【感想】類

朝井まかて / 集英社文庫
(19件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
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ブクログレビュー

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  • KENTON

    KENTON

    森鴎外の末子、森類が大正から昭和、平成を生き抜く物語。
    偉人の息子として生まれた森類の煌びやかな少年時代と、偉大すぎる親を持った故の懊悩を描いている。

    類は森鴎外の事をパッパと呼ぶ。
    それだけで、当時の森類の生活レベルが分かるようだ。
    大正時代に海外文化を生活に積極的に取り入れ、食事や芸術を楽しんでいる森家の雰囲気がなんともモダンで、読んでいるとなんだか羨ましくなる。
    現代のように日本の生活と海外の文化が混ざり合っておらず、それぞれを大事にし、意識を持って向き合い大切にしている森家の姿勢がこの時代特有の豊かさを表しているように感じた。

    誰もが名前を知っている森鴎外という作家の人間像も温かく描かれる。
    妻と子供達を愛し、死の間際までプライドをもって仕事に励む森鴎外の生き様を触れ、物語序盤に関わらず明治の男の生き様をみた。

    独特な感性と文章力を持ち、自分のペースで人生を謳歌する長女、森茉莉。
    一家を支える精神的な強さと優しさに溢れ、絵や文学にも才能を発揮する、森杏奴。
    二人の姉も個性豊かに描かれており、長編の小説にも関わらず、飽きずに読めた。

    作品を通して、実在する人の一生を追体験すると、いつも言葉にできない感慨を覚える。
    朝井まかて作品の中では、1、2を争うレベルで好きだった。
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    投稿日:2024.04.10

  • えりんちょ

    えりんちょ

    森鴎外の家系を知るには面白い。ただ、主人公の類は最期まで自分の才能を客観的に捉えることのできない不器用な生き方をしているので読んでて疲れる。
    まかてさんの表現もやや冗長であるため、読みづらさもある。

    兄弟であった森茉莉さんや森杏奴さんの作品を読んでみたい!との興味は抱く。
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    投稿日:2024.03.30

  • shogotanaka

    shogotanaka

    森鴎外の末子、明治時代のお坊ちゃんである森類の生涯。
    550頁超の読み応えだが、類さんの名前も知らなかったくらいなので、どのような展開になるのかがわからなくて、ずっと面白い。こういう人の小説こそ読みたい。

    甘ったれで勉強ができず、社会に出て苦労したことがなく、パッパのような何者かになろうとするが、画家としても作家としてもなかなか芽が出ない。贅沢をして煙草ばかり喫んでいる。
    森家の財産を食いつぶしていく様子、特に鴎外の版権が切れた後、戦後は読んでいて恐い。それでも、お坊ちゃん特有のおおらかさ、無邪気さ、善良さのため、どこか話が深刻にならないのがおかしい。

    「役に立つ立たないじゃないんですよ。あなたのような人が生きること自体が、現代では無理なんです」(40過ぎで初めて働いた出版社の編集部員)
    「威張るんじゃない」「いいか、肝に銘じておきたまえ。鴎外が偉いんであって、君が偉いんじゃない」(小林勇)
    「僕にはこれしかない、死んででもやり抜くという決意、あなたにはそれがないのよ」(妻)

    彼らの言い分は正しい。子どもが4人もいるなら尚更だ。
    しかし、正しいと感じる分だけ、姉森茉莉が体現していた「底抜けの善良さ」や戦前の東京にあった社会の余裕が失われてしまったことが悲しい。

    森茉莉、杏奴との姉弟関係が変化していく様子、当時のその場所に居合わせたような感覚になれるのも楽しい。
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    投稿日:2024.03.15

  • なごみまくり

    なごみまくり

    明治の終わり、森鷗外の末子として生まれた類。愛情豊かな父と美しい母、ふたりの姉と、何不自由なく華やかに暮らした少年期。父の死という喪失を抱えながら画家を志し、パリへ遊学した青年期。戦後の困窮から心機一転、書店を開業。やがて文筆家の道へ。文豪の子という宿命を背負い、何者かであろうと懸命に生きた彼の、切なくも愛すべき生涯を描いた大作。著者による講演「鷗外夫人の恋」も載録。

    森茉莉の大ファンとしては読まずにいられなかった。朝井まかてさんの作品は初めて読むけれど、すごい下調べしたんだろうなあと思う細やかな描写です。やや冗長な印象もあるけれどちょっとした植物や風景の描写があるから重厚な作品になるんだろうな。類はぽやっとした子で、鴎外とはイメージが違いますが、ある意味茉莉と似ていた部分があるんだろうな。でも当時は男女でかなり求められるものも違っただろうから大変さが伝わってくる。茉莉に助けを乞うところなんて泣けてくるよ・・・。書店をやっていたこととか全く知らなかったのでびっくりした。奥さんに支えられたわりにあっさり再婚に走るところは女性としては微妙な心持ちになった(苦笑)
    続きを読む

    投稿日:2024.03.03

  • 梶井俊介

    梶井俊介

    舞姫のエリスとは結ばれなかったが、子供達にドイツ風の名前をつけた森鴎外。於菟(おと)、茉莉(まり)、杏奴(あんぬ)、類(るい)。偉大なる父鴎外亡き後の森家の様子が、不肖の薬子を自覚する類の目を通して描かれる。。類と茉莉、杏奴との葛藤の中で小説とは何かについて考えさせられる。続きを読む

    投稿日:2024.01.31

  • なんてひだ

    なんてひだ

    充分に読み応えありました。長編多いけど飽きない恐るべし朝井まかてさん!ウイキペディアを開いて全部が実話で事細かに正確なのは驚くって事。晩年の千葉県移住もそうだし!森茉莉ではなく類なんだね、偉人伝でもない初めて知る人なので吸い込まれる程の夢中にならない ただ鴎外のパッパぶりやズバズバ言う茂げ、エッセイの森茉莉さん中でもアンナの行き方が好感触ですね。初めて就職した社長に言われたあなたのような人が生きるのが無理だと 自信がないけどここまで役に立たない人間だと思わなかったと自身を語る場面で好きになり好感が持てた。続きを読む

    投稿日:2024.01.16

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