【感想】場所

アニー・エルノー, 堀茂樹 / 早川書房
(4件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 大学の図書館を読み漁る大学生

    大学の図書館を読み漁る大学生

    アニー・エルノーの本は、2冊目となるが、彼女の書く文章がやはりどこか好きである。

    この一冊は、彼女の父が亡くなった出来事から始まり、彼が生きていた時代、つまり作者である彼女の幼い頃を小説を通して"書く"ことで、思い返す、そんな話である。

    私が1番面白いと感じた点は、過去の回想シーンと、彼女の書くという行為によって思い出される記憶と、時間が進むにつれて、これらが交錯していく点である。

    また、物語全体を通して、階級の違いが描かれ、とても納得できる部分が多く、客観的に読むことができたように感じる。
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    投稿日:2023.04.01

  • けい

    けい

    フランスの階層をまたがった親子の話。まず、フランスが階層社会だということに驚いた。しかし、日本とは違い、文化や教養面で階層の差がつく。親のいる下の階層から勉学によって上の階層に上がった娘は、親(主に父親、下の階層の人々)との間にある時から溝を感じつつも、突き放すでもなく取り入るでもなく客観的に見ている。
    自分も、子供の頃は親や先生が絶対的存在だったが、自分が大人になってみると、もっと広い視野を持ち、親世代、老人世代の考え方や行動に疑問を感じることが増えてくる。そういうことと似た側面がある。
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    投稿日:2022.12.04

  • cookingresearch

    cookingresearch

    このレビューはネタバレを含みます

    2022年 ノーベル文学賞受賞者アニーエルノーの1984年発行でルノードー賞受賞作。
    シンプルな情熱は1991年発行。
    物語は著者の父親の生涯を描いたようなもの。しかし、編年体で何をした何がおこったということよりも、フランス社会の階層、貧困、そのなかでの幸せ、人間関係、暮らしをその地域特有の問題としてではなく、人間の普遍的な問題として捉えている。そして著者であるエルノーは大学にすすみ、文学で大学に職を得ることで、父親との精神的距離が遠くなる。父の操る言葉は決して上流階級のそれでも、文学的レベルが高級なものでもないが、それがなんだというのだろうか。生活にねざした言葉であり、劣等感に起因するおかしな言い回しでさえ愛おしくなる。
     著者は冷静に父をみながらも、父の視点でものを見ている。
     このような視点の多重性がこの作品の良さなのかもしれない。
    小品なので2時間もあれば読めてしまいます。

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    投稿日:2022.10.13

  • lacuo

    lacuo

    あえて説明してみようか。書くのは、裏切ってしまったときの最後の手段なのさ
    ジャン・ジュネ

    11
    父にロザリオを持たせ、両手を組み合わせた

    38
    彼は、怠け者でも、酒飲みでも、道楽者でもない、まじめな工員だった

    141
    自分が教養あるブルジョワたちの社会に入った時、その入口の手前に置き去らなければならなかった遺産を、明らかにし終えた。

    これが、この小説の一番大事な箇所かな。

    ---------------------------------------------------------------------

    これ読んでると、
    フランスの階級社会を、現実に生きてきた人の話、だということが分かる。

    すぐに連想したのは、ピエール・ブルデューのこと。

    彼は、フランス南西部のピレネーザトランティク県(べアルン地方)のダンガンで生まれた。

    父は郵便局員だった。
    エリート階級に生まれたフランスの一般的な知識人の出自とは、大きく異なっていて、彼はそのことを常に意識してたと思う。
    この小説を書いた、アニー・エルノーのように。

    ブルデューは、出身階層による大学進学率の格差を、社会階級ごとに不平等に配分されている文化的な財と能力を意味する「文化資本」の概念を導入することによって説明した。

    ---------------------------------------------------------------------

    あとがき

    154
    フランス社会の階層構造
    サルトルの言葉
    「われわれ、フランスの作家は、世界中で最もブルジョワ的な作家なのである」

    フランス文学は、知的に洗礼された都会の裕福な階級による、その階級のための、その階級の文学という色彩が伝統的に際立っている。ジャン・ジュネのような、特別枠に置かれた、例外的な作家はいるものの。

    『場所』や『ある女』は、ブルジョワ文学とは異なる、もうひとつのフランス、である。
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    投稿日:2022.10.10

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