【感想】董白伝~魔王令嬢から始める三国志~ 5

伊崎喬助, カンザリン / ガガガ文庫
(1件のレビュー)

総合評価:

平均 3.0
0
0
1
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • タカツテム

    タカツテム

    前巻にて天下無双の呂布は無力化された。彼は生き残ったとしても歴史に関わる事はないだろうと思われただけにこの巻の主題に躍り出た点には本当に驚かされたよ
    天下無双として他者を蹂躙する権利を持つ呂布。けれどその原点にあったのは他者からの蹂躙に納得できない幼い子供だったわけだ


    事態は曹操が貂蝉を抱き込んだ事で想像を外れる流れへとなっていくね。
    未来を知る董白が序盤においてやろうとして出来なかった人材集め。それを元々人材や資源豊かな曹操がやるとああなってしまうのか
    だからって諸葛孔明目当てに戦争をおっ始めるなんて豪胆すぎるけども。確かに史実における曹操の命運を考えれば孔明の処遇をどうするかによって野望に大きく影響するわけだから、事前にそれを知っているなら何としてでも確保しようとするかもしれないが……!

    そうして曹操の脅威度が上がるなら、董白が単独で曹操とぶつかるなんて難しい話になってくる。北からは曹操が迫り、南には劉備が陣取る。董白の天敵が居並ぶ状況。まさかここで劉備と協力する展開が始まるとは思わなかったよ
    序盤の問答により何が有っても相容れることはない立ち位置となってしまった董白と劉備。史実との絡みを考えても帝を利用している董白を劉備が信用する筈がない。だから董白も劉備を頼りにするなんて考えは湧かなかった
    それを孫尚香が仲立ちするとは……

    関羽の刃を止めさせた友を思う心。以前は劉協が董白に対して示した。今度は董白が孫尚香に対して示し、更には関羽への気遣いも見せた
    それは仁を司る劉備に響くものになるのか
    董白は変わらず簒奪者の立ち位置。けれどその心にあるのは未知の仁。これを期に関羽が何としてでも殺さなければならない相手からは外れたのだろうか…?


    そうした緊張感有る描写の中で段階を踏んで描かれるのは天下無双だった者の末路
    ボロボロの身体で方天画戟を振るえず赤兎馬にはそっぽを向かれ剄を満足に練る事も出来ず、更には復讐さえ遂げられない。そうなればもはや天下無双ではなくただの呂布。他者を蹂躙するあらゆる要素を失ってしまったからこそ顔を出すのは呂布という個人のパーソナリティ。蹂躙され行きたい場所へ行けなくなってしまった幼い心
    そういった者をこそ救う為に、もしくは中原を変える為に行動する董白の行動は呂布が変えられなかった境界線を変えるもの。いわば呂布が失ってしまったものを託す相手となりえるのか……

    呂布が末期の一矢として放った無双は戦場を一変させる凄まじいもの。董白が交渉によって終わらせようとした戦争を、たった一矢と天下無双の名によって終わらせてしまった
    それは董白陣営に足りなかったものであり、人生を終えようとする呂布が最期に魅せられる天下無双だったのかもしれなくて
    いや、本当に気迫の籠もった一矢でしたよ……


    天下無双の死を契機に三国志は再び蠢き始めるかと思いきや、まさかのここで終わりか…
    作者が後書きで述べているように終わり方を納得できる三国志モノは少ない。本作はせめて魔王の孫に転生してしまった董白の行き着く所まではせめて見たかったのだけどな……
    続きを読む

    投稿日:2022.07.31

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。