【感想】動物哲学物語 確かなリスの不確かさ

ドリアン助川 / 集英社インターナショナル
(7件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • むかーし昔

    むかーし昔

    短いお話の集まりだったので、どれから読んでも良いとは思ったけど、何となく初めから読んでしまった。
    初めの何話かは、読み終えるたび心の奥底が痛んだ。中頃からは「これはオスの発想で記されたモノ」と感じて「なるほど、やはり」と思いながら読み終えた。
    読み終えて、心が穏やかな気持ちになった。
    多分、長く生きて、何時かは分からないけど、まもなく私の命が終わるのを私自身が感じているからだろう。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.08

  • 午後のカッパ

    午後のカッパ

    様々な野生動物を主人公とした、大人向けの童話仕立てのような文体・構成で20編の小編集。相互に繋がりは無い。スキマ時間で読み進められる。初めのうちは馴染めなかったが、徐々に面白く感じられて来た。童話はコミカルな表現が少なからずだと思うが、大人向け童話としてのスタイルが、この面でも楽しめた。続きを読む

    投稿日:2024.03.20

  • エル

    エル

    動物目線で話が進み、一つ一つが短いから哲学という読みづらいジャンルだけど読みやすかった。猿とコウモリとウリ坊の話が人間の話として共感できて面白かった。

    投稿日:2024.03.04

  • avec toto

    avec toto

    大好きなドリアン助川さんの本。色々な種類の動物たちの目線で、哲学的な考えを盛り込んだ21話からなる。とても面白い試みで、作者の意欲を感じた。

     ドリアン助川さんが、動物と哲学に夢中になった理由として、本文中に、「子供の頃から、人間社会が苦手だったので、動物たちに語りかけようとした。哲学に惹きつけられたのも、目の前の事だけで忙しくしている人間社会への反発だ。」とある。この本が、著者にとって念願の1冊だったことが伺い知れる。

     溝上幾久子さんの版画も、物語への想像を掻き立て、深みをもたらしてくれ、素晴らしかった。

     最初の数話は、とても心動かされ、あっという間に読んだ。また、ナマケモノを描いた『スローな微笑み』では暫く唖然として動けなかった。ただ、途中から少しずつ趣が変わっていき、読む気力も落ちてきた。それでも大好きなドリアン助川さんの本なので、伝えようとしていることを少しでも正確にキャッチしたいなという思いで読み進めた。

    たくさんの動物の種類を扱うことで、その生態が分かり、興味深く思える一方で、それと哲学が合わさることで、生物学的にも、哲学的にも、そして物語としても、少しずつ中途半端になってしまっている感は否めないかもしれない。
    以前、『カラスのジョンソン』を読んであまりに気に入り、その感動を忘れられないので、系統が似ているこの本に物足りなさを感じてしまったんだと思う。

    それでも、ドリアン助川さんが作家として、ぜひともやりたいことならば、ぜひ続けてもらって、次のシリーズも読んでみたいと思う。
    それくらい、ドリアン助川さんは、私にとって大切で、尊敬する作家さんです。

    (本文より)
    ○もちろん、リスに農作物を荒らされた皆さんは、許しがたい気持ちになるでしょう。(略)しかし、それぞれのリスにとって、この世に生まれた事は確かな出来事であり、1匹ずつのリスがムクロジの種のような目で森や空や雲を捉え、すべての中心として、この世を認識していることも明確な、替えのきかない事実なのです。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.25

  • のりぞ

    のりぞ

    最初の3話くらいは宮沢賢治っぽいなと思ったが、読み進めればやはり哲学の本だった。
    それぞれの動物の生態にあわせて紡ぎ出す哲学の物語。
    そしてそれは、今我々が生きている人間の世界を投影している。

    投稿日:2023.12.13

  • YAJ

    YAJ

    このレビューはネタバレを含みます

     動物を題材に哲学を語る。良い試みだと思う。

     森で孤独なクマ少年が、どこからか注がれる視線を通じ森との一体感を認識したり、若きキツネのメスが幼い次世代の弟を案じ自己犠牲もいとわず他者との関係の上での自分を認識したり、サル山のボスの存在はその個の力ではなく迎合する大衆があってのことではないかと問いかける。さらには、ボスという認識ですら、「人間社会をサルの世界にそのまま投影」した人間側の早合点ではないかと看破するあたりも痛快。

     ただ、あまりにも著者のそうした意見が表に出過ぎていて、昔読んだ動物物語のように、その動物になり切って、あるいは静かに第三者的目線で自然の生態を垣間見て、そこから学びを得るという感が少ない。
     『ペロリン君の進化』という章では、ネズミと主人公のアリクイ(彼がペロリン君)に、こんな会話をさせる。

    ネズミ: というと、わしらは進化しとらんということか?
    アリクイ: 頭がよくても、殺し合いをやめられない生き物もいます。僕たち生き物には、進化ではなくて、変化があるだけなのかもしれませんよ

     昨今の人間の愚考への戒めであることが、あまりにもあからさまに見て取れて、いかがなものか。

     実際、動物の行動から学び、感じることは多い。それらの行動に意味づけをし、メスキツネの行動に和辻哲郎の「間柄」を当てはめ、アホウドリにはソシュールの「言葉とは何か」、コウテイペンギンにはフランクルの「ロゴセラピー」と、哲学的命題をあまりに意識させすぎてないかという気がした(実際、哲学と動物の行動をリンクさせて書いていったのだそうだけど)。やりすぎると、それこそ、この本が、サル山のボスの存在意義を意味付ける人間側の思い込みtと同じ産物になってしまう。
     もう少し、物語として、寓話的にオブラートにくるんだほうが、読者にも考えさせる余白があったやに思うが、贅沢な要望か。

     とにかく、序盤は、ツキノワグマは’20年度に6085頭が捕殺されているとか、鎌倉のタイワンリスも害獣指定を受け今や捕殺対象だという情報が出てくるたびに、無味乾燥なデータが物語とそぐわない感じがしたり、あれこれ著者が顔を出して意見するかのような部分が邪魔に感じる(顔出しちゃいけないわけではないのだけど)。
     動物の物語なら、語り部は彼ら自身か、あるいは神の視点から彼らを見守るナニモノかが語っているような、控えめなテイストで良かったのではないかと思う。

     本書、書き始めた順に収録されているのだろうか、徐々に良くなっている気はする。ゾウガメやコウテイペンギンの章なんかは(ほぼ終盤の2編)、物語としても泣けるし、よいお話でした。

     更なる続編には期待したい企画ではある。

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    投稿日:2023.12.08

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