【感想】LTV(ライフタイムバリュー)の罠

垣内 勇威 / 日経BP
(13件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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  • toshi1231

    toshi1231

    LTV を切り口にしたデジタルマーケティングの実践論。実務で携わっている人には参考になる内容が多いと思われます。

    投稿日:2024.03.14

  • そ

    LTVに対するモヤモヤが少しクリアになったかもしれない・・・


    ・LTVは企業視点、顧客視点両方を満たさなければならない

    ・LTVを高めるには
     ×全体改造:お客さまの行動を全部変えることは困難、囲い込みは幻想。「お客さまは自由に生きている」
     ○部分改善:ジャーニーのボトルネックとなっている箇所を小さく改善していく

    ・LTVを損ねるボトルネックを類型化して解消するフレームワーク「MAST」
     Meet:認識までの障壁が高い→ジャーニーの隙間を狙うライトな接点を用意
     Attract:顧客に魅力が伝わらない→接客を駆使
     Sense:顧客の状況がわからない→接点を増やし顧客情報を取得
     Trade:遠慮しすぎてチャンスを逃す→アップセル強化


    ・長期のLTVに向き合うための「計測指標」に納得感がない。また「顧客理解」もぼんやりしている。
     →まずカスタマージャーニー仮説を洗い出し、定性・定量調査により裏付けしていく

    ・LTVを計測する完璧な指標は存在しない
     →カスタマージャーニーを把握した上で、LTVボトルネックを解消する活動が促進されるようなKPIを設定する必要がある
     →短期で測れるLTVのKPIを作り、PDCAに活用する
     →「LTVボトルネック」の解消をKPIに設定する
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    投稿日:2024.03.10

  • nary

    nary

    ・カスタマージャーニーの全体改造は、高い確率で失敗する。大前提として、顧客側に主導権のあるカスタマージャーニーを、企業側が操作するのは極めて困難です。企業にできることは、顧客視点での障害を突き止め、顧客にもメリットのある形でカスタマージャーニーを微修正する「ボトルネック解消」だけです
    ・アクションにつなげるために、データは2つの役割を担います。その2つとは「証明」と「発見」です。「証明」とは、アクション仮説の実行について、ステークホルダーを説得するための「裏付けデータ」を取得することです。「発見」とは、まだ見ぬアクション仮説を得るために、「成果と連動する」データを取得することです。
    ・高単価商材を体験できる「ライトな接点」を用意することで、長期視点でのアップセルが可能だということです。(ホテルにおける結婚式の招待客やお茶)
    ・少しでも興味を持ってもらえる購入前後に、知られざるこだわりを説明するようなオペレーションを作る。一番興味を持ってもらえるタイミングを狙って、プッシュ型で情報発信する
    ・LTV向上に向き合うなら、こうした購入後のカスタマージャーニーにこそしっかりとメスを入れて対応すべきです。
    ・安全運転アプリは感情表現がなく、危険を検知して減点を表示するためのため、いつも怒られているように感じる
    ・より高い付加価値よりも、リピート獲得には「営業」が効く。宿の帰りに、少し時間に余裕のありそうな顧客に狙って、会話として営業する
    ・代理店からすれば対面のほうが親切に違いないという発想ですが、顧客側の都合を考えれば来店しなくて済むことによって満足度が上がるものもある
    ・調査結果で意外だった点、から始めてみる
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    投稿日:2024.01.10

  • katohirojp

    katohirojp

    このレビューはネタバレを含みます

    第1章:LTVの成功事例が少ない理由を分析します。LTVとは、企業視点と顧客視点の両方を満たすことで高められる指標ですが、多くの企業は企業視点に偏り過ぎています。その結果、顧客の囲い込みに失敗したり、データを活用できなかったり、ブランド感を誤解したりするなど、LTVを損なう罠に陥ってしまいます。本書は、このような罠を回避し、LTVを向上させる方法を解説します。
    具体的な事例は以下のとおりです。

