【感想】言葉と歩く日記

多和田葉子 / 岩波新書
(37件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
13
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ブクログレビュー

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  • dali

    dali

    こんなにドッグイヤーを作った本は他にないかもしれない。
    わたしが考えていることは既に誰かが考えていたことなのだなと、多和田さんの文章を読んで実感した。
    3年間ほど積読していたのだが、ようやく読めた。なぜもっと早く読まなかったのかとも後悔した。

    本書で紹介されている文献も面白そうなものばかりで今度読んでみようと思う。
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    投稿日:2024.04.30

  • kuritanu

    kuritanu

    多和田さんが好きなのは、独特の感性と鋭い批評眼があって、なおかつ明るさがあるから。小説でもエッセイでも。
    この本は書店で平積みになってて、新しい本かと思って買ったら10年前の再版だった。けど読んでなかったのでノープロブレム。
    2013年1月から4月15日までの日記で、1日分は短いので隙間時間にちょっとずつ読もうと思ったのに、面白くて一気に読んでしまった。

    こむらがえりを起こすとドイツ人に言ったら、皆口々にそれはマグネシウムが足りないせいだと答えた、という話のあとに、

    「「こむらがえり」はとても古い単語なので「マグネシウム」という単語と出逢って、かなり驚いたみたいだった。」(P69)

    (「こむら」はふくらはぎの古語。)

    トルコ語と日本語は同じウラル・アルタイ語族だと言われていた時期があった。しかしそれはインド・ヨーロッパ語族を中心とした見方である、といった内容のあとに、

    「これは、鍋が自分中心に世界を見て、「ミシンとコウモリ傘は似ている」と主張するようなものではないか。鍋から見れば、ミシンとコウモリ傘にはいろいろ共通点がある。まず蓋がないこと、そして仕事中熱くならないこと、更には調理の役に立たないこと」(P159)

    (「ミシンとコウモリ傘」のワードの選択もいい。)

    「リアリティ」「クリエイティヴ」といった言葉について、伊藤比呂美の詩について、ワーグナーの文体についてなど面白いだけでなく刺激的で、読んでいる間、本当に幸せな時間を過ごすことができた。
    立て続けに二回読んだ。
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    投稿日:2024.02.04

  • がと

    がと

    2013年、日本語で書いた自著『雪の練習生』を自らドイツ語に訳している最中、多和田葉子が言語について考えたさまざまな疑問や気づきを書き留めた日記。


    めちゃくちゃに面白い。日独だけでなく、多和田さんが講演などで旅した先で出会う言葉がどんどん思索を豊かにしていく。逆に翻訳作業の話は「手」の訳語にまつわるエピソードくらいだけど、多和田葉子という作家が日常的に言葉や文字とどう触れ合っているか知れるのが面白い。
    レガステニーという学習障がいをめぐって「言語を文字で記すことが根本的に人間には困難」だと笑って見せたり、移民由来の乱れた言葉とされてきたキーツ・ドイツ語に惹かれてラップを書いてみたいと言ったり、これまでの西洋基準な言語学に物足りなさを感じたり、多和田さんは常に勉強熱心だ。「言語はべったりもたれるための壁ではなく、壁だと思ったものが霧であることを発見するためにある」。学べば学ぶほど深くなるのかもしれないその霧のなかを、悩みすら楽しみながら歩いていくように見える。
    そして楽しむと同時に、常に言葉と自分との距離を冷静に測る目を大切にしているのだと思う。嬉しい言葉も悲しい言葉も鵜呑みにしないで、付き合い方を自分の頭で考えること。多和田さんの歩みを見せてもらうことで、私も歩き方を一度じっくり考えてみようと思った。
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    投稿日:2024.01.22

  • teaberry

    teaberry

    日本語とドイツ語で小説を書き、英語やロシア語も出来る多和田葉子さんが、
    日本語で書いた小説をドイツ語に翻訳する期間、言葉について考え書かれた日記。
    世界中を旅して朗読活動をされているので、
    様々な国の色々な言語を使う作家や詩人や学者の方々との交流も興味深く、
    知的だと思うけど難解な感じはなく読みやすかったです。
    ヨーロッパでは多言語を話される方も多いけど、
    上海の喫茶店で周りの人たちがそれぞれ
    中国語、日本語、韓国語、英語で話していて、
    ある若い学生の集団は次々と言語を変えて話していたことを思うと、
    アジアもアジアで多言語が交錯する場所ですよね。
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    投稿日:2023.11.11

  • チルチルとミチル

    チルチルとミチル

    私は中国語と日本語の間で著者のように行ったり来たりしている。
    共感し、驚き、感激し、とにかく読み終わるのが嫌だった。

    もっともっと続きが読みたい。
    外国語の語感を通して日本語を深め、それを日本語で思考した後外国語でもう一度表現してみる。
    そういう作業を楽しんだ。
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    投稿日:2022.08.22

  • 踊る猫

    踊る猫

    多和田葉子は自分の書くものが「純文学」、つまり混じりけのない文学であることをどう思うだろう。むろんこんな邪推は失礼というものだが、彼女の思索は日本語とドイツ語の持つ、時に「不純」な要素である俗語でさえも果敢に取り込みひとつの断章的記述として消化する。そんな彼女の日本語は端正で極めて読みやすく、だが軽々と消費することを許さない凄みがあるようにも思う。彼女が様々な言葉を取り込んで、しかもそれを洗練された創作に結びつける作法は案外ヒップホップやR&Bといった音楽の方法論とも共振するようにも思うのだがどうだろうか続きを読む

    投稿日:2022.07.24

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