも普通一生したくないような苦労が耕一郎に押し寄せる。
    段々とどうにかこの状況が変わらないか、耕一郎が少しでも幸せを感じることはないのかと同情する気持ちになってくる。

    しかし、世の中捨てたものではなく、いや、耕一郎の真面目な性格が良かったからか、耕一郎は周囲の人に気に入られ、一時は屋台まで出せるようになる。
    人との出会い、別れ、身近な人の死と、目まぐるしく訪れる耕一郎の人生に目を奪われる。

    最後、父親の消息についてはほぼ予想通りだったものの、父親がどういう気持ちだったのかを考えると何だか泣きたい気持ちになった。
    父も息子も、地図がぼろぼろになるまで道を歩き、自分の人生を生きた。
    楽な道ではないが、絶望だけの道でもなかったように思う。
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    投稿日:2024.05.08

  • 01013739

    01013739

    父親にアルバイトで稼いだ金を取られ、彼女に酷いことをされ、逃げた場所でもリンチを受けてなけなしの全財産を取られて、と不幸続きの主人公に、もう酷いことが起きませんようにと、祈りながら読み続けました。酷い父親の元から逃げ出したけれど、行く先々で人の縁に恵まれて、人として成長して最後に父親の気持ちを理解することができたという、悲惨で悲しくもなぜか心が穏やかになる作品でした。続きを読む

    投稿日:2024.04.13

  • よつば

    よつば

    第36回小説すばる新人賞受賞作。

    1998年生まれの若い作家さんだが、デビュー作とは思えない抜群のリーダビリティで一気読み。

    主人公は定時制高校に通いながら無職の父に代わりバイトに明け暮れる井口耕一郎。
    ある事がきっかけで故郷を離れ、彼の逃亡生活が始まる。

    わずか10代でホームレスとなった耕一郎。
    過酷な日々を送る中で出逢った人々の情の深さと温かい交流に何度も涙が込み上げた。

    いくつもの出会いと別れを繰り返し、意を決して帰郷した耕一郎を待ち受ける真実に胸が一杯になる。
    そんな愛情表現があるなんて。

    ラスト二頁で涙腺崩壊。
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    投稿日:2024.03.22

  • robin1101

    robin1101

    Amazonの紹介より
    定時制高校に通いながら無職の父に代わり働く耕一郎は、ある冬、苦労して貯めた八万円が無くなっていたことに気づく。このことを父に問い質すと、父は金を使ったことを悪びれもせずに認めた上、予想を超える衝撃の言葉を言い放った。衝動的に父を殴り飛ばした耕一郎は、雪の中に倒れた父を放置して故郷を逃げるように去る。
    しかし、僅かな所持金は瞬く間に減り、逃亡生活は厳しくなる一方。遂に金が底をつき、すべてを諦めようとしたそのとき、
    「……なに、訳あり?」
    公園の隅、小さなホームレスの溜まり場から、ひとつの手が差し伸べられる。出会いと別れを繰り返し、残酷な現実を乗り越えた先、故郷へと帰る決意を固めた耕一郎を待ち受けていたものは──。
    社会から切り離される圧倒的な絶望と、心と心が深く繋がるやさしさを描いた、25歳の若き著者による感動のデビュー作。


    第36回小説すばる新人賞受賞作。

    小説すばるというと、爽やかな青春小説というイメージだったのですが、今回の作品は一味違った青春小説でした。

    というのも冒頭から、何やら不穏な空気が。父親を殴り殺し逃亡生活へ。頼る人もいなく、とりあえず都会へ。ホームレスとなるのですが、そこで出会う人たちを通して、生きようと成長していきます。

    前半は、ホームレス生活が主で、どんよりとした空気感だったので、主人公が不憫でなりませんでした。
    せっかくバイトで稼いだお金が捕られたり、ホームレス同士の縄張り争いに巻き込まれたりなど大人達の身勝手さが窺えました。
    しかし、相手側も生きるのに必死。そこで「大人の社会」を体験することにすることになるのですが、良い場面にも遭遇します。

    ホームレス生活を通じて感じる「生きる」ことの辛さや必死さがにじみ出ていました。デビュー作とは思えない「生きる辛さ」の表現力が素晴らしく、世界観に引き込まれました。
    その後、日雇い仕事から自営業へと徐々に仕事の幅が広がっていきます。辛い状況でも、やっぱり人の縁は大切であることを感じました。それによって、大きく人生を変えるんだと思いました。
    色んな出会いと別れの場面が描かれていたのですが、様々な人たちの背景を知ることで、色んな人間がいるんだなとしみじみ思いました。

    じっくり描いている場面もあれば、サラッと時間が過ぎていく場面もあって、結果的に主人公は、いい大人になっていきます。

    前半と後半では、空気感が違っていて、後半のほうが一生懸命さが伝わってきます。周囲とのコミュニティも和やかになっていくので、「空気」の作り方が上手いなと思いました。

    そもそも父親を殴って逃走したので、父親の安否はわからなかったのですが、後半になって、父親がその後どうなったのかが描かれています。
    成長した主人公が、どう父親と向き合っていくのか。意外というわけではありませんでしたが、隠された真実もあって、最後まで楽しめました。

    色んな人との出会いと別れが、濃厚な読書時間を体験したようで、その表現力に今後注目していきたいなと思いました。
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    投稿日:2024.03.20

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