    顧客の囲い込みに失敗する会員プログラムやロイヤルティープログラムの例。1
    ゴールド会員などの称号を与えても顧客のロイヤルティーが高まらない例。1
    データを活用できないまま分析しても意味がない例。1
    自己満足のブランド感がLTVに貢献しない例。1

    2章では、LTVを損なう4つのボトルネック=MAST(Meet, Attract, Sense, Trade)の概念を紹介しています。1 それぞれのボトルネックは以下のように説明されています。

    第3章:Meet(出会う)のボトルネックについて詳しく解説する。価の高い商材、知らないうちに検討が終わる商材、所有されても認識されない商材の3つのタイプに分けて、それぞれのボトルネックを解消する方法を提案する。
    価の高い商材:価格が高くて敷居が高い商材は、顧客が気軽に試せないため、認知度や信頼度が低いと出会う機会が減ります。このタイプの商材に対しては、ライトな接点を用意することが重要です。
    (リッツカールトンのランチとか、IKEAのランチ)

    知らないうちに検討が終わる商材:顧客が自分のニーズに気づく前に、競合他社の製品やサービスに決めてしまう商材は、出会うタイミングが難しいです。このタイプの商材に対しては、ジャーニーの隙間を狙うことが重要です。例えば、顧客が検討する前の段階で、自社の製品やサービスの存在を知らせる広告やコンテンツ、顧客が決める直前に、自社の製品やサービスの魅力を再確認させるリマインダーやクーポンなどの方法

    所有されても認識されない商材:顧客が購入した後も、自社の製品やサービスに対する関心や満足度が低い商材は、リピートや口コミが期待できません。後付けの接点をつくることが重要です。自社の製品やサービスの使い方やメンテナンス方法、おすすめの組み合わせやアレコレなどの情報を提供するメールやアプリ、製品やサービスの感想や評価、改善点や要望などのフィードバックを求めるアンケートやレビューなどの方法で、顧客との関係を深めることができます。1

    第4章:Attract(引き付ける)のボトルネックについて詳しく解説する。非対面の接客、対面の接客、過剰品質の魅力もどきの3つのタイプに分けて、それぞれのボトルネックを解消する方法を提案する。
    1

    非対面の接客:顧客と直接会わない場合、ウェブサイトやメール、チャットなどの文書で顧客に魅力を伝える必要があります。文脈に沿って端的に伝えることが重要です。セルフサービス(短い、幅が狭い、ニュアンスが伝わらない)、例えば、顧客の検索キーワードや購入履歴、年齢や性別などの属性に応じて、自社の製品やサービスのメリットや特徴を強調するコピーを作成することで、顧客の関心を引くことができます。1

    対面の接客:顧客と直接会って話す場合、店舗や展示会、商談などの場面で顧客に魅力を伝える必要があります。このタイプの接客に対しては、顧客視点から演出を考えることが重要です。例えば、顧客のニーズや疑問に応える説明やデモンストレーション、顧客の感情や反応に寄り添う言葉や表情、顧客の購買意欲を高めるインセンティブやクロージングなどの方法で、顧客の満足度を高めることができます。1
    過剰品質の魅力もどき:顧客にとって必要以上の品質や機能を持つ製品やサービスは、魅力とは感じられないことがあります。このタイプの製品やサービスに対しては、LTVに貢献しないおもてなしはやめることが重要です。例えば、顧客が使わない機能やオプションを削減して価格を下げる、顧客が求める品質や機能に合わせてカスタマイズする、顧客が感じる価値に見合った価格設定をするなどの方法で、顧客のコストパフォーマンスを高めることができます。1


    第5章:Sense(検知する)のボトルネックについて詳しく解説する。
    このボトルネックは、顧客の状況やニーズを正確に把握できないことを指します。1 このボトルネックを解消するためには、以下の3つのタイプに分けて対策を考える必要があります。1

