【感想】最後の語り部

ドナ・バーバ・ヒグエラ, 杉田七重 / 東京創元社
(10件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
3
6
0
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ブクログレビュー

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  • ルビー

    ルビー

    このレビューはネタバレを含みます

    初(?)のSF小説読了。
    最初はなかなかイメージが湧きづらかったけど、主人公の少女の真っ直ぐな姿勢と涙を流しながらも孤軍奮闘する内容に一気に引き込まれた。
    最終的に誰が味方、敵になるのか最後まで分からずドキドキハラハラしっぱなしだった。
    コレクティブ達の言う事も、もっともだぁー!だけどだけど……過去から学ばないコレクティブ達は果たして生き残れるのかな。

    「まったく同じである必要はない。互いに自分にないものを補い合えばいい。違いっていうのは、全体で見れば美しさの要素なんだ」
    「戦争がない。飢えない。でもその代償は?」
    「お話も、人間も、どれひとつとして同じものはない。乱雑なまでにばらばらだ。確かにまとまりには欠ける。しかし世界は多様であるからこそ、豊かで美しいのではないか。」
    最後、コレクティブ達のした事も結局は過去の人間達と同じなのでは…?

    終わりは、しっかり書かれていない。
    作者の、物語はまだ終わっていない。この後は読者自身の言葉で語ればいいというメッセージなのかもしれない。

    SDGsが満載に盛り込まれた内容だった。
    ぜひ、中・高生に読んで、いろいろと自分なりに考えてほしい。
    そして、宇宙船の中やセーガンの風景、コレクティブがなかなかイメージできないので、映画にしてほしい。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.04.08

  • yuuyom

    yuuyom

    タイトルと表紙からのイメージと違ってSFだった。彗星の衝突を避けて宇宙に飛び出した少女。将来は語り部になりたいと思っていたのに、慌ただしい出発の中で、希望していた神話のインストールに失敗する。380年後に目覚めた時、予定とは違いディストピア的な状況。物語の力を頼りに戦う少女。面白かった。でも、まだまだ続編がありそうな気がする。続きを読む

    投稿日:2024.01.28

  • コプ眠

    コプ眠

    2061年、地球は彗星が衝突する軌道にあり、ごく一部の人間が宇宙船で380年かけて惑星セーガンに移動しようとしていた。主人公のペトラ12歳は弟のハビエル七歳、科学者の両親とともに乗船する。昔話が得意な祖母は地球に残りペトラはそれが悲しくて仕方ない。宇宙船は船に乗れなかった人との闘争や睡眠を促し保つシェルターに入るときの不穏さを見せ発射する。宇宙船には世話人と呼ばれる眠らない人たちも乗船していて、ペトラの世話人ベンはなにか思うところがあるようだ。人に遅れて眠りについたペトラが目覚めるとそこには一緒に目覚めるはずだった家族はおらず、船はコレクティブという単一で、まるでエビのような透明な肌の人?たちに支配されていて、睡眠中に知識を詰め込んだ地球人のままグループはコレクティブに奉仕する存在となっていた。
    杉田七重の訳本!歴史や民族に関わるような児童書かと思いきや、SFとは。でも、訳文が美しく、独特の世界に没頭して読みました。たった一人で、記憶をなくしたふりをしながら自分の良しとする世界を、祖母の物語を支えにして探していく主人公がまっすぐで、応援しながら読みました。家族との再会シーンもありますが、驚愕の出会いです。しかし、現実であと40年後には睡眠で遠くまで行く技術は確立するのでしょうか?睡眠も結構カロリー使うし、子どもは厳しい気がするなぁ。
    翻訳もの特有の読みにくさはあるものの、一応小学生から大丈夫。一般的には中学生以上向けです。
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    投稿日:2023.11.29

  • alouette18

    alouette18

    児童図書館員研修同窓生による読書会の課題図書。

    自分で読んだときは、「語り部」というタイトルから想像した内容とは違い、「多様性を認める」ことが広がりつつある現代と正反対の思想は、大好きな『ギヴァー』を思い出させる展開。
    主人公の父親の
    「平等自体は素晴らしい。しかし平等と画一は違う。」
    「過去の間違いや過ちを忘れずにいて、子どもや孫たちの未来がより良いものになるようにするのが、われわれの務めだ。互いの違いを認め合いながら、平和な世界をつくりだす方法を見つけなきゃいけない。」
    という言葉は、イスラエルとパレスチナの指導者に聞かせたい。

    読書会では、
    「立派な語り部になるには、単に右から左へ物語をそらんじて見せるのではなく、物語を自分のものにして語る必要がある」

    など、「語り」について考えを深められたとの意見が多く、私が理解できなかったラストについて、他の方の考え方を聞くことで、それぞれいろいろな捉え方ができるんだなあと思いました。

    一般向けだと思いますが、中学生に勧めたという方もいました。ただし、読書に慣れた子向け、かな。
    日頃本の仕事に携わっている方でも、苦手な方が少なくなかったので。

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    投稿日:2023.11.16

  • 家計法廷

    家計法廷

    このレビューはネタバレを含みます

    ドナ・バーバ・ヒグエラの児童文学、SF作品。
    図書館を利用。

    彗星の衝突により地球滅亡が迫る未来。宇宙へと脱出する植民船に乗った少女ペトラが380年後にコールドスリープから目覚めると、コールドスリープ中にお世話をするはずの人間たちがクーデターを起こしていた。

    おばあちゃんたちから受け継いだ物語の力で強大な敵に立ち向かう話、かと思いきや、どちらかというと、地球の記憶を忘れていない唯一の人として奮闘する少女の話か。SFだからこそできる意外な展開、切ない展開もあったが思ったより爽快感はなかった。物語の力と、ペトラの弱点がそこまでストーリーに生かされていないというか。。。面白かったのは間違いないけど、その点だけ少し残念。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.11.12

  • Mira

    Mira

    SFとしては設定があるあるなのと、突っ込みどころが多くて勢いで押し切るほどでもないのが気になった。船内クーデター(?)で実権を握った「コレクティブ」も、地球人の記憶を消し、従わないものを「粛清」するほどの冷酷さを持ちながら、なぜかペトラたちのかつての持ち物や本をきちんと分類して保管するなど、なかなか脇の甘いところがあって謎。

    とはいえ、中盤はペトラの脱出計画がうまくいくかというハラハラだけで一気読み。こういうドキドキする本てストレス大きいんだよねなどと思いつつ。

    なので物語の力……というよりは、エンタメとして読んだかな、という感じでした。



    【この先ネタバレ】



    クライマックスでペトラがつかまって、もう一度記憶を消されるんだけど、結局無事というか、記憶は消えないまま残るのだけど、それはあの夢で描写された記憶の中の司書やおばあちゃんが、記憶のファイルを守ったからなのかな。設定の根幹にかかわるところなので、あそこらへんがいちばん作品としてあいまいに感じるところだったかも。
    続きを読む

    投稿日:2023.09.12

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