【感想】万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

デヴィッド・グレーバー, デヴィッド・ウェングロウ, 酒井隆史 / 光文社
(9件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 正木 伸城

    正木 伸城

    メモ→ https://x.com/nobushiromasaki/status/1785239865032094042?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw

    投稿日:2024.04.30

  • 夜田わけい

    夜田わけい

    いい本なんだけど、どこからどこまでがグレーバーのアイデアで、どこからがウェングロウのアイデアなのかがあまりはっきりしていない印象があった。斬新な価値観、西洋中心主義への揺さぶりは、グレーバーが提唱せずとも西洋の文献には存在する。グレーバーがそのことを知らなかったはずはない。本当はもっと別の内容を、グレーバーが一人で書きたかったのかもしれない。続きを読む

    投稿日:2024.04.14

  • たけ坊

    たけ坊

    考古学者と人類学者の共著のビッグヒストリー系なんだけど、ハラリやダイアモンドが前提としていることを否定する。
    ビッグヒストリーを書いてきた思想家はルソーとホッブズとの考えの間を行ったり来たりしてきたが、どちらも真実ではない。古代の人や未開の人は我々が思っているような未熟な人ではなく我々と同様に思索する人々だった。アメリカ先住民は西洋を批判していて、ヨーロッパ人は彼らから多くのことを学んでいた。社会的不平等に起源があると考えるが、それは農耕によって不可避的にもたらされたものではない。本当に問題にすべきは社会的不平等の起源が何かではなく、どうして閉塞したかにある。人類はそれまで様々な社会組織の間を往復しヒエラルキーを築いては解体してきた。新石器時代の農耕は長い時間をかけて進化しており、革命と呼びうるものではなかった。戦国時代の小氷期がアメリカ先住民の人口減少によるものである可能性。文化は他集団との違いを強調するためのもので、これが閉塞の一つの条件。ヒエラルキーの痕跡のない都市や共同体。現代の国民国家が決して自明のものではないこと。
    翻訳者も凄い、これだけ専門性高いものを読みやすく訳して。
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    投稿日:2024.03.20

  • しゃん

    しゃん

    暗黒時代とは、進化論の視点から現在を中心として歴史を観 察したときに現れる異分子を指している。本書は発展段階の 秩序空間に存在しえず、エラーとして意義付けされたすべて の可能性を肯定的に読み返す。すると、そこに現れるのは進 化の奴隷から開放された遊戯の人類史であった。

    個人的に、千のプラトーの直後に本着を手に取れたことが僥 倖だった。歴史の境界線を反復横とびする自由な欲望の形態 が、具現的な形で理解できる。
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    投稿日:2024.02.10

  • sakufuu

    sakufuu

    ルソーの「人類は農業が始まって以来、戦争、国家権力、格差、金銭という悪を生み出した」と、ホッブスの「人類の原初は、孤独で貧しく、つらく残忍で短い、悲惨なものだった」の両理論の間違いを指摘して、本来の人間はどういう存在か、あるいはそれを踏まえてどんな未来を考えるべきか、を人類学と考古学のエビデンスから明かす。そしてそれは「とても遊戯的な楽しみ」に満ちた人間存在を示唆する。
    第1章
    ルソーとホッブスの理論は現代に生き続け、現代の社会や政治のあり方に多大なステレオタイプとなっている。
    第2章
    16世紀のアメリカ先住民カンディアロンクがヨーロッパに渡り、残した言葉を今までの人類史は「当時のヨーロッパ人が自己投影させて語らせている」とし、取り合わなかった。しかしかれが残した言葉は本物で、競争や金銭への執着、弱者の放置、同胞な見殺し、議論を遮る態度、女性の不自由、上下関係の卑屈、これらのヨーロッパ人の態度を批判した。
    第3章
    これまでの人類史が基盤としてきた「狩猟採取民は未開で未成熟」が偽りである証明をする。彼らは最初から成熟した政治アクターだった。そして「不平等の起源はなにか(例えば農耕の始まり)」という命題自体が間違っている。「人類はいかに閉塞していったのか」なのだ。
    第4章
    狩猟採取民の(平等)社会成立の要素として「積極的な余剰物生成の拒否」と、その拒絶として「余暇を選ぶ」を解説。
    第6章
    ここでは人類が「コムギの奴隷」になることをいかに拒否し、回避してきたか。そして人類史の重要なポイントとされる「農業革命」は無かったことを説明する。急激な発展ではなく、慎重に1000年以上の時間をかけて農業は世界に浸透していった。
    第8章
    1970年代はじめかに発見されたウクライナの「メガサイト」はメソポタミアより古い都市だった。しかし考古学では、ここを「都市」としてみなされてない。それは集権的統治の痕跡や、ヒエラルキーの痕跡が見つからないから。メガサイトはこれらの生成を意図的に防止するシステムを構築していた。著者はこの「これは都市とは言えない」を批判する。
    第9章
    中国殷が集権的統治の国から無政府状態になったこと。それにより逆に豊かな国になったこと。メソアメリカのテオティワカンがコンキスタドールから「王国」とは見なされなかったこと(共和制とみなされた)。そのシステムは先進的政治をおこなっていたこと。
    第10章
    「国家」という定義の無効。「社会が高度に複雑になれば国家が出来上がる」、「国家が出来上がれば、社会が高度に複雑になる」という基準自体がおかしいし、何にでもこれを当てはめて考える思考態度の否定。
    第11章
    16世紀のアメリカ先住民たちはすでに富と暴力に支配された「文明」を熟知し、そのうえでそれを拒絶し、別の文明を構築しようとした、成熟した人々だった。その時代に生きたカンディアロンクは、モンテスキューなど当時のヨーロッパの知に多大な影響を与えた。