    顧客情報の未取得:顧客の基本的な属性や購買履歴、利用状況などの情報が不足している場合、顧客に合わせた提案やサービスができません。このタイプの問題に対しては、ただ貪欲に情報を取得するのではなく、顧客にとってのメリットを明確にしながら、必要最低限の情報を取得することが重要です。1 例えば、顧客に会員登録やアプリのインストールを促す際には、そのメリットを具体的に伝えるとともに、個人情報の保護や利用目的を明示することで、顧客の信頼を得ることができます。1

    顧客シグナルの見逃し:顧客が自社の製品やサービスに対して発信するシグナルを見逃してしまう場合、顧客の満足度や離反リスクを把握できません。このタイプの問題に対しては、CV(コンバージョン)を設計して営業につなげることが重要です。1 例えば、顧客が自社のウェブサイトやメール、SNSなどで行う行動や発言を分析し、顧客の興味や関心、不満や要望などを把握することで、顧客に適切なタイミングや方法でアプローチすることができます。1

    顧客状況データの不足:顧客のライフステージやライフイベント、気分や感情などの状況データが不足している場合、顧客に最適な製品やサービスを提供できません。このタイプの問題に対しては、顧客が嫌がらない接点を増やすことが重要です。1 例えば、顧客が購入した後に、自社の製品やサービスの使い方やメンテナンス方法、おすすめの組み合わせやアレコレなどの情報を提供するメールやアプリ、顧客が使用した後に、自社の製品やサービスの感想や評価、改善点や要望などのフィードバックを求めるアンケートやレビューなどの方法で、顧客との関係を深めることができます。1


    第6章:Trade(商売する)のボトルネックについて詳しく解説する。既存顧客へのアップセル不足、新規顧客への押しが弱い、人間の熱意は代替不可能の3つのタイプに分けて、それぞれのボトルネックを解消する方法を提案する。

    既存顧客へのアップセル不足:顧客がすでに購入した製品やサービスに満足している場合、別の製品やサービスを勧めるのは遠慮してしまうことがあります。 例えば、顧客が購入した製品やサービスの使い方やメンテナンス方法、おすすめの組み合わせやアレコレなどの情報を提供することで、顧客の満足度を高めるとともに、別の製品やサービスのニーズを創出することができます。1

    新規顧客への押しが弱い:顧客が自社の製品やサービスに興味を持っている場合、決断を促すのは失礼だと思ってしまうことがあります。このタイプの問題に対しては、障壁を下げて営業することが重要です。1 例えば、顧客が自社の製品やサービスを試すことができるように、無料体験やトライアル、サンプルやミニサイズ、レンタルやシェアリングなどの方法を提供することで、顧客の購買意欲を高めることができます。1
    人間の熱意は代替不可能:顧客が自社の製品やサービスに対して不安や疑問を持っている場合、ウェブサイトやメール、チャットなどの文書では十分に解消できないことがあります。このタイプの問題に対しては、要所に絞って人を登板させることが重要です。1 例えば、顧客が自社の製品やサービスに関する質問や相談をした際に、電話やビデオ通話、対面などの方法で、人間の声や表情を使って、顧客の不安や疑問を解消することで、顧客の信頼を得ることができます。1

    第7章では、LTVボトルネックを取り除くためのプロセスを紹介しています。1 まず、LTV向上プロジェクトの始まりとして、目的やスコープ、メンバー、スケジュールなどを明確にすることが重要です。1 次に、「カスタマージャーニー仮説」を洗い出し、顧客が自社の製品やサービスに関わる過程を可視化します。1 その後、定量アンケートで「大動脈」と「LTV貢献」に当たりを付け、LTVボトルネックの候補を絞り込みます。1 さらに、定性インタビュー調査で行動の「順序」と「理由」を深掘りし、LTVボトルネックの原因と解決策を探ります。1 最後に、調査結果で現場を説得し、地道に改善を遂行します。1 本書では、三井不動産グループのLTV改善アプローチをコラムとして紹介しています。1

