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藤田彩歌 / ヤマハミュージックメディア (6件のレビュー)
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ひつじこ
好きなPodcast「Satoruと岡田悠の旅のラジオ」でSatoruさんが紹介しており、面白そうだったので購入。 作曲家ヴェルディが音楽家たちの老後を支援するため作った「音楽家だけが入居できる高齢…者向けホーム」に住む機会を得た日本人オペラ歌手(当時学生)のエッセイです。 元クラシックの音楽家やバレリーナばかりの入居者たちは、個性が強くときに我儘で差別的だったりもするが、明るく気高く、優しくもある。そんな彼らとの暮らしや、(入居者の特殊性も多少は影響しているかもしれないけれど)日本と異なる自立や自己責任を重視するイタリアの高齢者施設の有り様など、とても面白く読みました。続きを読む
投稿日:2023.08.07
eshima002
高齢者施設。 というと、どうしても少しネガティヴな雰囲気を想像してしまうが、ここは違う。 たしかに、住んでいらっしゃるのは高齢の方々だが、みんな、生き生きと人生を楽しんでいる。 廃用症候群なんて、縁…がないかのように、自分でできることは時間がかかっても自分でやるし、周りも無闇に助けたりはしない。 すごい施設だな。。 歳を重ねても、こんな風に自分らしく、過ごせるって素敵だな。 そして、その中に一緒に住むことができて、音楽はもちろん、他のことも大いに学べる若者たちを羨ましくも感じた。 続きを読む
投稿日:2023.02.28
ゆまち
イタリア、ミラノに居を構えるカーザ・ヴェルディ。 それは、副題にもある通り、音楽家のための老人ホーム。 この高齢者施設こと「憩いの家」を作ったジュゼッペ・ヴェルディ(1813〜1901)は、オペラ「椿…姫」や「アイーダ」で有名なイタリアを代表する作曲家。 オペラやクラシックを愛する人には説明不要の人物と思う。 そんなヴェルディは非常に貧しい時期や、愛する妻と二人の子どもを病気で亡くすというどん底の日々を送った経験から、常に弱い立場の人間のことを考え続けた人物。 このカーザ・ヴェルディも、家族を持たずに音楽に人生を捧げてきた音楽家や、一流の音楽家として活躍していたにもかかわらず、浮浪者同然の老後生活を送っている元一流音楽家達を救いたいという強い想いから誕生した。 彼はその施設の落成を見ることなく亡くなってしまったが、ヴェルディの想いは今でも老いた音楽家たち、そして若いこれからの音楽家たちの人生を温かく見守るが如く後押しし続けている。 そんなカーザ・ヴェルディ。 入居できるのは、元一流音楽家に値するかどうかの審査に合格したお年寄りとその配偶者たち…そして、最大16名までの若手音楽家だ。 入居の権利を与えられている若手音楽家というのは、ミラノ・スカラ座のアカデミーの学生、ミラノ・ヴェルディ音楽院の学生、ミラノ市立音楽院の学生である。 本書の著者は、ミラノ・ヴェルディ音楽院大学院オペラ科に在籍する若手音楽家として、カーザ・ヴェルディに入居することになったのだ。 本書では、カーザ・ヴェルディがどのような高齢者施設なのか、入居条件や入居にかかる費用、施設内の設備などのようすを、カラー写真付きで解説してくれている。 しかし1番の読みどころはやはり、入居していた当時、日々の勉強の合間をぬって著者が付けていた「カーザ・ヴェルディ日記」だ。 著者が正確にいつまでカーザ・ヴェルディに滞在していたかはわからないが、入居した2016年1月22日から2016年9月30日までの日記が、本書には掲載されている。 その内容はとても興味深い。 カーザ・ヴェルディに住むお年寄りたちはとても活発でオシャレで気が強い。 基本的にみな一流音楽家であるから、施設の催しとして披露された演目に対して、満足が行かなければブーイングをする人がいたり、入居当初の著者にあなたは何をやるの?と聞いてきたご婦人が、メゾソプラノだと答える著者の答えを聞いて、「不幸中の幸い!メゾですって。