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逢坂冬馬 / 早川書房 (187件のレビュー)
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eirain0320
「第11回アガサ・クリスティー賞 大賞」を受賞したデビュー作『同志少女よ、敵を撃て』の逢坂冬馬、長編二作目。『同志少女~』が良かったので、著者追っかけで今作も手に取ることに。 舞台は1944年、終戦…間近のナチス体制下のドイツ。主人公である少年・ヴェルナーは、父を密告して処刑に追いやった街区指導者のカール・ホフマンを復讐により殺害を狙っていたところ、同年代の少女・エルフリーデに止められる。その翌日、エルフリーデより伝えられた廃工場に入ると、そこにはレオンハルトと名乗る少年が居た。レオンハルトとエルフリーデは、自由を奪うナチス体制に反抗する「エーデルヴァイス海賊団」だと紹介し、ヴェルナーを勧誘する―――。 「ナチス体制下のドイツで、"自由"を求めて抗った少年少女たちの青春物語。」 前作と同様、戦争(という大人の事情)に立ち向かう少年少女たちの物語。大人に気付かれないよう、違法となったワンダーフォーゲル(徒歩旅行)を敢行し、線路を辿って歩き進むシーン(途中、列車が走って来たり、ヒトラー・ユーゲントに追いかけられたり。)で想起されるのは、やはりキングの名作『スタンド・バイ・ミー』。 ナチスが行っている悪行を見過ごすことの出来ないヴェルナーたち。その悪行に気付いていながらも、見て見ぬふりをする大人たち。「"歌われなかった海賊"(=ナチスの悪行に抗ったヴェルナーたち)と、"歌わなかった住民"(=そんなヴェルナーたちの姿から目を背けた大人たち)」。 しかし、そんな大人たちを一概に"悪"と切り捨てることも出来ない。「子供だからこそ出来ること、大人だからこそ出来ないこと」、「"歌いたくても歌えない"大人たち」。抱える事情や価値観は十人十色で、自分の物差しだけでは決して測れない。全てを理解することなど到底出来ないが、「理解出来ないもの」と切り捨てずに知ろうとする姿勢は、決して忘れてはならない。続きを読む
投稿日:2024.04.29
Kurt KYK
複層的で、時代を超えたストーリー展開も傑作と思う。 それにもましてメッセージが重い。ハンナアーレントが指摘した凡庸な悪につけこまれないことの難しさ。きっと反戦ではなく、反全体主義。途中にあった、少数派…の人が好きに生きられる社会が上等なのだろう、に共感できる。続きを読む
投稿日:2024.04.27
pepe
第二次世界大戦末期のドイツ。反ナチを掲げる「エーデルヴァイス海賊団」に属する少年少女が、とある「最悪」を目にしたことからとある行動へと駆り立てられていく。 読み心地はどこかジュブナイルめいた爽やかさ…すら感じられるのに、彼ら彼女らが直面しているのは生と死が薄皮一枚で表裏になっている、戦争ですべてが破滅的になってしまった世の中。そして究極の凶悪が足でたどりつける距離に存在し、周りの大人たちはそれと意識しているのに、目を背けることで正気を保って生きている。 戦争というものが世界中で起こりつづけている今、海賊団の言葉に耳を貸さない市民たちと自分たちが重なるようでひどく喉が詰まるような重さがあった。市民の気持ちがわかってしまう、胸苦しさ、うしろめたさ。でもそれを抱えながらも、なにかきっとできることがあるはず。フランツのように。ウクライナへ、ガザへ、そして数多の紛争地へ、ひとりひとりがもっとできることがあるはず。 少年少女の真摯な想いとまっすぐな行動に、そんな思いを改めて抱かされた。作中での祈りと願いが、そのまま現実の世界にも訴えかけているかのように感じられた。戦争がすぐそばにあるのは、もう現実なのだという理解を、改めて抱いた。続きを読む
投稿日:2024.04.24
