【感想】闇夜に惑う二月

アラン・パークス, 吉野弘人 / ハヤカワ・ミステリ文庫
(4件のレビュー)

総合評価:

平均 4.8
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ブクログレビュー

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  • katokicchan

    katokicchan

    このレビューはネタバレを含みます

    ハリー・マッコイのシリーズ2作目。
    前作で警察小説の枠を飛び越え、アウトロー的な動きをしっかりしていくマッコイが、パラノイア的な犯人と対峙する物語、ロボトミー手術の話も出てきて、常識や倫理も飛び越え始めた。そして、マッコイの古き過去に絡んだエピソードに至って、彼が完全に人としての道を踏み外すに至り、このシリーズはこれからどう展開するのだろうと不安と共にわくわくする。最後の1行は染みわたった。このシリーズの読み方はちょっとわかってきたと思う。

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    投稿日:2024.05.07

  • あんどうとり

    あんどうとり

    このレビューはネタバレを含みます

    やっぱり2作目の方が面白さが増してる、今回はマレーとワッティーのどちらかとほぼ一緒にいるからチーム物感が増して前作とは印象がぜんぜん違う。
    事件も連続殺人事件の捜査でわかりやすいし、事件の顛末もショッキングでいい。
    マッコイとマレーの関係がやっと判明して、だからこんなにマッコイに目を掛けてんだなってわかった。
    前回よりパワーアップしてるところは憎まれ口の多さ(笑)
    けっこうキツイことを言ってるのに普通に聞き流すし、当たり前なやりとり感がかっこいい。
    クリント・イーストウッドの映画みたいでこの部分だけでめっちゃ満足した。

    ラストの1文は誰の言葉なんだろう、予想ではマッコイかな?と思ったけど違うのかな。
    3作目は表紙からタイトルからぜんぜん違ってかっこよくなってるから今から楽しみ。

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    投稿日:2024.05.03

  • シュン

    シュン

     ダーティな訳あり刑事ハリー・マッコイを主役としたシリーズの第二作早くも登場である。お次の第三作も既に出版されたばかりなので、遅れを取っているぼくは慌てて本作を手に取る。500ページを超える長尺の作品だが、スタートからぐいぐい牽引される、心地良いまでの読みやすさだった。

     アナーキーな印象の刑事マッコイに、年下なのに面倒見の良いワッティー、上司にはタフでハードでおっかないのだがどうにも面倒見の良いマレーという捜査トリオがとにかく良い。前作を引き継いで読んでゆくとレギュラー出演組の個性がそのまま増幅されるほどにシリーズの魅力にどんどんはまる。幼ななじみでギャングのボスのスティーヴィー・クーパー、女性記者メアリー。いずれもマッコイとのやりとりや距離感が素晴らしい。

     さて本作の事件は、前作よりさらに派手派手しい。建設現場の屋上での無残な殺害現場に幕を開ける。日付入りの場面転換は前作を踏襲。ただし今回は殺人者の目線での描写が日毎に挿入される。殺人の動機もこの殺人者の異常性もエキセントリック極まりない。全体ではこの作品のジャンルは、警察小説の形を取ったノワールだと思うが
    、殺人者のシーンや、もう一つの材料ともなっているロボトミー手術を考えると、サイコ・サスペンスと言ってももいいくらい。

     残虐性、荒っぽさ、そして過去の幼児虐待の記憶など、すべてが前作を引き継ぐと同時に上回って見える。とりわけ過去の孤児体験、修道院での男児性被害など暗すぎる過去を引きずる主要キャラクター二人の過去と、本作での決意と行動は全体を揺るがすほどの意外性に満ちており、警察小説としての枠組みすら破壊して見える。

     1970年代のスコットランド。グラスゴーを吹き抜ける時代の風。カトリック教会の光と闇。いつもながらの残虐な死と狂気に満ちた犯罪のタペストリーが、未だ二作目だというのにクライマックス感を見せてくれる。とんでもない作家。予想を覆す展開のシリーズ。善悪の彼岸にある心の深い傷と、半世紀前という闇の時代を吹き抜ける血腥い風の冷たさ。熱い怒りの血が流れ、愛に飢えまくる主人公マッコイのアンチ・ヒーローな魅力が凄い。彼のあまりに強烈な行動とその結末まで魅せられる力作。荒っぽくもデリケートな本作の愛と痛みに震えて眠れ。

     本作は、エドガー賞最優秀ペーパーバック賞の最終候補作となり、次作の『悪魔が唾棄する街』(2024年3月既刊)では見事に同賞を射止めたとのことである。楽しみな必読シリーズの登場である。
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    投稿日:2024.03.26

  • gladys3170

    gladys3170

    読み終わって最初の感想は、「新たな傑作シリーズの誕生」というものです。前作を遥かに凌ぐ出来だと思います。前作でショーン・ダフィーのシリーズには、及ばないと言ってしまいまいましたが、それも撤回しなくてはいけません。
    原題は「February's son」今回は、2月のグラスゴーが舞台です。タイトルも中々、意味深です。相変わらず、印象的なオープニングで、話しに引き込むのが上手いです。推理小説的な面白味としては、途中でそう繋がっていたのかと驚く箇所が有ります。
    本シリーズの最大の魅力は、解説でも述べられていますが、主人公ハリー・マッコイの危うさです。今作では、少年期のトラウマから、警官にはあるまじき事に、道を大きく踏み外してしまいます。最後は、ハリーの悲しい
    告白で終わる事になります。ハリーが、この後、どうなってしまうのか、今から気になってしまってなりません。
    ☆4.8年間ベスト級だと思います。
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    投稿日:2023.11.08

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