    第8章:LTVの成果を見える化するためのKPIの設計方法を紹介する。LTVのKPIは妥協してでも「売り上げ」につながる“数字”を示せ。例えば、顧客単価や購入回数、継続率、離反率などの指標を用いることで、LTVの向上が売り上げにどのように影響するかを明確にすることができます。
    短期で測れるLTVのKPIをつくり、PDCAに活用する。例えば、顧客の行動や反応を追跡することで、LTVのボトルネックの解消に向けた施策の効果を素早く検証することができます。
    定期的な「定量・定性調査」で効果を測定する。例えば、顧客の満足度やロイヤリティー、ニーズや要望などを調査することで、LTVの向上に寄与する要因や障害となる要因を把握することができます。

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    投稿日:2023.12.31

  • tomo112

    tomo112

    新規顧客の獲得より既存顧客のクロスセル、アップセル、再購入の方が遥かに効率的とは昔から言われてきた。ましてや、国内では長期に渡り消費低迷、人口動態的に将来も需要は増えないと分かっている以上、LTV(ライフタイムバリュー)を重視するしか生き残る道はない。

    それほど大事なLTVだが、戦略的に取り組めている企業はほとんど見当たらない。LTVの成功例をちょっと検索すれば、見つかるのはMA、CRMベンダーのマッチポンプ事例はかりだ。

    本書について私感で言い切ると、主に大企業向けにデジタルマーケティングの支援をしてきた著者が、本来は大切なLTVをバズワード化する業界の現状に耐えられなくなって、愚痴をぶちまけたプレゼンテーションである。
    本書の主張を読むと、企業のLTV向上活動の多くは、ベンダーやエージェントの利益誘導や企業内マーケティング担当の仕事した感にすぎないことが分かる。それは、一言でいうと、数字化しづらいことを避けて取った現実逃避、自己満足をするな!である。

    実はこれは、マーケティング領域だけでなく大企業のあらゆるイニシアチブに当てはまる。もちろん、マーケティング領域で本書の指摘、アドバイスは非常に具体的で役立つのだが、品質保証や従業員エンゲージメントなど、違う分野に取り組む企業内担当者にとっても、考え方、姿勢の面で自らを振り返ると良いだろう。

    あと文章が読みやすい、というか眼の前で話してくれるようなオンとオフの切り替え、流暢さが特長。脱線が40代に訴求が強いネタなのも合う。ビジネスノウハウ本は基本的に好きではないのだが、この本面白い、この人凄い、と久々に思った。
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    投稿日:2023.12.23

  • japapizza

    japapizza

    第1章 LTVの「成功事例」が少ないのはなぜか?
    ■デジタル顧客接点の特性
    1セルフサービス型:顧客が勝手に閲覧するため、人間による接客コストがかからない。人間が対応できないくらい、長期的に何度も顧客に情報を届けられる
    2ストック型:一度資産をつくってしまえば、その後長期的に低コストで顧客に接触できる。メールアドレスの登録者、SNSのフォロワーは、Webサイトへの検索流入者などに無料で届けられる
    →長期的な顧客とのコミュニケーションが得意

    ■失敗しやすい典型的な囲い込み施策
    ・会員プログラム
    ・会員アプリ
    ・サブスク
    ・メディア
    →いずれも顧客にとっての魅力が低く、失敗に陥りやすい


