【感想】カインは言わなかった

芦沢央 / 文春文庫
(34件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
6
13
13
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • ケンシロウ

    ケンシロウ

    このレビューはネタバレを含みます

    群像劇ミステリー。文体も心情も読みやすい上に魅力的だからすらすら読める。
    ストーリーラインとしては数人の登場人物の視点で、バレエ劇団(?)HHカンパニーの「カイン」初演の前後2,3日を追う形。同時に、導入部で犯人のモノローグが入るので、導入で死んだ男は誰なのか、犯人は誰なのかを追う形でもある。登場人物達は大体みんな誰かへの憎悪や殺意を持っていて、包丁を握りしめるシーンが用意されている。
    ただのミステリーじゃなくて、藤谷豪しかり、誉田規一しかり、天才の心情は語られず、凡才達が苦しみもがく構図になっていた。それぞれの視点で話を追うと話の空気ががらっと変わる。恋人に振り回される女性の恋愛小説っぽかったり、自分の夢をひたすら追う青春(?)小説っぽかったり、恋人の行方を追うミステリーっぽかったり。
    天才達の内面は語られないからこそ良いんだけど、でも個人的には藤谷豪の心境が知りたかったな。ずいぶん捻じ曲がった人だったので、ラストとかでもっと捻じ曲がった心境を語ってくれたら嬉しい。笑
    犯人の殺害動機(推測で語られるだけだけど)も良かった。なるほどね。

    もしここを読んだ人がいたら教えてほしいんですけど、「カインは言わなかった」てタイトル、何を言わなかったのかな。カイン=誠で「(豪が死んでることを)言わなかった」ってこと?


    ⚫︎あらすじ
    公演直前に姿を消したダンサー。
    美しき画家の弟。
    代役として主役「カイン」に選ばれたルームメイト。
    嫉妬、野心、罠──誰も予想できない衝撃の結末。
    芦沢央が放つ、脳天を直撃する傑作長編ミステリー!

    男の名はカイン。
    旧約聖書において、弟のアベルを殺害し、「人類最初の殺人者」として描かれる男──。
    「世界の誉田(ホンダ)」と崇められるカリスマ芸術監督が率いるダンスカンパニー。
    その新作公演「カイン」の初日直前に、主役の藤谷誠が突然失踪した。
    すべてを舞台に捧げ、壮絶な指導に耐えてきた男にいったい何が起こったのか?
    誠には、美しい容姿を持つ画家の弟・豪がいた。
    そして、誠のルームメイト、和馬は代役として主役カインに抜擢されるが……。
    芸術の神に魅入られた人間と、
    なぶられ続けた魂の叫び。
    答えのない世界でもがく孤独な魂は、いつしか狂気を呼び込み、破裂する。
    “沈黙”が守ってきたものの正体に切り込む、罪と罰の慟哭ミステリー。
    『汚れた手をそこで拭かない』が直木賞候補、
    『火のないところに煙は』が本屋大賞と山本周五郎賞候補。
    『許されようとは思いません』続々重版中、
    芦沢央が渾身の力を込めて書き上げた超傑作がついに文庫化!

    「この小説そのものが、底の知れない沼のようだ。
    読み始めたら、逃げられずに沈んでいく恐怖を快楽にかえて、
    読み耽るしかない」──角田光代(解説より)
    (文藝春秋公式HPより引用)

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.05.06

  • xxxn

    xxxn

    基本ずっと重めな内容。
    誉田さんがずっと怖くてバレエ業界って
    こんな感じなんかな ~ってなる。
    最後まで読んだらタイトルの意味理解。
    読み応えたっぷり。

    投稿日:2023.12.27

  • kikurage

    kikurage

    読んでいて心がずんと重くなりましたが、最後は救いがあって良かったです。ただ、動機やその人の行動の理由がはっきり語られていないので、もやっとするところはありました。

    投稿日:2023.12.23

  • アキラ

    アキラ

    このレビューはネタバレを含みます

    新作公演「カイン」の初日直前に失踪してしまったバレエダンサー藤谷誠。
    彼の弟で画家の豪。
    それぞれの恋人と、誠の後輩尾上くんと、
    カリスマ芸術監督の誉田と、彼との関係で傷ついたダンサー達と、自殺しちゃった女の子とその両親と、
    誠と豪の家族の話と、、、なんだか色々盛沢山な小説でした。
    舞台と絵画の表現力が素晴らしいし、殺人事件なんかもうまいこと絡んできて面白かった。

    んだけど、、、ちょっと盛沢山すぎて、個人的には処理しきれず消化不良。
    読み終わった直後の感想が「尾上くん、良かったね!」だった。
    最後、報われてホットしたわ。
    芸術、良くわからないけど、修羅な世界だなぁ、と。
    その表現力に圧倒されつつも、終始モヤモヤと不穏な空気感の漂う一冊でした。
    メンタル弱っている時にはお勧めできないな。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.12.01

  • 霽

    体罰禁止や他者を思いやるという言葉が当たり前の世の中で、芸術だけが未だに一昔前の世界が残っていると感じました。
    ただそれを100%否定したいわけではなく、経験していない物事を完璧に表現しなりきるためには必要悪なものなのでしょうか。

    「もはやどこにも道は見えなくて、どちらが前なのかもわからなくなって、たった一人で真っ暗闇の中で立ち尽くすしかなくなるのだとしても。」
    続きを読む

    投稿日:2023.09.09

  • 箸袋

    箸袋

    芸術の世界とその周りで交錯する殺意が描かれた長編

    今まで読んだ芦沢作品の中では一番ページ数が多い作品なのに、緊張感がずっと続く
    多視点が細かく切り替わって次へ次へ読んでしまう

    殺意を持つこととそれを行動に移すことの間にある差
    バレエにも絵画にも詳しくないのに、その中に渦巻く人間臭さにがっつり引き込まれた
    続きを読む

    投稿日:2023.06.07

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。