【感想】民族とナショナリズム

アーネスト・ゲルナー, 加藤節 / 岩波書店
(13件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • itachi23号

    itachi23号

    「民族」「国家」そして「ナショナリズム」がいつの時代からどういった由来で出現したのかを、社会システムの観点から説明されている。
    ナショナリズムとは、社会の構成員全体が、読み書き/四則演算を基礎とする高文化に参加し、文化文化レベルで同一化されている状態。その状態において、政治的/文化的境界が一致する範囲が国家であり、その領域内で生活する人々が民族である。
    農耕社会(=封建制≠国家モデル)においては、「政治権力の集権化」と「文化/認知の集権化」の作用が独立的であるため、「支配/知識層」と「被支配農奴」はそれぞれの層において、再生産を繰り返す力学が働き、高文化の普遍化が進まない。(文化/階層の流動性が低い)
    しかし、産業社会(=国家モデル)の時代に突入すると、「理性の発見」「(経済)合理性の発見」に伴い、人間の一元体系への統一化による階層間(文化間)の流動性が高まり、そこに永続的な成長概念(資本主義)が重なることで、高文化の普遍化に向かう力が働くようになる。高文化への統一に伴い、職業などの階層の流動化も高まり、生産性向上のための同一の訓練を実行するための役割として「国家」が求められるようになる。ここにおいて、「国家」と「文化」が結びつき、「民族」が生まれ「ナショナリズム」が発現する。
    「国家」「民族」「ナショナリズム」とは、産業社会が生み出す1つの帰結であり、産業化=ナショナリズムではない。
    政治と文化の範囲が一致したのは、産業社会のみではなく、農耕社会でもそれらの一致が見られることはあった。しかし、ナショナリズムの時代においては、上記の一致が必須条件となっている。
    ナショナリズムの将来に関する予測としては、「縮小」と「拡大/強化」に二極化しているが、それぞれの揺り戻しや中間点に答えがあると著者は考えている。

    <メモ>
    ・農耕社会においては、文化権力は水平的に、政治権力は垂直的に分割する力が働く
    ・高文化の普及に伴い、宗教においても(読み書き能力獲得により)聖書と向き合う「個人」に着目される
    ・政治的/軍事的弱者として存在する代わりに、強い権力を伴う専門職(金融など)の独占を与えられた集団(ユダヤ人など)は、ナショナリズムの時代においては「国家」「民族」において浮遊した存在であるにもかかわらず経済的優位を持つため迫害などの悲惨な状況に陥った
    ・ナショナリズムの強化における「メディア」の役割は「何を伝えたのか」ではなく、メッセージを受け取れる(文化/言語的に)同一性を持つ人とそうでない人を分別することにある
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    投稿日:2024.02.03

  • Tomoki

    Tomoki

    このレビューはネタバレを含みます

    ナショナリズムとは、「政治的な単位と民族的な単位とが一致しなければならないと主張する一つの政治的原理」だと筆者は冒頭で述べる。歴史を大きく農業社会と産業社会に分けた上で、社会が産業化したときに何が起こるかを理解することが、ナショナリズムの理解にとって重要だと筆者は主張する。
    産業社会の構成員は流動的であり、見知らぬ者との間での持続的かつ頻繁なコミュニケーションが求められる。そのためには標準的な言語媒体と筆記文字が必要となる。結果として、農業社会では一部の特権階級に独占されていた「高文化」が社会に遍く広まることになる。こうした社会では、もはや教育を族内で行うことはできず、専門家による訓練が必要である。つまり、教育制度である。これを維持するコストは大規模なもので、国家が担うほかない。
    産業化の初期段階では、低文化民族には二つの道が開かれている。すなわち、高文化民族と同化するか、自らの低文化を高文化に置き換えることによって独立国を建設するかの二つである。だが、筆者はどちらの道にも進めない可能性として、「耐エントロピー」を取り上げる。産業社会はたしかに流動的で、いかなる階層の集団も社会の上層に昇るチャンスが開かれている。だが遺伝的な体質と同様、「ある種の深く染みついた宗教的・文化的習慣」をもつ集団が社会全体の中に均等に分散しないとき、それは産業社会に亀裂をもたらす恐れがあると言う。
    筆者はナショナリズムの類型について、権力を持つグループと持たないグループが、それぞれ教育を受ける機会を持っているかどうか、そしてお互いの文化が同質かどうかに分けることで、8種類挙げている。
    このうち、権力を持つグループと持たないグループの文化が同質ならば、そもそもナショナリズムは発生しない。また、両グループが教育を受ける機会を持たないケースでも発生しない。
    文化が異なるが権力を持つグループだけが教育を受ける機会を持っているケースを東欧のナショナリズム、文化が異なるが権力を持つグループも持たないクループも教育を受ける機会を持っているケースを西欧のナショナリズムに位置づけている。

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    投稿日:2023.04.07

  • hiroshirakawa

    hiroshirakawa

    民族とナショナリズムについての古典的名著。どのようにして民族・ナショナリズムという概念が人類に生まれたか、またなぜ不可逆的かが綴られてます。

    投稿日:2022.11.25

  • mamo

    mamo

    ナショナリズム論の古典の1つ。

    ナショナリズムという難題にかなり大きな視点で、歴史学や人類学、政治学などなどの視点を踏まえつつ、哲学的にアプローチしている。

    ざっくりいうと、農業社会から産業社会への変化と支配的な文化とサブの文化との関係から、ナショナリズムをかなり明確に定義することに成功している気がする。

    が、情報の圧縮度がかなり高くて、難しいので、また後日読み直す必要ありかな?
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    投稿日:2021.10.05

  • Soma Oishi (大石宗磨)

    Soma Oishi (大石宗磨)

    民族とナショナリズム
    (和書)2011年02月13日 22:44
    2000 岩波書店 アーネスト ゲルナー, Ernest Gellner, 加藤 節


    佐藤優さんの選書であったので読んでみました。

    僕にとっは難解な部分もあり分かり易いと思えた部分を引用させて貰います。

    『・・・もしカントとナショナリズムとの間に何らかの関係があるとすれば、それは、ナショナリズムが彼に対する反動であって、彼から派生したものではないという関係なのである。・・・』

    カントと柄谷さん、そして佐藤優さんの選書であるアーネスト・ゲルナー。ベネディクト・アンダーソン「想像の共同体」も良かった。
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    投稿日:2020.09.26

  • 波瀬龍

    波瀬龍

    【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】
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    投稿日:2018.10.28

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