     ある不動産グループでは、グループ企業共通のポイントプログラムがありました。ホテルでためたポイントは、同じグループの商業施設でも使えます。しかしこのグループ企業の調査で分かったことは、ホテルで初回の会員登録をしたユーザーは、ホテルでポイントをためて、ホテルでポイントを使っていました。他の商業施設や交通サービスでポイントを使うことはありません。逆に、商業施設で初回の会員登録をしたユーザーは、商業施設でポイントを使っており、他のホテルなどには使いません。グループ共通のポイントがあったとしても、普段使っているサービスでポイントをためて、普段使っているサービスでポイントを使うだけで、クロスユースが自然発生することはありません。
     クロスユースを起こすには、送客される側の事業についての顧客理解を深めなければなりません。商業施設をよく使っているユーザーに、新しくホテルを利用してもらいたいなら、どのような状況でどのように宿を探し、どのような特典をどのタイミングで提示すればよいかを解明しなければなりません。これは後述するLTVのボトルネックを明らかにするアプローチと同じです。共通のポイントや特典があるだけで、勝手にクロスユースが起こることなどないのです。


     ではアプリとはどのようなときに最適な手段になり得るのでしょうか?正解は、端的に「頻度が高タスク」を最短で達成したい場合だけ、アプリは最適な手段となり得ます。
     突然ですが、私のスマホのホーム画面には1ページに28個のアプリが表示できます。この最初のページに表示されるかどうかが重要となります。大ざっぱに言えば、スマホを用いてこなすタスクのうち、頻度の高さが28番目以内であれば、そのアプリが選ばれる可能性が出てくるというわけです。
     一般的な企業のアプリで、顧客が高頻度で使うのは「EC」「店舗」「メディア」のいずれかであることがほとんどです。「EC」は毎日新着商品をチェックしたいと思えるくらい、ファンのユーザーしか使いません。「店舗」も高頻度で通っているユーザーしか使わず、ポイントカードやクーポンチラシの代わりにしています。「メディア」も毎日新着情報をチェックしたいと思うヘビーユーザーしか使いません。アプリのターゲットは、既にLTVの高いヘビーユーザーであることを認識しなければなりません。つまりアプリはヘビーユーザーにとっての顧客体験を高めたり、プッシュ通知によってさらに購買頻度を 高めたりすることに貢献する顧客接点なのです。
     ヘビーユーザーであっても、利用頻度が低い業界の場合、アプリが使われないこともあります。例えば、宿泊施設などは利用される頻度が低いため、アプリも利用されづらい傾向があります。ホテル業界の顧客調査で「アパホテル」に年間数回泊まる被験者に話を聞いたところ、宿泊のたびにアプリをインストールし、チェックアウト後にアンインストールしていました。ホーム画面に余計なアプリを置いておきたくないため、泊まるときだけインストールするのだそうです。こうしたユーザーは決して珍しくなく、本当に頻繁に使うアプリだけを厳選しているのです。
     繰り返しになりますが会員アプリを作れば、顧客を囲い込めるというのは妄想です。企業都合でカスタマージャーニーをねじ曲げることはできません。アプリにできるのは、既にLTVの高い顧客でかつ、高頻度で利用するサービスにおいて、その体験をスムーズにすることだけです。


    ■本章のまとめ
    ・LTV向上の成功とは、中長期での売り上げや利益が伸びること。しかし検証に時間がかかるため、短期のLTV向上や、カスタマージャーニー上のボトルネック解消を成功と捉えよ。
    ・LTVの成功事例は少ない。探してみても、サブスクビジネスのTIPSや、ツールの宣伝がほとんどで、LTVを伸ばした事例は見つからない。
    ・LTVを伸ばす目的で始まる、顧客の「囲い込み」施策は、顧客にとってのメリットが少ないため、利用されずに終わることが多い。失敗しやすい典型的な囲い込み施策は、「会員プログラム」「会員アプリ」「サブスク」「メディア」である。
    ・偶然社内にたまったデータを統合しても、LTVは伸ばせない。必要な顧客データを狙って集めなければ、高度な分析は不可能。さらに顧客データで実現できる1to1コミュニケーションの大半は不必要であり、成果につながらない。
    ・「ブランディング」は、本来LTVに貢献する。しかしLTVに影響しない要素にまで「ブランド」という言葉が入り込み、成果が出ない施策への言い訳や、企業活動を停滞させる過剰なチェックが横行する。ブランドも数字で白黒付けなければならない。
    ・複数の商品があれば、1人の顧客に対して複数回の接点を持ち得るため、LTVを向上させやすい。しかし各商品を扱う事業部門を横断した社内調整は難しいため、機会損失が生まれている。


