【感想】藍色時刻の君たちは

前川ほまれ / 東京創元社
(33件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
13
12
4
0
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ブクログレビュー

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  • まり

    まり

    家族と家事のケアに縛り付けられて、閉塞した毎日と選択が狭めらめた未来を抱える3人の高校生と、手を差し伸べる青葉さんとの交流。そこに東日本大震災の津波がその日常をも飲み込んでしまう。どの描写もリアルで胸が詰まります。そして震災から11年後の3人は・・・
    羽ばたくことができないヤングケアラー、青葉さんの小羽たちへの想い。ずっしりした読み応えで、読む前にはなかったものが心に残されました。
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    投稿日:2024.05.12

  • cronista

    cronista

     社会問題として認識されながら、潜伏して表面化しにくいヤングケアラー。かつて、ヤングケアラーとして苦しんだある女性と、いま(設定は2011年の震災前後)ヤングケアラーとして苦労している高校生男女3人の交流を描いた物語。
     頑張りすぎて、助けを求められない高校生たちに、声をあげて良いんだよ、と優しく寄り添ってきた女性は津波にさらわれてしまう。
     そして、10年が経ち女性と同じ歳に達した彼等が気付きはじめた女性の思い。
     山田風太郎賞って、もっとエンタメ色強い賞だと思っていたけれど、こんな重いテーマでも受賞するんだね。
     泣きはしないけど、感動的な話ではある。こういうのを有名なインフルエンサーは紹介して欲しいよ。うす~い、やつじゃなくて、こういう、ズシ~ンとくるものを。
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    投稿日:2024.04.30

  • ミステイク承知の助

    ミステイク承知の助

    小さめフォントと1ページに上下段構成で、なかなかの文字数です。
    が、最後には泣いてしまってページを捲れません。あとがきにまで泣いてしまいました。

    第一部は、ヤングケアラーからの東日本大震災とかなり重たく苦しい内容です。
    家族なんだから、家族の面倒をみるのは当たり前。そんな環境で高校2年生の小羽、航平、凛子の3人は学校から帰ってきた後の時間を介護と家事に費やします。
    藍色時刻。なるほど。
    そして、被災。

    第二部は被災から11年後。看護師になった小羽。震災後、連絡をとっていなかった航平、凛子との再会から当時に向き合うまで。

    3人にとっての、青葉の存在の大きさ。
    あとがきの最後には、心からの同意。
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    投稿日:2024.04.13

  • マメム

    マメム

    前川ほまれさん著の『藍色時刻の君たちは』の概要と感想になります。重苦しい内容のため、ご注意下さい。

    概要です。
    小羽、凛子、航平の高校生三人にとって一度きりの青春時代は、家族の介護と東日本大震災という傷だらけの想い出を残して過ぎ去った。
    ただ三人の救いは、震災前に出会った少し年上の格好良くて優しい浅倉青葉というお姉さんと過ごした日常。
    三人は青葉さんにそれぞれの憧れを抱きながら大人へ成長するが震災後も未だに癒えない傷は多く、11年振りに奇跡的な再会を果たした三人は苦しさを承知で故郷を訪れる。

    感想です。
    本作でヤングケアラーという言葉を初めて知ったことと、私の読書歴の中で初の二段組の長編を読んだことで、なんとも言えない読後感を味わっています。
    どのような感情を抱くことが正解なのか分からずじまいですが、自分の知らない日常と感情と闘っている人々の存在を他人事だと無視できないなと感じています。

    相手を思いやる気持ちは大事ですが、本作で語られるような境遇にある人々は自分を責めずに、頑張ってきた自分をたくさん褒めて労って欲しいです。
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    投稿日:2024.04.08

  • pupunao99

    pupunao99

    まず第一部が苦しい。
    作品紹介に「3人は周囲の介護についての無理解に苦しめられ」とあるが、そういわれてしまえば、私自身も苦しめる側の無理解な人間だと思うし、読みながら自分の無力さと、小羽たちの重い日常と色々考えて、どんどん辛くなった。

    そして第二部は震災後の苦しみ。
    こちらもやはり、同じ経験をした者にしか心を開くことが難しいように思える…
    そもそも私が理解したいとか、寄り添いたいとか思うのは傲慢なのかもしれないなんて思ってしまったり…。

    本当に難しい。

    でも苦しみが少しでも癒えて欲しいと願う。
    この物語の中で、小羽たちは青葉さんとの出会いで救われ、青葉さん自身も、この三人との出会いに救われていた。
    沢山の苦しさの中からも、小さな温かい光が感じられたし、小羽が最後に一歩を踏み出せて良かった。

    子どもたちへの温かな眼差し、忘れないようにしよう。
    作者のあとがきは、必読だなと思います。
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    投稿日:2024.03.23

  • せりぐまん

    せりぐまん

    ヤングケアラーという問題と被災者のメンタルヘルスの問題。大きな2つの問題について描かれた小説だ。両方ともあまりに大きな問題なので、両方詰め込むのはお腹いっぱいになりそうだが、ちゃんと整理されていて読みやすかった。

    統合失調症の母を持つ小羽、双極性障害の祖母を持つ航平、アルコール依存症の母と幼い弟をもつ凛子。これでもかというほど苦難の連続でいっぱいいっぱいになりながら、現実から逃げることも許されずに頑張るしかなかった彼らに、手を差し伸べる青葉。
    震災があって3人ともヤングケアラーではなくなった。ヤングケアラーではなくなったが震災は彼らに大きなしこりを残していった。

    震災前の彼らの生活は、読んでいてあまりにもしんどかった。身内だからやるしかない。でも、彼らが頑張ってしまうから、大人たちは彼らのしんどさに気づかない。
    手離したらいいと言われても、どう手離せばいいのか見当もつかない。
    彼らみたいなヤングケアラーが問題視され始めてまだ日が浅い。今後、彼らを大人たちが守る制度ができてほしい。

    震災についても、あの日を忘れない、がんばろう東北…と励ますためのキャッチコピーも、彼らを追い詰める言葉になってしまう。忘れさせて…もう頑張ってるよ…と思って歯を食いしばっている被災者がいるのだ…

    能登被災者も、今も、そしてこれからも試練が続くのだろうと思うと心が痛む。メンタルヘルスは単純な問題ではないが、せめて物理的な不自由さから早く解放されてほしい…
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    投稿日:2024.03.21

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