lin96
前作「同志少女よ敵を撃て」で圧倒的スケールと臨場感に震えまくった逢坂先生の新作!! 本屋で衝動買いしてから、早半年でやっと読了。 (前作読んだ時、面白すぎて前後に読んでた他の作品が霞んでしまったのは…苦い思い出) 今回も第二次世界大戦時。 ヒトラー政権終盤のドイツのお話。 まず一言。 これだけ期待しててなお、それを上回る出来。この安心感。40冊の参考文献は嘘をつかない。 冒頭と最後の伏線の回収の仕方も見事だし、 戦後70年が経とうとしてる時代背景と、現代を生きる我々が受け取るリアルなバトン。 作品として面白いのは当然として、 最後に作品の当事者にさせられる読後感。たまらねえ。。。。 歴史から消されたエーデルヴァイス海賊団の存在を、多様性の価値が認められ、歴史の過ちを正すことができる時代になってきた今だからこその、発表。創作だけど、事実に限りなく基づいてる、というディストリビューション。 ここにまず痺れる。空想を空想で終わらせない姿勢。小説だから届けられるメッセージ。共犯者になる感覚。傍観者のつもりだったのに、気づいたら関係者になってるのよ。 今作のテーマは、 「どうして自分の都合で分かろうとするんだろうね」 だと思う。 理解できない部分は、相手が間違ってることにして、自分にとって矛盾のない人物像を作り出し、理解して、自分の枠に当てはめて捉える。 先日見た盲目の映画監督の「ナイトクルージング」でも思った、わかった気になるんじゃなくて、相手のことを知る努力が必要というか。 わかった気でいる人の言葉って、気持ち悪いと思うんだよね。 ふてほどで度々出てくる「気持ち悪」にも、こういう多様性を過剰に理解してる状況に、こう感じてたんじゃないのかなぁ。 とにかく名作なので全人類に読んでほしい。 そして表紙のイラストは、左から、ヴェルナー、エルフリーデ、レオ、ドクトルで合ってますか。続きを読む
投稿日:2024.04.23
ぽてち
1944年のドイツの小さな村に、鬱屈した思いを抱えた16歳の少年がいた。母は幼い頃に亡くなり、父は密告されて死刑になった。密告者を待ち伏せ、襲いかかる寸前、聴こえてきた音楽に彼は心を奪われる。ハーモニ…カを片手に現れた少女は翌日、もう1人の少年に引き合わせる。それがエーデルヴァイス海賊団との出会いだった……。 史実を基にした、とても読み応えのある作品だった。前作『同志少女よ、敵を撃て』の殺伐とした雰囲気はなく、ジュブナイルを読んでいるような楽しさがある。反面、描かれているのは戦争という極限状況における民衆の行動の是非で、非常に重いテーマだ。この落差がいい。 偏屈じいさんから届いた最後の手紙で、涙腺が崩壊した。 難点を挙げるなら、前作でも感じた“ラノベ的な軽さ”だ。狙ってやっているのか、こうした文体でしか書けないのか知らないが、作品の背景やテーマを考えると非常に強い違和感がある。続きを読む
投稿日:2024.04.21
ビール枝豆
このレビューはネタバレを含みます
ナチス政権下において、その統制に反発して生まれた14〜18歳程度の若者達のグループの1つ、エーデルヴァイス海賊団のメンバー、ヴェルナー、レオンハルト、エルフリーデ、ドクトル、フランツによる、強制収容所に繋がる鉄道のトンネル、橋の爆破に至る物語。 政治的、思想的信条を持たない彼等が何故命懸けでその様な行動をしなければならなかったのか。それは、表向き人々に隠されているとは言え、皆気付いている筈の虐殺を彼等が実際に目にしてしまったから、と彼等は言う。 支配する体制側について巨悪も見て見ぬ振りをせざるを得ない多くの市民、大人に対して、自由を求める若者特有の純粋さの為せる技か(勿論、若者といえど多くは体制迎合であろうが)。 改めて映画「関心領域」を早く観たいと思った。
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