    第2章 「MAST」に潜む罠
    ■本章のまとめ
    ・LTV向上のアクションにつながりやすい実践的なフレームワークとして、本書は「MAST」を提唱する。これにより顧客調査で発見した重大なLTVボトルネックを、大きく4つに分類している。
    ・「MAST」は、LTV向上を妨げるボトルネックが発生しやすい「Meet(出会う)」「Attract(引き付ける)」「Sense(検知する)」「Trade(商売する)」の4つのアクションから頭文字を取った言葉。
    ・「Meet(出会う)」は、ただ単に「初めて会う」ということではなく、「初めて認識される」までのボトルネック。単価の高い商材、企業のあずかり知らぬところで検討が終わる商材、使われているのに認識されづらい商材は、「Meet」がボトルネックになりやすい。カスタマージャーニーを丁寧に把握し、認識してもらえるポイントを見つけ出して解決する。


    第3章 「Meet(出会う)」のボトルネック
    ■購入後でも商品を認識してもらえる3つの条件
    ・記憶に残るストーリーを知る
    ・言葉にする必要がある
    ・頻繁に見聞きする

    ■本章のまとめ
    ・「Meet(出会う)」は、ただ単に「初めて会う」ということではなく、「初めて認識される」までのボトルネックである。「認識される」タイミングは、その会社や商品と初めて会ったときとは限らない。
    ・「Meet(出会う)」のボトルネックが発生しやすいのは、「単価の高い商材」「企業のあずかり知らぬところで、検討が終わってしまう商材」「所有されても認識されない商材」の3つ。カスタマージャーニーを丁寧に把握し、認識してもらえるポイントを見つけ出して解決する。
    ・「単価の高い商材」は、事前に認識してもらえるかどうかで勝率が大きく変わる。そのためには「ライトな接点」を持つ方法が有効。ここでは商材を体験できる安価なパッケージを作る「ライト商材」と、キャンペーンで会員を獲得しメール等で継続接触する「ライト会員」という方法を紹介した。
    ・「企業のあずかり知らぬところで、検討が終わってしまう商材」は、そのままでは認識機会に恵まれない。カスタマージャーニーの「隙間」を狙って、自社を認識させなければならない。この隙間は、「行動観察調査」によって発見できる。また隙間への対応が最優先事項であり、それ以外への過度な投資は避けるべきだ。
    ・「所有されても認識されない商材」は、リピートやクロスセルに苦労する。「記憶に残るストーリーを伝える」「言葉にする必要がある」「頻繁に見聞きする接点をつくる」のいずれかで認識させる。


    第4章 「Attract(引き付ける)」のボトルネック
    ■セルフサービスチャネルの制約
    ・説明できる情報の「幅」が狭いこと
    ・説明できる「時間」が短いこと
    ・微妙なニュアンスが伝わらないこと


