【感想】小さなことばたちの辞書

ピップ・ウィリアムズ, 最所篤子 / 小学館
(18件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
11
4
2
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • mamimina

    mamimina

    これ今年のNo.1候補なのにつけてなかった。
    19世紀後半、オックスフォード大辞典編纂という史実をテーマに、実在の学者たちの間にそのひとりの娘という架空の主人公を据えた。女性が学究の徒になることなどあり得なかった時代に、言葉を愛しその蒐集に情熱を燃やすエズメが体験する差別や弾圧は、今の時代を生きる私たちも規模は違えど覚えのあるもので胸に重い。
    家族がわりの黒人使用人が自尊心を育んでいくエピソード、そしてたった一度愛し愛される人と出会えたこと…不幸の割合のほうが多かったように見えるエズメの人生だけど、これぞ天職と思うものに身を捧げられたことは、人の大きな幸せでもあるのだ。
    そうそう見つからないけどね、凡人には。それでも目標としたい。
    続きを読む

    投稿日:2023.12.10

  • 小春ぴより

    小春ぴより

    このレビューはネタバレを含みます

    いや、すっごいこの本は考えさせられた!
    何か分からない言葉があったら調べる。
    今はネットとかでサクッと調べるけど、より深く調べたり学校に通ってた時は辞書を使いなさいとよく言われた。
    だから辞書の中には全ての言葉の意味が載っていると当たり前のように思っていたけど、そうでは無い事もある。
    特に男尊女卑が激しかった昔に作られたオックスフォード辞典にはほぼ女性が使う言葉は無く仕事もほぼ男性の手によるもの。
    女性も沢山編集に加わっていたものの、時代的に女性は手伝っていたとはみなされなかった。
    さらに階級格差で比較的上流階級の人の言葉だけが採用されている。

    辞書と言う物はそういう世の中の格差や差別等からは一線を画した権威ある書物と言う認識があっただけに色々と驚きだった。
    差別的な言葉やちょっと下品な言葉達も、使い手や文脈によってはその限りでは無いと言うのもたしかになとも思う。
    今作られてる辞書は昔以上にそういう事に配慮したりして色々考えて作られているだろうけど、
    辞書に載らない言葉を集めてその意味の背景やその人達の生活を理解しようと最後まで務めた主人公には賞賛の拍手を贈りたい。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.06.11

  • mitasayu

    mitasayu

    2023.5 原作がすごいのか、訳がすばらしいのか、上質な、みっちりとした小説。ラストシーンは壮大な人生が終わった…と思わずため息がもれました。

    投稿日:2023.05.26

  • kinako

    kinako

    ビクトリア朝から第1次世界大戦頃の長い読書の旅から戻ってきた。オックスフォード英語大辞典の編纂、女性の選挙権や当時の女性の生き方(立ち居振る舞い含め)はわずか100年ちょっと前のことであり、現代も変わっていないことが多分にあるのではないかと感じた。世界を見渡せば戦争だって然り。長編のため手に取ることを躊躇したが、ためらいは杞憂であったと言いたい。続きを読む

    投稿日:2023.05.02

  • キムチ27

    キムチ27

    読み終えるのが勿体なく、久しぶりのしみじみと作品の世界に浸りきっての時間を過ごした。
    言語の定義と社会的にもつ定義との隔たり、時は19世紀から20世紀初めにかけて。
    時代の趨勢に突き上げられるかのようにうねりを高めていく女性参政権運動。

    ヒップ・ウィリアムズは見事なまでの人物類型を適切に配置し、実在の人物のモデルになったであろう人物を巧に織り合わせ、アカデミックな作品に仕上げている。
    「OED誕生秘話」は勿論「博士と狂人の間」も恥ずかしながら知らない世界。

    架空の女性エズメの成長して行く姿を通じて、背後にリジ―の存在が重く感じさせられる。
    リジ―やほかの人物に語る言葉を「日本語の方言的な翻訳」にしているところがさりげなく情景を膨らませてくれている。
    性差に拠っても身分によっても言葉があたかも生き物のように姿を中身を変えていくダイナミックなうねり。
    OEDが男たちの努力の結晶であり陽の当たる事物ならポンドメイド~迷子のことば辞典はいわば陰の事物・・しかし、それが持つ社会的意義の大きさ⇒社会的な「権威」に押しつぶされた弱者のこ・と・ばを考え続けた7日間だった
    続きを読む

    投稿日:2023.04.17

  • すきま

    すきま

    読み応えがあるのにやさしく読める不思議な本。内容は重いけど心に刻まれたものは決して暗くない。言葉を選ぶのは好きだけど、そんなふうに言葉を考えたことなかったなぁ。すごくいい作品。

    投稿日:2023.04.14

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。