【感想】猫を棄てる 父親について語るとき

村上春樹, 高妍 / 文春文庫
(60件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
9
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22
2
0

ブクログレビュー

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  • kayohiro

    kayohiro

    自分の人生は様々な偶然の産物、何が起きるかわからない。父との思い出を軸に、人生の有り様を考えさせられるエッセイ

    投稿日:2024.05.08

  • ノブ

    ノブ

    淡々と父のこと、父とのエピソードが語られ、そこに村上春樹氏のルーツが垣間見える。どこか新鮮で、こういう村上作品もいいなと思った。

    投稿日:2024.03.24

  • pedarun

    pedarun

    このレビューはネタバレを含みます

    【歴史は現在に生きていると気づくこと】
    村上春樹さんの本では、たくさんの史実的描写が出てきて、細かい描写に感心する。過去への好奇心と想像力は、どこから来るのかなと思ったりする。
    この本では、村上春樹さんの父親の経てきた過去について、一緒に猫を捨てに行った、自身の記憶にある出来事から始まり、90歳になった父親、そして母親などに聞いた、自身がまだ生きていなかった、主に戦時経験についてつづられている。


    「僕がこの文章で書きたかったことのひとつは、戦争というものが一人の人間ーごく当たり前の名もなき市民だーの生き方や精神をどれほど大きく深く変えてしまえるかということだ。そしてその結果、僕がこうしてここにいる。」

    東日本大震災から13年。震災を経験していない子どもたちが、この経験を語りつぐ活動をしているというニュースを見た。

    私は私のとても身近にいる人の経た体験も、その体験から今に続く世界の見方も、きちんと知らないなーと思った。


    「・・・歴史は過去のものではない。それは意識の内側で、あるいはまた無意識の内側で、温もりを持つ生きた血となって流れ、次の世代へと否応なく持ち運ばれていくものなのだ。そういう意味合いにおいて、ここに書かれているのは個人的な物語であると同時に、僕らの暮らす世界全体を作り上げている大きな物語の一部でもある。ごく微少な一部だが、それでもひとつのかけらであるという事実に間違いはない。」


    一般的な歴史を個人的な話として知ることで、歴史が生きた現実のものになる。
    歴史と現在のつながりを作って行く作業って、他者への想像力を養うことでもあるんだなーと思ったり。

    社会には、それぞれの現実が混在する。隣にいるひととさえもなかなかうまくやれないことも多い。生きてきた環境や時代が違うと、考え方や世界の見方は違うのは当たり前。摩擦を起こしながら人と関わり、ときに通じ合い、ときに自分の考えについて問い直し、相手について思考をめぐらす。他者との違いへの好奇心を持ち続けること、他者に影響され、出来事に影響され、自分の考え方が変わることを許すこと、それが世界への見方を豊かにし続けたいと思ったり。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.03.11

  • Yasukawa Mayu

    Yasukawa Mayu

    2009年イスラエルでの「高く強固な壁とそれに打ち砕かれる卵があるなら、私は常に卵の側に立つ」というスピーチの背景が見えてくる。「一滴の雨水には、一滴の雨水なりの思いがある」村上春樹の作品には独特のフラフラした感じがあるが、その足取りはしっかりと地を踏み締めている。続きを読む

    投稿日:2024.03.06

  • Limei

    Limei

    静かに心にしみる作品でした。

    なんの取り柄もない、平凡で、世の中になんの役にも立たない私だけど、「広大な大地に向けて降る膨大な数の雨粒の、名もなき一滴に過ぎない」私でも、「それが集合的な何かに置き換えられられていく」ことに生きる意味があるんだ、と力づけられました。
    歴史を受け継いでいくために、存在していいんだと思うだけで、ちょっと救われます。

    高妍さんのイラストが父親について語るという雰囲気にぴったり合っていて、思いを深められて素敵です。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.28

  • ミラク

    ミラク

    このレビューはネタバレを含みます

    村上春樹が苦手な人はエッセイが良いと書いてあったのでこの本を選んでみた。

    父親との話だが、戦争従軍の記録のような事も書かれている。記録と言っても、どこの部隊に所属してどこに行ったという感じの事。父親はどんな風に生きてきたかという事。父親と猫を棄てに行った事。母親の事が少し。

    エッセイなので小説とはかなり違うが、挟まれるイラストが文字の雰囲気をさらに高めていて何となく郷愁を感じさせる。



    最後の方でこれを書いた理由が、長く父親と確執があったためだと分かる。父親と息子とはそのようなものなのだろうか? よく分からない。



    エッセイ自体は大半が戦争の話だったような気がする。そこに差し込まれる他のこまごまとしたシーン。
    サクサクと読み終えた本。



    エロもグロもない。ちょっとほのぼの系のいい話だった。
    ただ、ラストが少し『いい子』すぎるとも感じる。



    結局は『村上春樹の世界』の『夢』を混ぜ込んでくる。というのにはちょっとウンザリする。



    しかし最後を除けば、村上春樹の家族観というものはこんな感じと掴める。

    そういえば、私が読んだ村上春樹作品には『家族』が出てきた印象がない。主人公は常に『一人』で、兄弟や親はあまり出てこなかったような。それも、このような家族観だったのだと分かれば、納得してしまいそうだなと思った。

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    投稿日:2024.02.28

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