【感想】人体模型の夜

中島らも / 集英社文庫
(4件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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ブクログレビュー

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  • 沙都

    沙都

    正統派な幽霊ものやサスペンス系のホラーもありつつ、オカルトや超常現象の趣味があふれた話にシュールな作品など、中島らもさんの表も裏も楽しめる短編集でした。らもさんの場合は正統派系も、ぶっ飛んだ系も、どっちも表なのかもしれないけれど。

    正統派系だと嗅覚の鋭敏な女性が、新しく越してきたマンションの浴室の音と臭いに悩まされる「はなびえ」と、
    盗聴が趣味の男が、隣室の女性が一人で誰かと会話している様子を聞いてしまう「耳飢え」が好きでした。

    「はなびえ」は現象としては正統派なんだけど、そこに女性心理であったり、ラストの一言の皮肉が効いていて、単なる都会の怪談話でなく、都市に生きる女性の一面を照らしたような一編になっていると思います。

    「耳飢え」は盗聴にはまる男の心理や設定が妙にリアルだし、隣の女性の謎も相まって引き込まれる話でした。ラストシーンのぞーっとさせる感じも描写の上手さとか、話の引き込み方の上手さを感じます。

    「ピラミッドのヘソ」も個人的に好み。延々とピラミッドエネルギーの講釈を聞かされてると時は「この人は何を書いてるんだ?」と思うし「自分は今何読まされてるんだ?」とも思うけど、なぜか読めてしまうし、面白かった気もしてしまう。たぶん『ドグラ・マグラ』とか『黒死舘殺人事件』を面白く読める人は好きな話じゃないかなと思います。

    同じ系譜で言うと「翼と性器」もその系統の作品かも。異様な告白と天使と悪魔をめぐる雑学が続く手紙は、ラストでなんとも言えない異様な展開に突入していきます。

    「骨喰う調べ」もラストが好きです。この話は「お墓がああなったら面白いだろうな」という妄想一本で書いた話ではないか、とも疑ってしまうけど(笑)。あれをさらっと書くのが分かってるって感じがします。

    オカルト趣味でいうと「膝」もよかった。人面瘡評論家というこれまたシュールな話から、ラストはいわゆる奇妙な味の雰囲気が楽しめる作品となっています。

    他にも異国を舞台にした話であったり、ミュージシャンでもあった著者の心情が感じられる作品、ちょっといい話の雰囲気のひねったゴーストストーリーもあって、まさに変幻自在な作品たちです。

    プロローグとエピローグの奇妙さも読者である自分が「人体模型の夜」に迷い込んだような気分にさせる、短編集ながらも一冊通して奇妙な世界観が最後まで持続する不思議な作品でした。
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    投稿日:2024.02.27

  • ピザまん

    ピザまん

    初めての本を読むのは楽しいことだけれど、ずーっと昔に何度も読んだ本にまた巡り会える。そして、また読めることがこんなにも嬉しいだなんて。
    人体模型が語る、身体にまつわる12篇の短編集。
    どの話もしっかりとした説明があり、のめり込んでしまう。古さを感じない。
    特に好きなのは「なはびえ」想像してしまって気持ち悪い。「貴子の胃袋」ラストの一言にグッと詰まってしまう。憤るところ?笑うところ?
    エピローグまで読んで思う。私もまだまだ話が聞きたい。
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    投稿日:2023.11.16

  • 帆掛船

    帆掛船

    2022/9/14読了
    廃屋の奇怪な人体模型が、各臓器をモチーフにした物語を語っていくという構成。全12エピソードはどれも著者の広範な知識に裏打ちされた“雑学”的な楽しみもあって、短くても非常に読み応えがあった。「もっと。話を」である。
    個人的には、『耳飢え』が一番怖かった。
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    投稿日:2023.09.24

  • なつみ

    なつみ

    2023年はこの本から!
    ふと気がつけば、スナック菓子を1袋夢中で食べ終えてしまっていた…という時と同じくらい、軽妙洒脱な恐怖に無心でばりばりとページをめくり続けていた。怖い。
    舞台や趣向の異なる怪しく魅力たっぷりな12の短編が、忘れ去られた地下室を介して立ち昇ってくる。それぞれの作品ももちろんだがプロローグ・エピローグが秀逸で、ちょうど少年と同様もっともっと、となっていた私は茫然自失で全裸になる寸前だった。ああ怖い。

    去年読んでとても気に入った「家が呼ぶ」というアンソロジーに今作収録の「はなびえ」が入っていて、すごく面白かったので他の短編も読みたかった。
    どれも面白かったけど、やっぱり「はなびえ」は凄い。
    ほかにも「セルフィネの血」「膝」「耳飢え」が特に好き。
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    投稿日:2023.01.31

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