【感想】伝言猫がカフェにいます

標野凪 / PHP文芸文庫
(38件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
6
17
11
1
0

ブクログレビュー

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  • 雪洞

    雪洞

    このレビューはネタバレを含みます

    私は以前猫と暮らしていてコロナ禍で亡くしました。
    21才まで生きてくれたおばあちゃん猫で、病気をすることもなく眠るように息を引き取りました。
    いつか気持ちが落ち着いたらまた猫を飼おうと思いつつ早数年。
    気持ちは落ち着かないままです。

    最近は猫がいた生活を思い出すことも少なくなっていましたが、この本を読んで懐かしさと切なさの混じった気持ちでいっぱいになりました。
    私の猫もふー太のように会いにきてくれたらいいな…

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    投稿日:2024.05.04

  • まな

    まな

    ほっとできる1冊。
    しかし、よくこういう話を考えられるなぁ…と、感心してしまう。
    会いたくても会えない人からの伝言を持って来てくれる…もし本当にできたら素敵だね。

    投稿日:2024.04.12

  • natsuki813

    natsuki813

    あの世とこの世の境にあり、「会いたい人に会わせて
    くれる」と噂のカフェ・ポン。天寿を全うした猫の
    ふー太は、「仕事を5回達成すると、会いたい人に
    会える」という報酬につられ、店主・虹子のもとで
    働くことに…。続きを読む

    投稿日:2024.04.09

  • gabrielpetajirio

    gabrielpetajirio

    あの世とこの世の境目にあるカフェ・ポン(橋)の店主・虹子さんに雇われて、会いたい人への想いを伝える仕事を請け負う「伝言猫」のふー太。
    無事に仕事を5つこなしたら、ご褒美として自分が会いたい人(元の飼い主)に会いに行けるという設定。
    去年、飼い猫を亡くした時に気になって買っていた本。正直言って、期待はずれだった。
    猫の語り口調が今ひとつで物語に入り込めないこと、設定がファンシー過ぎて大人には甘すぎること、各話ごとに感動ポイント?があるっぽいんだけどエピソードがどれも浅くて感動できないこと、全話書き下ろしなのに、毎回いちいち言葉の説明があってかったるいことなどマイナスポイントが多すぎて残念。

    途中で辞めようかと思ったんだけど、続編のミステリ調の長編が読みたかったから最後まで読んだけど、時間の無駄だった。
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    投稿日:2024.03.31

  • かな

    かな

    このレビューはネタバレを含みます

    あの世とこの世の境にある「会いたい人に合わせてくれる」と噂のカフェ。会わせてくれると言っても会いたい人からの言葉を伝言猫がセッティングするという内容。会いたい人と言うのがあの世この世を問わずというところがミソ。そして誰でもと言うのでもなく店主の虹子さん(この世の人)のチェックが入る。天寿を全うした猫のふー太が伝言猫としてがんばる。ただ、ふー太は猫なので気まぐれ感やついついやっていることを忘れ寝てしまったり遊んだり。連作短編となっているが章が進むにつれ、内容も濃くなってゆく。エピローグで涙が出そうになった。

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    投稿日:2024.03.27

  • さてさて

    さてさて

    『会いたくても会えない人』に会うことができる、そのようなことを聞かされたとしたら、あなたは、誰のことを思い浮かべるでしょうか?

    友人、家族、そして恋人とあなたには何かしら特別な繋がりを持つ人がいると思います。あなたが学生ならば学校に行けば友人に会うことができるでしょう。家に帰れば家族にも会えるはずです。そして、恋人も同じことです。しかし、卒業してから友人に会おうとすると、単身赴任で一人だけ離れた地に暮らすと、そして何かしらの理由で遠距離恋愛になったとしたら、『会いたくても会えない』という状況が生まれます。

    とは言え、そんな会いづらい状況であってもその気にさえなればいくらでも会うことはできるはずです。一方で、『会いたくても会えない』という状況は誰にだって訪れます。そうです。死の瞬間の訪れです。残念ながらすべての人間がいつかは経験することになる永遠の別れ。その先には『会いたくても会えない』状況が固定されてもしまいます。人の世のさだめ、万人が従う他ないことなのだと思います。

    しかし、本当にそうなのでしょうか?死によって『あの世』と『この世』に別れた二人は『会いたくても会えない』のでしょうか?