    ■本章のまとめ
    ・「Attract(引き付ける)」のボトルネックは「魅力的な商品」や「おもてなし」が足りないという話ではない。既に備わっている魅力の大半が顧客に伝わっていないため、それらを正しく伝えるべきだという提言である。
    ・「Attract(引き付ける)」のボトルネックは、非対面コミュニケーション全般で発生しやすい。ただし対面でも顧客視点の欠如によって発生する。そもそも魅力がない情報を伝えようとしているケースにも注意する。
    ・非対面コミュニケーションは、「セルフサービスチャネル」ゆえに、大半のことが伝わっていないという前提に立たなければならない。セルフサービスチャネルは、説明できる「幅」と「時間」に制約があり、微妙なニュアンスも伝わらない。さらに顧客の行動シーンが「能動的」なのか「受動的」なのかによっても、伝え方を変える必要がある。
    ・対面でのコミュニケーションは、非対面に比べて容易に商品の魅力を伝達できる。しかし、顧客の状況を踏まえて接客しなければ、正しく価値が伝わらない。プロ気取りで自己満足の接客や、顧客にとって無関心な情報のゴリ押しなどに注意する。
    ・顧客に伝わっても刺さらない「過剰品質の魅力もどき」は一刻も早くやめるべきだ。特に商品やシステムの開発には、かなりの時間とコストがかかるため、要件定義のタイミングで間違った方針にならないように、顧客視点を入れる。


    第5章 「Sence(検知する)」のボトルネック
     …狭い視野で競合ばかり見ていては、LTV向上の方針を見失ってしまいます。同様にECサイトで会員登録せずに購入できる「ゲスト購入」もお勧めできません。ECサイトの多くはリピートを前提にしたビジネスです。いちげんさんの購入動線をスムーズにするよりも、リピーターとの連絡手段を獲得することを優先すべきです。


    ■本章のまとめ
    ・「Sense(検知する)」とは、顧客の状況を日常的に把握し、ニーズの発生を検知することを指す。顧客の個人情報と、クッキー(Cookie)情(1stParty)などをひも付けて、生涯にわたり顧客の状況を把握
    ・顧客の日常を正しく把握し続けるためには、顧客との接点を増やす努力が不可欠。ただし顧客ニーズを満たさない囲い込みは失敗するのが大半で、目的なく集めたデータは使いものにならない。
    ・「Sense(検知する)」がボトルネックになりやすいケースは、「顧客情報の未取得」「顧客シグナルの見逃し」「顧客状況データの不足」の3パターンである。
    ・顧客情報とは、個人を特定でき、連絡可能な顧客データのことで、最低限必要なのは「氏名」と「メールアドレス」。顧客属性データも「顧客シグナル」に使えるなら取得すべきだ。
    ・顧客シグナルは、一番踏んでほしいCVボタンを作り、それを踏んだかどうかを計測するのが簡単。さらに取得したシグナルを活用し、売り上げにつなげるための社内調整も欠かせない。
    ・日常的に顧客が今どのような状況かを把握するデータは、意識的に取得していなければ不足する。顧客接点が少ないビジネスでは、顧客との距離が遠い「メール」などの接点を使って、できるだけ時間とコストをかけずに、既存のコンテンツを使い回す方法が有効だ。


    第6章 「Trade(商売する)」のボトルネック
    ■「Trade(商売する)」がボトルネックになりやすいケース
    ・満足した既存顧客へのアップセル営業が弱い:サービスに満足している既存顧客がいるのに、営業せずに放置していてはLTVを損なう
    ・購入を検討している新規顧客への押しが弱い:すでに購入を検討している顕在層に対して、控えめな営業をしていては、むしろ不親切な印象を与えてしまう
    ・人間の対面営業が不足している:世の中は、営業パーソンの仕事を減らす方向に向かっている。しかし、人間にしかできない「商売」もある

