【感想】反戦川柳人 鶴彬の獄死

佐高信 / 集英社新書
(1件のレビュー)

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  • sasha89

    sasha89

    小林多喜二は小説を書いて、警察という国家権力によって
    虐殺された。そして、反戦の思いを込めた川柳を発表して、
    多喜二と同様に国家権力によって命を奪われた人がいた。

    鶴彬。その人の短い生涯は映画になったり、幾人かの作家が
    作品として発表している。そして、いくつかの作品集もある。

    私が初めて鶴彬の名前と作品を知ったのは、田辺聖子の
    作品だったと思う。澤地久枝が、全集の復刻に尽力して
    いたのは本書で初めて知った。

    澤地久枝が手掛けた復刻版の原本を作り、鶴彬を後世へ伝えよう
    とした一叩人にも多くのページを割いており、この人にも
    興味を惹かれる。

    著者は鶴彬の川柳とその生涯に触れながら、鶴の周辺の人々、
    当時の川柳界の流れ、戦争賛美者への批判を綴っている。

    鶴彬の評伝だと思って読むと肩透かしを食らう可能性が高いが、
    「反戦」を主題として読むとなかなかに面白い。勿論、鶴彬の
    川柳はずしんと重く、腹の底に響く。

    特に興味をひかれたのは藤沢周平による、戦争賛美をした高村
    光太郎と斎藤茂吉の、敗戦後の比較だ。

    自身が戦争に協力したことを深く恥じた生き方をした人は、
    どれくらいいたのだろうかね。敗戦と同時に朝日新聞社を辞し
    た新聞記者むの・たけじについても触れている。

    17文字で反戦を強く訴えた鶴彬は、1937年12月3日に悪名高い
    治安維持法違反で検挙され、東京都中野区野方署に留置された。

    過酷な拷問と赤痢によって、1938年9月14日に29歳で殺された。
    尚、ベッドに手錠で繋がれた状態であったと言う。

    万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た
    手と足をもいだ丸太にしてかへし
    さん壕で読む妹を売る手紙
    タマ除けを産めよ殖やせよ勲章やろう

    鶴彬の作品の一部である。反戦以外にも過酷な労働を強いられた
    紡績工場の女工さんたちの哀しみを詠んだ作品もある。

    国家に反旗を翻したことで、命を奪われる時代が再度、来ません
    ように。
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    投稿日:2023.11.21

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