    (グレーバーの、フリーダムはドイツ語の「friend(フレンド)」から由来する。つまり自由は、友を作ること、約束を守れること、平等であること、という指摘を踏まえ)最近の日本の「孤独礼賛」の風潮は、この社会の自由とその気風の喪失と関係しているのではないか。(訳者)636

    長い間、女性は兵士にむかないと考えられてきたが、近年の実験から射撃は女性のほうがむいていると解った316

    前11000~9500年頃、人類は穀物の栽培を始める前、中東三日月地帯で、最初は実ではなく藁の利用を始めた。263

    ただの野生植物にすぎなかったコムギは、「人間が栽培化して繁栄した」と同程度、「コムギが人間を家畜化して繁栄した」ハラリ。石を嫌えば、人に取らせ、他の植物を嫌がれば日差しの中草取りをさせ、水が欲しければあちこちから運ばせた260

    ウェンダット(インディアンの集合体)にはまがい物の首長と、本物の自由がある。私たち現代人には、本物の首長と、まがい物の自由がある。147

    ピンカーの理論に反して、「未開」とされる文化には不思議な魅力があるようだ。アマゾンのヤノマミ族(最も暴力的とされる)に誘拐された少女は、後に現代社会に戻ってきたが、その生活に悩み再びヤノマミに戻った。南北戦争時に疎開としてインディアンに預けられた子どもたちは、終戦後迎えに来た産みの親を拒否して、育ての親のインディアンに泣きついた。逆にインディアン部族から剥がされ、文明社会で教育の機会などを与えられたインディアンの子どもたちは、逃げ出すか、適応しようとして失敗し部族に戻った。人が「何を幸せと感じるか」の基準を設定するのは難しい23

    心理学者スティーブン・ピンカー『暴力の人類史』は、杜撰な人類学知識と恣意的な資料(大抵は有名な人類学ニュース)をもとにして書かれている。心理学者の思いつきエッセイのようなもの16
    続きを読む

    投稿日:2024.02.09

  • 傘籤

    傘籤

    「よりよい問いを発しよう」という訴えがこの本の根底にはある。それは、仮に本書の問いが「不平等の起源を問う」という事であった場合、最終的な結論が「人類の本性として卑しむべき在り様に警鐘をならし、ささやかに手をくわえる」ことくらいだということがわかっているからだ。それとは異なる結論――つまり「不平等の起源など存在したなかったのではないか」ということこそが切実なる訴え本書を支えている。
    人間は生まれつき凶暴な生き物であり、人類史とは始まりからいまに至るまで暴力に彩られている。であるならば「進歩」「文明」とは人間の競争を好む性質を動力としての救済となる。このようなストーリーはわかりやすく、特に億万長者からは非常に人気のある考え方だ。
    だが、人類史をたどると、そういった楽観的説話には明白な欠点があることがわかってくる。それは、もしそのような西洋的な文明が”そんなにいいものなら”、なぜ自然と世界中に広がっていかなかったのかということだ。ヨーロッパの権力者たちが500年近くもかけて、頭に銃口を向けながら強制的に採用しなければいけなかったのかの説明がつかない。

    つまり、あらゆる人間が、私たちが典型的に現代的なものとみなしているような高度に創造的な方法で考え行動する様式は、かつて歴史の中に実在していた。
    が、それは私たちの直感に反してしまう。遠い過去の人々が、私たちが直面している不平等の問題を解決――問題とさえみなさないような洗練された社会を形成していたということはまったく直感とは異なるがゆえに容易には受け入れられない。
    「ビッグ・ヒストリー」の多くは、技術革新として農耕だったり馬だったり鉄だったり虚構こそが、人類の進歩においてブレイクスルーを起こしたと記述し、そこに至るまで人間社会が取りうる形態を排除してしまう。テクノロジーが重要であることはいうまでもないが、それを過大に評価することで、抜け落ち、見過ごしている過去の社会があるのではないだろうか。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.24

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