    ■本章のまとめ
    ・企業は遠慮し過ぎて営業機会を逃している。もっと「売れ」というのが「Trade(商売する)」のボトルネック解消方針。
    ・現状のサービスに満足していれば、少しばかり営業されてもネガティブな感情は抱かない。そもそも顧客の目線からすれば、企業とは「隙があれば営業してくるもの」と認識されている。
    ・既存顧客が営業にネガティブな反応を示すかどうかは、これまでの「満足度」の高さと、「顕在ニーズ」の有無と、営業が求める「応答コスト」の大きさによる。安全に振る舞いたいなら、満足度が高いか、ニーズの顕在化している顧客を見つけ出し、応答コストの低い営業を仕掛ける。
    ・新規観客がターゲットの場合、よほど憧れの強いブランドでもない限り「満足度」の高さは期待できない。「顕在ニーズ」がある顧客に、「応答コスト」を下げて対応するのが安全策。
    ・非対面コミュニケーションでは、ニーズが顕在化したユーザーに、回りくどい動線を強いることで、機会損失が生まれる。購入までの障壁を下げ、ユーザーの決意が揺らがないように受け入れるべきだ。障壁の低いゴールを用意した場合、その後のクロージングを「非対面」から「対面」に切り替えることも有効。
    ・「対面」に勝る営業は存在しない。コストをかけてでも「対面」営業を投入すべきポイントを見逃してはならない。


    第7章 LTVボトルネックを取り除け!
    ■本章のまとめ
    ・多くの企業は「短期偏重」に危機感を抱いているものの、長期のLTVに向き合うための「計測指標」に納得感がない。さらに言えばカスタマージャーニーをしっかり把握できておらず「顧客理解」がぼんやりしている。
    ・まずカスタマージャーニー仮説を洗い出す。顧客との接点を時系列に洗い出し、各接点でLTVに影響がありそうなものを書き出していく。洗い出しの幅を広げるため、顧客に接している営業・サポート担当者にヒアリングする。
    ・ヒアリングやインタビューでは、「意見」ではなく「行動」を収集することに集中する。「行動」を聞くときは、その行動の前提条件を明確にする。投げかける質問は、できるだけ相手が頭を使わずに回答できるようにする。
    ・定量調査では「定性調査の被験者収集」「カスタマージャーニーの大動脈把握」「LTVに影響する代替指標と顧客接点の把握」の3つを目的に調査票を作成する。調査票作成後に、各設問で「結果から言いたいことが言えるか?」「誤解せず正しく回答できるか?」を確認する。
    ・定性調査では行動の「順序」と「理由」の把握、さらに施策の「評価」を目的とする。通常は約5人の被験者に対する調査で、8割以上の発見点が見つかる。行動は顧客の「属性」より「状況」の影響を受けるため、被験者の条件にこだわり過ぎる必要はない。
    ・定量・定性の調査は約2カ月で得られる。しかし調査結果を用いた施策実行は長い道のりであり、関係者への地道な説明・説得が必要。

    第8章 LTVの成果を「見える化」する
    ■本章のまとめ
    ・LTVを向上する活動であっても、経営者からは結局「売り上げ」への貢献を求められる。LTV向上を目指すなら、その成果を見える化すべく、「長期的な売り上げ」につながる“数字”を示すことから逃げてはならない。
    ・LTVのKPIに「完璧な指標は存在しない」ことを認めなければならない。LTVにほんのわずかでも相関していれば、長期利益視点の維持に貢献する。
    ・「企業視点」で長期利益を追求すると同時に、「顧客視点」での価値を追求するKPIになっていなければならない。
    ・一番納得しやすい指標は、長期の売り上げにつながる「中期(1~3年)」の指標である。例えば「1年LTV」という、1人の顧客が、1年間に購入した合計売上高はKPIの好例といえる。
    ・マーケティングの現場は1カ月に1度くらいのスピードでPDCAを回すため、「1年LTV」よりも短期で使える指標が必要になる。「LTVの代替指標」や「LTVボトルネックの解消率」が指標になる。
    ・LTVへの興味を失いづらい環境を整備してしまえば、その指標は持続力を持つ。納得できる指標をつくってもいいし、指標に興味を持てる「環境」をつくっても構わない。「環境」づくりに何より大事なのは、組織の長がその指標にコミットしているという姿勢。
    ・LTVを計測するには定期的な「定量アンケート」が必要になることが多い。加えて定期的な「定性インタビュー調査」も、環境変化の把握や人材育成に有効。
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    投稿日:2023.12.02

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