    さてここに、『「会いたい」と思う相手の名前をしたためて、店頭のポストに入れる』先に、『会いたくても会えない』人に会うことができるというカフェで働く存在が主人公となる物語があります。さまざまなシチュエーションの中に『会いたい』を叶えていく主人公の活躍を見るこの作品。お店との契約で五人の『会いたい』を叶えるべく奔走する主人公を見るこの作品。そしてそれは、ふー太という、猫がまさかの主人公!となるファンタジーな物語です。

    『あー、ようやく終わった』と『終業を知らせるチャイムで目が覚めた』のは猫のふー太。『「こっち」の世界に来たのは、三日前の朝のこと』というふー太は『こっちの世界に正式に迎え入れてもらう』ために指定された『ガイダンス』に出席しました。そんな中に『黒猫のナツキ』と知り合ったふー太は『廊下の掲示板、見に行こうぜ』とバイトの情報を探しに赴きます。『黒猫はいいよな。引く手あまただぞ』と『前肢』を指す先には『カフェのキャラクターや絵本や映画への出演依頼など』『黒猫』ならではの募集が多々掲載されています。そんな中に『求む、働き者の猫。募集一匹。性別、種、柄は不問』という情報を見つけたふー太は『これなら俺もいけそうだ』と言うとナツキと別れ『貼り紙に描いてあった地図』の住所へと赴きます。そして、『café pont(カフェ・ポン)』と看板がかけられた『直方体に三角の屋根が乗っかった』『白い家』へと辿り着きます。『とりあえず鳴いてみるか』と『にゃー』と鳴くと、『白のワンピース姿の女性』が姿を見せました。『人間の話す言葉は理解できる。でも俺たちの言葉はなかなか人間には通じづらい』と思うふー太ですが、試しに『バイト募集の貼り紙を見たんだ』と言うと『新入りね。どうぞ』と招き入れられます。『私はここであっちの世界とこっちの世界の橋渡しをしている』と語り出した女性は『この店の主、虹子』と言うと、こっちの『人たちの願いを聞いて、そっち』『に住む猫たちに叶えてもらう。その取り持ち役』である旨説明します。『五回分のお仕事がちゃんと出来たら』『会いたい人に会いに行っていい』という報酬を説明されるふー太は、『天寿を全う』するまで飼ってくれていたユナのことを思います。『じゃんじゃん仕事回してくれよな』と言うふー太。そんなふー太に虹子は『店頭のポストに』『「会いたい』と思う相手の名前』が入れられるので、それを虹子が選別し、『さまざまな方法で客の求める「会いたい人」を探し出し、会わせるまでが』仕事だと説明します。『死者』を生き返らせるわけにはいかないので、『お客さんに伝えてあげたい言葉を相手から聞き出して、魂だけを連れてくる』と続ける虹子は、『ひとつの仕事が無事に終わったら肉球印ひとつ』がもらえるという『勤務表』の説明もします。『じゃあこれから伝言猫としてよろしく頼んだわよ』と言われたふー太。場面は変わり、再びカフェ・ポンに赴いたふー太は、『これ、やってみる?』と虹子から『一枚のカード』を差し出されます。そこには、『亡くなった父に会いたい』という言葉と、反対側には『〈美浪柚子〉と依頼人の名前が書かれてい』ました。『おお』と思うも『これだけの情報からどうやって当事者を割り出せばいいのか』困惑するふー太に『今日のちょうどお昼過ぎ』、『四十歳前後の女性と、ひとまわりくらい若い女性が二人で』店に来ていたことを伝えます。そんな情報を元に『伝言猫』としての仕事を開始したふー太。そんなふー太が活躍を見せるファンタジーな物語が描かれていきます。

    “もう会えない人からの「想い」を猫が届けます…あの世とこの世の境にあり、「会いたい人に会わせてくれる」と噂のカフェ・ポン。天寿を全うした猫のふー太は、「仕事を5回達成すると、会いたい人に会える」という報酬につられ、店主・虹子のもとで働くことに…”と内容紹介にうたわれるこの作品。”天寿を全うした猫のふー太は…虹子のもとで働く”といういきなりの記述に、この作品がファンタジーであることがわかります。そうです。この作品には主に三つの側面で、これでもか!というくらいのファンタジーどっぷりな世界が描かれていきます。では、そんな三つの側面を順に見ていきましょう。

