【感想】キャッチ・アンド・キル

ローナン・ファロー, 関美和 / 文春e-book
(20件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
9
7
3
0
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ブクログレビュー

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  • きーろん

    きーろん

    #me tooのきっかけになったといわれる本。さまざまな角度から見て、学びになるポイントがいくつもあった。
    まず、ずっと続いてきた悪事を暴きたいというジャーナリストの視点。妨害というのはこのような形で起こるのか。また、それを打ち砕くのに、慎重に慎重に合法的な方法を探っていく著者の姿勢。
    そして、性犯罪(だけではないかもだけど)を告発するときのデリケートなあり方。被害者ほんにんがどこまで開示するのか、一つひとつ確認しながら進んでいく。そうだよね。
    ときどき挟まれる謎のメールの話が、驚くべき事実につながっていくのは、本当に衝撃。
    また、世界的なセレブカップルの2世で、美しいだけでなく頭脳的にも天才といわれるローナン・ファロー。彼もまた組織の中で働けば、企画が通らないことに苦悩し、予算の獲得に頭を悩ませる。そんなところも楽しんでしまった。
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    投稿日:2024.03.16

  • しんた

    しんた

    ハーヴェイ・ワインスタインの事件を詳細に描いたノンフィクションである。既に『その名を暴け』があるが、こちらも負けず劣らずの良い出来である。
    権力とは、そこの座に座った者とは。何をしても許されるように世界を作り替え、専属のチームまでいてさらに出版社まで協力させていたのは心底ゾッとしたし胸糞が悪くなった。映画ファンの一人として、今後彼が製作に関わった映画を観る時は良い想いはしないだろう。続きを読む

    投稿日:2024.03.07

  • bookkeeper0

    bookkeeper0

    #MeToo運動のきっかけとなったと言ってもいい本である。
    権力者が金や商売上の力や、非合法な工作まで行って、性的暴行を受けた女性を抑え込み、更には貶めるなどやりたい放題であった事が分かる。
    大昔の、こう言ったことに寛容であった時代の話かと思ったが、つい最近まで行われていたと知り驚いた。
    マスコミまで、この隠蔽に加担していたとは、驚くばかりだ。資本の論理で、資本家に乗っ取られたり、利益至上主義になっていることの影響が出ている。
    日本でもおそらく同じような話があるんだろうなと、感じるが、何故かあまり報道されていない。
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    投稿日:2023.01.20

  • ハマ太郎

    ハマ太郎

    最低最悪の権力者の色欲と、それを利権と引き換えに覆って隠し通す最低最悪の関係各位。
    もみ消しは持ちつ持たれつの関係を築くためだけでなく自分自身のため、という関係各位もいたりして。
    日本の伊藤さんの件、森友問題(分野は違えど)と構造が同じかと。

    ピューリッツァー賞を3回あげてもよいくらいの、世界的なうねりを作り出した報道の顛末が、この本に詰まってる。

    ほんとに爛れてるとしか言いようのない、メディア(の権力者たち)。しかし、綿密な調査報道が受け入れられ、それが社会を動かせる分、日本よりマシなのか。

    日本のメディアにも、飼い殺しの記者クラブ問題のみならず、実はアメリカと同じ色欲の病巣があるんだろうな…。

    犯罪のもみ消しに慣れてはいけない。
    慣れてはいないし、その都度ザワッとするけど、諦めてる人が、私含め,ほとんどではないか。

    日本で報道をきっかけに、政治家ほか権力者の悪事を白日のもとに晒して「国民の皆様」が立ち上がり、彼らを失脚に追いやることはあるのか。
    男性はこの本を読んで、この気持ち悪さを感じられるのだろうか。

    ウッディ・アレンの娘の件も、かつて報道された時、自分も含めなんとなく扱いに困ってた風だったけど、ホント娘は気の毒だった。
    自分含め!もう、映画見ない!公開しない!とか、ならなかったし。
    力があるから、弱い者に好き勝手なことをしても許される(当人にはひどいという感覚はない)、ということが、許されない時代になってくれないか。
    せっかく「平和」な国にいるのだから。

    などと、つらつら考えずにはいられない本。
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    投稿日:2022.11.11

  • rafmon

    rafmon

    ♯Me Too運動はこの1冊のから始まったという。タイトルのキャッチ・アンド・キルとは、捕らえて殺すと直訳されるが、実際に殺されるという話では無いない。性的搾取、不正を揉み消す組織的な手段を説明するもの。本著は、ハリウッドを舞台とし、女優たちが如何に虐げられていたか、そのキャッチ・アンド・キルの構図を明らかにする。

    イスラエルの会社であり事件の揉み消しに加担したブラックキューブ。諜報機関であり、イスラエルの国家諜報部と繋がりもあるスパイ組織。被害女優のスキャンダルや汚点を探し出し、逆に貶めて事件を封印する。メディアは、問題の中心人物の芸能界隈への権力により、思い切った行動が取れない。ーこんな話、日本でも聞いた事があるし、確かスノーデンも印象操作されていなかっただろうか。

    女優のマッゴーワンやグティエレス。知らない名前はネットで検索すれば、画像が出てくる。日本にいると遠くの話のようだが、著名人を対象にした大事件だ。権力による性的搾取の正当化は、根深い問題。示談で成立するならば、リスクを取って加害者と敵対し、公開するインセンティブが低い。起こった事は取り返せず、自らを曝け出す手間やリスクを考えれば、示談金や見返りの方が良い。味を占めて常態化したり、他の被害を防ぐために立ち上がれれば良いが、疲労感の方が強い。しかし、これを許すと、金と権力のある輩は、好き放題。この構図に対し、♯Me Too運動はよく立ち上がったと思う。女性の連帯感は、自己防衛上も必要なのだ。
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    投稿日:2022.11.09

  • saekou

    saekou

    長い、長いけど、読み始めたら止まらない。思っていた内容とは全然違うコンゲーム、スパイ合戦。でも最後にそのスパイに好感を持ってしまう。NBCが報道を潰したことで結果的にこの本がベストセラーになっているから皮肉だ。本当にこんなことがあるんだな、事実は小説より奇なりだななどと感心している場合ではない。ボーイズクラブによって現実世界が捻じ曲げられているのは日本も同じ。むしろ、こうして証拠の握り潰しがちゃんとスキャンダルになったアメリカの方がまだ正常な方向に向かっていると思う。女性が声を上げ歪みをなくしていこうとするときに立ちはだかるバイアスやレッテルや抑圧を、これほどまでかと痛感させられる。アレンの息子でスーパーエリート男性というローナンだからこそここまで捨て身の報道ができたというのは間違いないので、やはり力というのはこういう風に使わないといけないと思う。日本もたとえば望月衣朔子さんがやっているのと同じことをエリート男性がやれば全然風当たりが違うはず。あとアメリカでは弁護士が報道の細部までチェックしていて(それが握り潰しの一端を担うこともあるが)、こういう活用の仕方があるよなと思った。続きを読む

    投稿日:2022.10.16

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