ソプラノはもうたくさんよね!」とはっきり発言したりと、やはり音楽に対して手厳しく、真剣である。 カーザ・ヴェルディは、常に音楽で溢れている。 施設内にある幾つもの練習室。加えて入居者自身も自前の楽器を部屋に持っている人が多い。 歌声、ピアノの音色、ハープの音色…入居者たちは、そのすべての音楽に耳を傾けているのだろうか。 一流音楽家の紳士淑女たちは音楽の評価にはっきりと手厳しいが、その分真剣なのだ。 だから真剣に高みを目指そうとする若手音楽家たちを指導してくれることもある。 著者もなんて素晴らしい環境なのだろうと、感謝と恐縮と喜びに満ちながら、彼ら彼女らから手ほどきを受ける。 なんとWIN-WINな関係。 老人ホームでありながら、ご老人たちは常に気力に満ち溢れている。本書でも何度も言及されているが、日本ではあり得ない光景だろう。 老人ホームに若者がやってくることはあるが、あくまで慰問、奉仕、ボランティア。もちろん若者たちにもいい経験になるだろうが、カーザ・ヴェルディほど、世代を超えてお互いが刺激しあえる対等な関係ではない。 カーザ・ヴェルディの住人が活気に満ちているのは、若者たちとの交流があるからだけではない。 この憩いの家の、入居者ひとりひとりを自立した人間として、自由がある代わりに、好きなように入居者自身が行動した結果、怪我をしようが行方不明になろうが、すべて自己責任であること…そして、自室の外ではしっかりとした身なりでいることが規則であることも、理由として挙げられるだろう。 カーザ・ヴェルディでは朝昼夜の食事を決まった時間に食堂で食べるルールになっているのだが、そこにやってくるご老人たちは、服装もアクセサリーもメイクもヘアスタイルもバッチリの、まさに「正装」という出立ちだ。 そして食堂の装飾も、とても食堂と呼ぶには足りない、まるで高級レストランのようなのだ。 本書に掲載されている食堂の写真を見て驚く。高い天井、シャンデリア、布地の立派なテーブルクロス、飾られた絵画。 食事もデザート付きのフルコース。 幼い頃に雑にピアノを習ったくらいしか音楽に縁がない私だが、率直にこ、ここに住みたい…!と思わされてしまう素晴らしさである。 食堂でも独特のルールがいくつかあるカーザ・ヴェルディ。 特筆すべきは、翌日食べるメニューを入居者たちが自分で選ぶのだが、その時にその料理の名前を手書きで書くというところ。 中には長い時間をかけて、震える手で書きつける人もいる。 最初著者は、メニューを印刷して丸をつけるなどするだけで良いのでは?と思っていたが、ご婦人の「でもこの時くらいしかペンを持つ機会がないのよ」という言葉を聞いて、なるほどと思う。 ここにも自主性が重んじられていることがわかる。 施設は2階建てで、エレベーターもあるが、元気でいるために敢えて階段を使うご老人たちも多い。 外食をしたり散歩をしたり、スカラ座でオペラを観たり。 他にも絵を描いたりアクセサリーを作ったりと、音楽以外の趣味に熱中したり。施設内にある趣味の部屋の存在が、それを可能にしている。 日本の老人ホームでも工作や合唱や体操など、イベントはあるが、その内容はあくまで施設側が決めることであり、個人個人が自分の好きなことを見つけて熱中できる環境はないのではないだろうか。 著者も何度も本書の中で、日本の老人ホームと、この稀有なカーザ・ヴェルディとの環境や方針の違いにふーむと唸りながら考えている。 日本どころか世界中を見てもなかなかこのような老人ホームは他にないと思われるが、福祉というものについて、いろいろと考えさせられる。 そのようなカーザ・ヴェルディにも、もう本格的に動けなくなったり認知症になってしまったご老人たちは別のスペース…唯一病院のような一角で過ごしている。 そこにはあまり活気も感じられず、さすがに自由もあまりない。 そこに行きたくなくて、より一層元気でいることを、住人たちは努めているところもあるのだろう。 しかし、そのように自分を生きることに懸命な住人たちだが、穏やかに死を受け入れる覚悟というか、そのようなものも感じられる。 死を過剰に恐れることもなく、タブー視することもなく、死というものを日常生活の中で明るく受け入れている。 