    まず一つ目は、この作品冒頭に初めて登場する主人公の台詞、『あー、ようやく終わった』が、猫!のものであるということです。そうです。この作品は内容紹介にもうたわれる通り、猫が会話し、猫が職探しをし、そして猫が任務を遂行していくという、もう全編にわたって猫視点で、猫が主人公となって展開する物語が描かれていくのです。猫を何かしら擬人化する作品はそれなりにあると思います。例えば望月麻衣さん「満月珈琲店の星詠み」では、”猫の星詠みマスター”が登場し、占いをしてくれます。西加奈子さん「しずく」には、”大体人間ってのは、肉球がないもんだから、足音がうるさくて、いけないわね”とおしゃべりする二匹の雌猫が登場します。さらには、”吾輩は猫である。名前はまだ無い”と猫が登場する有川ひろさん「旅猫リポート」では猫視点で物語が進んでもいきます。しかし、これらの作品に比べてもこの標野凪さんの作品のかっ飛び度は半端ではありません。そもそもカフェ・ポンで仕事をしていく、そして『勤務表』まであるという、もう人としか思えないその活躍の様子は途中で猫であることを忘れてしまいそうにもなります。しかし、あくまで猫である証明かのように猫の思いが語られていくことで、主人公は猫なんだ!と再認識させられると共になんとも言えない不思議な感覚に陥ります。三つほど抜き出したいと思います。まずは、猫の想いを聞いてみましょう。

     『年中いつだって、あったかいところは幸せな場所だ、と俺たちは知っている。それに人間には分からないレベルで真夏だって夜は冷えてくる。飼い猫が飼い主の膝に乗ったり懐に忍び込んだりするのは、暖を取るためなんだ』

    猫と言えばこたつで丸くなる存在でもありますが、『あったかいところは幸せな場所だ』と思いを告げられると、なるほど感が増します。こんな風に呟く猫。猫好きな方にはより微笑ましい思いが込み上げると思います。次は『ケーキ屋の前』にできた行列を見てこんなことを語ります。

     『なんだって物を手に入れるためだけに、こんなふうに無駄な時間を使っているんだ。そんな暇があったら、俺だったらさっさと諦めて別のところに食料を探しに行くか、じゃなきゃ日なたを見つけて日光浴していたほうが、ためになるしご機嫌でいられる』

    なるほど。まあ、行列すること自体は人間の中でも意見が分かれそうですが、猫にこんな風に思われているかもしれないと思うと、気をつけないといけませんね。次はさらに高い視点にたったひと言です。

     『人間は余計なことで悩むもんだよね。くよくよしている時間があったら、今を精一杯楽しめばいいのにね』

    これには恐れ入りましたという他ないです。私も反省しかございません。いずれにしても、この猫視点の語りによって独特な雰囲気感が物語に加味されていくように感じます。ファンタジーが嫌いな方には馬鹿馬鹿しい…と思われるかもしれませんが、ファンタジーが好きな方、そして猫好きな方にはたまらない世界観を提供してくれる作品だと思いました。

    次に二つ目は、『あの世』が描かれるところです。こちらも考え方はかっ飛んでいます。この作品の主人公であるふー太は、ユナの元で十九年の『天寿を全う』し『あっち』の世界へと訪れた後に、ユナに会いたいという思いの元に戻ってきたという前提で物語はスタートします。現世を『緑の国』、彼方を『青の国』という表現をもって物語は描かれていきます。物語でふー太が雇われることになる『カフェ・ポンは緑の国と青の国の境目にあ』り、店主の虹子は猫の話す言葉を理解できるという想定です。もう超・ファンタジーという感覚だと思いますが、そんな中に次のように『あの世』の一つの側面が定義されてもいます。

     『年齢は享年でなく、本人の意向で決められる』

    なかなかに興味深い『あの世』のあり方ですが、これも物語的には面白いアクセントを提供してくれます。『あの世』と『この世』、その境目に着目する作品としては西條奈加さん「三途の川で落しもの」や桜井美奈さん「さようならまでの3分間」がありますが両作ともそんな境目に神秘性を感じさせるのに対してこの作品では猫が主人公ということもあってかそこに神秘性はほぼありません。ある意味独特な世界観だと思います。

    最後に三つ目は、『お客さんに伝えてあげたい言葉を相手から聞き出して、魂だけを連れてくる』という形で『この世』の人間と『あの世』の存在が繋がるところです。これこそがこの作品の最大のファンタジーと言えるものです。…とこの説明を読んでピンと来られる方もいらっしゃるかもしれません。”僕が使者です。死んだ人間と生きた人間を会わせる窓口”と語る主人公の歩美が生者と死者を繋げる役割を果たす辻村深月さん「ツナグ」の物語です。ざっくりと言えば、この作品は、歩美 = ふー太という置き換えの物語と言えなくもありません。「ツナグ」は私も大好きな作品で読書中、読後と、止まることのない涙に、深い感動の物語を味わいましたので、この作品にも期待が沸くところです。そして、「ツナグ」ためにはルールが存在するのも同じです。

