【感想】10代の悩みに効くマンガ,あります!

トミヤマユキコ / 岩波ジュニア新書
(8件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 某社会科教員

    某社会科教員

    〇新書で「学校生活」を読む⑮

    トミヤマユキコ『10代の悩みに効くマンガ、あります!』(岩波ジュニア新書、2023年)

    ・分 野:「学校生活」×「自分を読む」
    ・目 次:
     はじめに
     1.友だち関係がうまくいかない時
     2.レンアイの前も途中も、その後もうまくいかない時
     3.将来が決められない時
     4.イケてる人になりたいのになれない時
     5.自立と自活ができるようになるには
     6.ムカつく自分と付き合うには
     7.茫漠とした不安にとりつかれた時
     8.お金がなくちゃ生きられないと思った時
     9.性的なことがわからない時

    ・総 評
     本書は、10代の若者が抱きやすい悩みについて、マンガを題材に考えていく本です。著者は「マンガ研究者」として東北芸術工科大学で准教授を務める人物です。
     一般的に“マンガ”と言えば、単なる「暇つぶし」のための娯楽と思われがちです。しかし、著者は「マンガがくれる感動や発見が、文学に比べて劣るということはない」と断言します。著者自身も「マンガに人生を救ってもらった過去」があると言い、本書では少女マンガや少年マンガ、さらには子供向けマンガから大人向けマンガまで、多種多様な作品が取り上げられています。この本を読んで面白いなと思った点を、以下の3点にまとめます。
     
    【POINT①】「失敗したかどうかをすぐに決めつけない」――吉田まりもと岩倉美津未のケース
     吉田まりも(『教室の片隅で青春がはじまる』)と岩倉美津未(『スキップとローファー』)は、ともに入学式直後の言動でクラスから浮いてしまった女の子です。しかし、彼女たちは「失敗したかどうかをすぐに決めつけない」という共通点があり、自分なりにできることをやっていくうちに、彼女たちなりの交遊関係を築いていきます。最近の10代は「キャラや人間関係が固定し動かせない」ものだと考えがちですが、そうではなく、自分次第でいかようにも変化するものであること、重要なのは「思っていることを素直に言葉にする」ことであり、それが関係改善の第一歩になると著者は指摘しています。

    【POINT②】「物事は一概には言えない」――椚ヶ丘中学校3年E組28人のケース
     『暗殺教室』は、ある学校の最底辺クラスに属する生徒たちが、自らの暗殺を望む怪物である「殺せんせー」から様々な教えを受けることで、心身ともに成長していくマンガです。理不尽な学校のシステムによって自信を失っていた生徒たちは「ダメダメだと思っていた自分たちに実は長所がある」と知ることで、自信を取り戻していきます。著者は、このように「物事は一概には言えない」と知るだけで、人はちょっとだけ強くなれると指摘しています。不甲斐ない自分や理不尽な環境に“ムカつく”時は、その背景を探り、対策すること、そして何よりも「諦めずに足掻き続ける」ことが「ムカつき上手」への道だと言います。

    【POINT③】「お金の話=はしたない?」――ウシジマくんにお金を借りに来る人たちのケース
     現代社会を生きる上で「お金とのつきあい方」は大事ですが、世間は「お金の話をしたがらない」傾向があります。そこで、マンガを通じて「人様のお金事情を知る」のはどうでしょうか。闇金業者を経営する丑嶋(『闇金ウシジマくん』)のもとには様々な人がお金を借りに来て、そして破滅していきます。しかし、その人たちの多くは、私たちとあまり変わらない“普通の人”であり、ちょっとした油断や不注意から転落していきます。だからこそ、このマンガは「自分に引きつけて考えること」ができ、さらには「薄皮一枚で隔てられているだけのお隣さんをみてヒヤッとするのも、いい社会勉強になる」と著者は指摘しています。