カーザ・ヴェルディの一階には、ヴェルディとヴェルディの愛した妻が眠っているのだが、父の日にはご老人たちが「おめでとう!」とヴェルディの墓を次々と訪れる。 それでいて死を蔑ろにするわけでもない。 入居者が死んだら、喪に服して三日間施設内での演奏は一切自重される。しっかりと死者を悼む。 配偶者が亡くなった方のなかには、その3日を過ぎても喪服で過ごす人もいる。 そのような住人たちの話を聞いていると、生に対しても、死に対しても、向き合い方を改めて考えさせられる。 最後に、単純にイタリア文化、イタリアの日常そのものが日記から垣間見えるのも、本書の魅力。 イタリア人が仕事に熱心じゃないのはほんとだったんだなぁとか。日本にいる感覚で移住したら結構大変そうだけど、でも食べ物は美味しそうだから観光には行きたいなあ。 他にも素敵なエピソードはたくさんあるのだが、これ以上話しすぎるともったいない笑。 とても本書は魅力的だから、ぜひ手に取って読んでほしい。 著者はカーザ・ヴェルディの住人たちを「家族」だと感じている。その著者の思いがものすごく伝わってきて、日記を読んでいるとこちらまで彼ら彼女らのことが愛おしく思える。 私の、実際の日々の生活の中で、こんなにも愛おしく家族同然に思える人はどれくらいいるだろうか。 距離が近いがゆえに、ただでさえ我の強いご老人同士、激しい喧嘩も多々あるが、親愛の関係も多々ある。 老人ホームの在り方、生と死への向き合い方、自分への向き合い方…様々なことを考えさせられる本書の中で、さらに踏み込んで考えさせられるのは、それらと向き合った末に、誰かを何かを大切にして向き合う心もしれない。 続きを読む
投稿日:2023.02.16
alpine310
「ヴェルディの憩いの家(=老人ホーム)」という名の一流音楽家のための高齢者施設に入居した若手音楽家の日記的読み物。ここは2012年の映画「カルテット!人生のオペラハウス」のモデルとなったユニークな施設…としても有名である。 実際に住んで親しくしてもらいレッスンを受けたりもしていた人が書くので、筆致は勢い遠慮がちである。しかも書く人にも描かれる人にもプライバシーがあるので(筆者は現役の声楽家となっている)、映画のようなドラマティックな出来事があったとしてもいちいち暴露するわけにもいくまい。というわけで人付き合いの描写では非常におとなしくならざるを得ないが、設備のトラブル(下水管溢れ事件)や夏の暑さと蚊の話は遠慮なく描かれていて面白い。 何より、実際に住んだ人でなければわからない、食堂や練習室などなどの具体的なディテールがなんとも興味深かった。 そもそも、高齢者と若年者の取り合わせというのは親和性が高い。日本でも幼老複合施設が増えつつあるというが、生き物としての本来の過ごし方にもそぐう考え方であろう。続きを読む
投稿日:2023.01.23
sekitp
こんなものがあるんだ。本場は違うね。スカラ座でヘンデルの時と悟りの勝利を上演とあるが、知らない曲だ。こういうの聞いてみたいな。思うのは全員プライド高くて揉め事とか多い?いや、そんなのはプライドご高くて…揉め事は起こさないんだろな。続きを読む
投稿日:2022.12.23
ぽてち
イタリア・ミラノにあるカーザ・ヴェルディ(ヴェルディの家)は、オペラ『椿姫』や『アイーダ』で知られる作曲家のジュゼッペ・ヴェルディが建てた、一流の音楽家だけが入居可能な高齢者施設だ。 とは言えそこはイ…タリア、厳密な定義があるわけではなく、音楽に無関係でも近親者なら入居できる場合もある。さらにミラノ市内で学ぶ音大生を16人まで格安で受け入れており、著者の藤田さんもその制度を利用してここで生活していた。本書の大半はその当時の日記を集録したもので、日常の悲喜こもごもが生き生きと描かれている。 しかしまあ、ちょっと無責任というか自己責任が過ぎるというか……。いい面も悪い面も含めて、文化や国民性の違いを強く感じた。続きを読む
投稿日:2022.12.02
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