     『伝言猫はあっちの国からの依頼がないと動けない。つまり緑の国の人が会いたいと願ってくれるかどうかによる』。

    これは、「ツナグ」でもこの作品でも同じことです。上記の引用箇所には片方のことしか書かれていませんが、「ツナグ」でもこの作品でも基本的には双方が『会いたい』と思わなければその願いは叶いません。しかし、この「ツナグ」とこの作品には決定的とも言える違いがあります。それこそが、「ツナグ」の使者・歩美はごく普通の人間である一方で、この作品の『伝言猫』は猫であるということです。辻村さんの作品が「ツナグ」ことにファンタジーの側面を集中させているのに対してこの作品では、猫が介在するという点でもファンタジーの要素を用いています。そのために猫がどうやって死者の思いを繋ぐのか、そこにはまさかの方法が登場します。それこそが尻尾です。まず死者に会ったふー太は死者の『魂を体の真ん中にしっかりと抱』きます。そして、『尻尾の先にぐっと力を込める』と『魂のかたまりが集中して』きます。その後、尻尾の先を、伝言させる対象に触れさせることで死者の『魂をごく短時間だけその人に乗り移らせることが出来る』という考え方です。なんともよく考えたものだと思います。主人公に猫らしさを残したままにファンタジーとして鮮やかに描いていくこの発想、他にも細かい設定が多々なされていく中に物語は展開していきますが、とにかくファンタジー要素がこれでもか!と登場するのがこの作品です。ファンタジーが嫌いな方にはうんざりすること間違いなしの一方で、好きな方には次から次へと繰り出されるファンタジーならではの設定の数々を存分に楽しむことができると思います。そういう意味では読む人をかなり選ぶ作品だと思いました。

    そんなこの作品は〈プロローグ〉と〈エピローグ〉に挟まれた五つの短編が連作短編を構成しています。そのすべての短編において主人公を務めるのはふー太であり、各話一人ずつ『カフェ・ポン』のポストに『会いたい』と『名前』を書き入れた生者と死者を繋いでいくという物語が描かれていきます。

     『会いたくても会えない人』に会うことができる、そのようなことを聞かされたとしたら、あなたは、誰のことを思い浮かべるでしょうか?

    この作品では、〈亡くなった父に会いたい〉など本来会うことのできない人に『会いたい』という思いの先にふー太が『伝言猫』としての役割を果たしていく姿が描かれていきます。上記した通りそれは尻尾から移し替えられた魂が移し替えられた主体を通じて見せていくものでもあります。

    さて、ここまでの記述で、「ツナグ」を読まれた方にはこの作品にも涙、涙の物語が描かれていくのではないかと思われたのではないでしょうか。実際に私も最初の短編〈初仕事 伝言猫がギャラリーに行きます〉を読んで、思わずグッと込み上げるものを感じました。しかし、その先も同じように感動が続く…と思った先に少し意外な展開がなされていきます。「ツナグ」では、基本同じパターンで生者と死者が繋がる中に涙の物語が描かれています。パターンは同じでもそれぞれの依頼の内容の幅と深さで魅せてくださるのが辻村さんの作品の魅力です。一方で標野さんのこの作品は、短編によってどんどん設定が変化していていきます。凝りに凝った設定でまさかの存在にまで魂が移し替えられるなど、もうなんでもありの様相を見せます。パターン化を避けたと言えなくもないですが、このことが少しとっ散らかった印象を与えてしまうのは避けられないと思います。また、深刻になりすぎないというメリットはあるものの、やはり猫が主人公である点にどこか軽さがついて回ります。これでもか!というファンタジーの極みを見るこの作品、そこには「ツナグ」の世界観の物語はありません。そこにあるのはあくまで猫の活躍を見る物語です。そう、この作品は猫が大好き!ファンタジーが大好き!そんなあなたのための一冊、それがこの作品なのだと思いました。

    『ここに、あなたの会いたい人の名前を書いて入れておくと、もしかしたら会えるかもしれませんよ』

    そんな案内の先に『会いたい人の名前』をポストに入れた人が『伝言猫』のふー太の力によって、奇跡の瞬間を見るこの作品。そこには、五人の願いを叶えるために奔走するふー太の物語が描かれていました。猫がしゃべるという次元を超えて職探しをして任務を遂行するというファンタジーが描かれるこの作品。次から次へと繰り出されるもうなんでもありな設定の数々にファンタジーの極みを見るこの作品。

    『カフェ・ポン』に出かけることがあったなら、自分は誰の名前を書くだろうか?とふと考えてもしまう、そんな作品でした。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.18

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