     よく巷では「失敗を恐れるな!」といった標語を耳にしますが、誰でも“失敗する”ことへの不安は少なからずあるでしょう。その際、マンガは「失敗した時はどうすればよいのか?」または「どうしたら失敗するのか」といったモデルケースを私たちに与えてくれると言えます。もちろん、マンガの世界はフィクションですが、だからこそ、私たちが「こうなりたい!」あるいは「こうはなりたくない!」といった世界を見せてくれるのだと思います。登場人物のように行動はできずとも、自分が抱える不安に少しでも解決の糸口を見出せたのであれば、それは著者の“処方箋”が効いている証拠と言えるでしょう。
    (1516字)
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    投稿日:2023.12.27

  • mayugeco

    mayugeco

    友達や親との関係、進路、将来、見た目、SNS…そんな10代のモヤモヤを助けてくれる多種多様なマンガを紹介してくれる。
    なるほどなあ。な一冊。マンガだから手に取りやすいし感情移入もしやすいし。
    オリオリスープとプリンセスメゾンは読んでみたい。続きを読む

    投稿日:2023.10.27

  • 習メ展示

    習メ展示

    7月12日新着図書
    【10代は人間関係にもやもやしたり、進路や将来にあれやこれやで忙しそう。そんな悩みはマンガで解決できるかもしれません。ふわっとこころとからだが軽くなるマンガをたくさん紹介します】

    タイトル : 10代の悩みに効くマンガ、あります!
    請求記号 : 159:To
    https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/BB28215421
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    投稿日:2023.07.12

  • kimisteva

    kimisteva

    子ども・若者に対して、自分の人生や将来について考えたり、何らかの学びにつながったりするようなマンガを紹介するコンテンツはたくさんあるが、そこでは、すでに作品そのものとして高く評価されているようなストーリーマンガとしての「名作」ばかりが紹介されることが多いように思う。

    本書が、それらのコンテンツと比して決定的に異なるのは、フィクションとしてのストーリーから学ぶだけでなく、フィクションの中に描かれる知識・情報の部分から学ぼう!という姿勢を明確にしている点だ。
    例えば「4 イケてる人になりたいのになれない時」では、元ビューティーアドバイザーの六多いくみ先生によるマンガのようなハウツー系が紹介されていたり、「5 自立と自活ができるようになるには」で『スキマ飯』みたいなエッセイコミック系が紹介されていたりするのは、率直にいって、面白い。

    「それは、単に、文字メディアをマンガ化しているだけなのでは!?」みたいな思惑からなのか、なかなかエッセイコミックや、ハウツー系が類書で紹介されているのを見かけたことがなかったので、とても新鮮だった。

    そしてそのような中で、これまでもとりあげられてきたようなストーリーマンガやギャグマンガが紹介されることで、これまでとは違った視点から、それらのマンガに描かれている知識や情報のありようについて見直せるというのも面白い。

    わたしのように、シンプルに「人生に悩んでいるから、なんかの解決になるかも」と思って読む人にも、マンガと学びというテーマに関心がある人にも、おすすめの本。
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    投稿日:2023.06.09

  • 雨の日も

    雨の日も

    本が好きだけど、増やすのが怖くて買えない
    家族もいるので買えるのと買えないのがある
    でも電子にはずっと抵抗があって、手を出させずにいたのだが…Yahooの広告に抗えずまんまと沼にハマり、自由になった。
    そして、この本読んで、既に10代からは遠いところにいるけど、10代の悩みを鮮烈に思い出した。あの頃のドロドロした焦りみたいな激しい感情、どうやって忘れちゃったんだろう。
    私の好きな漫画も処方されている。つーことは、いい漫画に出会えてるんだ。良かった。
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    投稿日:2023.05.22

  • dai-4

    dai-4

    10代じゃないけど、漫画のガイドブックとあれば、とりあえず紐解きたくなるというもの。試してみたい作品はちらほら、って感じ。

    投稿日:2023.05.08

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