【感想】ウクライナ戦争は世界をどう変えたか 「独裁者の論理」と試される「日本の論理」

豊島晋作 / KADOKAWA
(24件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
9
8
5
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ブクログレビュー

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  • はるパパ@ファミコンしようぜ

    はるパパ@ファミコンしようぜ

    長いけど分かりやすい。
    欲しい情報がぎっちり詰まってる。セカンドオピニオンは必要だろうけど、この一冊でお腹いっぱい。さすがメディアの人。池上彰さんのようなふむふむ感が満載。

    前半はロシア・ウクライナ戦争で、後半まるまる台湾有事について(作者は敢えて「台湾戦争」と呼ぶ)。日本が嫌でも巻き込まれるシナリオを生々しく語る。YouTubeでも中田敦彦さんが解説しているので観た人が多いのでは。内容はそちらで。

    この作品の一貫したテーマは「論理」。
    戦争の論理は被害感情から始まるという。汝、平和を欲するならば戦さの備えをせよ。これはローマ時代からある人類の財産で、今日でも平和の論理だ。私たち日本はその両方から外れる特殊な存在に違いない。

    ── 安全保障をめぐる戦後の日本の論理は平和主義だった。これを論理と呼べるかは別として、戦争を絶対的な悪として、いかなる条件においてもそれを拒否する考え方である─


    戦争への激化を抑止する唯一の方法は対話。つまり相互理解。その中身は歴史を知り、政治を理解し、経済を把握し、活発に議論し、選挙に反映させて国を動かすことだと作者は言う。
    おっと出た。選挙。やっと「私」が関われるのか。

    なら選挙に行かんかい!とはもはや言いづらい。
    選挙の有効性を疑っている人も多いのでは。これは成田悠輔さんの受け売りながら、SNSと多様性の時代にハガキを持って投票所へ足を運び、特定の候補者の名前を紙に書いて箱に入れる。これで民意の反映と呼ぶのか。

    もちろん戦争は殺人。私はイヤに一票入れたくなる。しかし家族がレイプされて銀行口座が吹き飛んで自宅から焼け出されてから殺してやると叫ぶくらいなら、なぜ備えをしなかったのかと悔やむだろう。もっと議論できなかったのかと。

    エスカレート・デ-エスカレーション(エスカレートさせないためのエスカレート戦略)はさらに対極となる論理。一発殴って黙らせる核武装の推進。地球の破壊ショーになりかねないので、その中間あたりに着地点となる論理を見つけなくてはならない。

    暴走しない強い軍隊をどう維持するか。国家の話し合いは力のない国にはテーブルも用意されない。日本はイスがあるのにどうぞどうぞ状態だと見られている。

    終章ではこうした「平和の責任」についても語られる。これがまた熱い。いま私たちが子どもらの将来を形作らないと責任の先送りになる。負の遺産を残した既得権者たちの安らかな死は見飽きた。現役世代の苦しみは、現役世代で解決させてほしい。長老の論理はいらない。


    これを読む前は、台湾戦争が勃発すれば世論も変わるでしょうと他力本願に同調していた。変わる前には間違いなく政治が混乱する。その空白で趨勢は決すると作者は警告する。スポーツでも混乱したチームほど勝てる確率は低くなる。試合前から立て直す練習をしておくのは定石。ロシアに攻め込まれたフィンランドもウクライナも、それをやっていたから生き残っている。

    日本の防衛費は中国の5分の1以下。そこは同盟があるじゃん、の論理は実は崩れかかっている。プーチン大統領の失策、それを間近で見た習近平主席の野心を見せることで私たちをイスに座らせたい。そこに作者の意図がある。と思える。

    タブーをタブー視しないで、当たり前を突破する。選挙を変えて、リーダーを育てる。そのためには何ができるか。サピエンスは力を合わせる方法を変えることができる唯一の動物だとか。過去に学び、未来の正解を想像する。

    将来への考えにものすごく集中できた良著。

    まずは投票所で「オレ」って書こうっと。(バッカだね〜相変わらず)
    続きを読む

    投稿日:2024.03.12

  • masyahide

    masyahide

    国の犠牲よりも自身のレガシーづくりを優先するプーチンと習近平。
    台湾戦争になった際のシミュレーションが興味深かった。日本も巻き込まれて参戦させられるリスクも否定できない。
    チキンレースにおけるマッドマンセオリー。狂人ほど相手にし難い敵はいない。続きを読む

    投稿日:2024.01.22

  • shinano

    shinano

    【星:4.5】
    ウクライナ戦争を題材として、日本を取り巻く世界情勢を分かりやすく説明してくれている。

    この本を手に取ったのは、ウクライナ戦争がなぜ起こったのかを知りたかったからであったが、その点については当然に詳しい説明がなされている。
    その説明も、これまでの歴史やその歴史を踏まえたプーチンの考え方など、多面的な考察がされており、かつその説明も多すぎず少なすぎずでちょうど良い。

    そして、ウクライナ戦争を踏まえ世界がどう動くか、そしてその動きに対する日本の課題への説明と繋がる。
    ここでは台湾有事を中心に説明されており、日本として危機に直面していることを今更ながらに実感することができた。

    世界情勢については感度を養える素晴らしい1冊であった。
    続きを読む

    投稿日:2023.10.17

  • にくいにいさん

    にくいにいさん

    まず「とても読み易い」というのが第一印象で、著者が論文を書き慣れてるんでしょうね。たぶん大学・大学院にたくさん論文を書いて訓練したのだろうと感じました。
    内容は時事的なものなのですぐに陳腐化してしまいそうですが、とはいえ、最後の『台湾戦争』についての記述は、まだ変わらず価値のある警鐘だと思います。続きを読む

    投稿日:2023.10.10

  • funya

    funya

    なぜロシアはウクライナに侵攻したのか、歴史的な背景と共に的確に教えてくれるとても良い本。プーチン暗殺の可能性なんかも考察してくれているのが面白い。
    合わせて世界の成り立ちや、アフリカの立ち位置、日本が台湾戦争(あえて有事ではなく戦争と言う)があったときにどう対応するのかというシナリオの検証など、盛りだくさんでした。
    少し時間が経って情勢は変わりつつあるけれど、お薦めです。
    続きを読む

    投稿日:2023.09.29

  • たけ坊

    たけ坊

    ロシアによるウクライナ侵攻開始から半年も経てない時期に書かれた本だが、一年半が過ぎた今も通じる議論をしている。
    ロシアがウクライナに侵攻した論理や歴史的背景、戦時下のウクライナの生活、ロシア軍の苦戦について現場の詳しい情報や核戦略、西側やアフリカ諸国の論理、プーチン暗殺の可能性、中国による台湾侵攻シナリオなど、よく取材されているし、読みやすい。続きを読む

    投稿日:2023.09.08

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