【感想】お金で読み解く世界のニュース

大村大次郎 / PHP新書
(3件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • Shigetoshi Tanaka

    Shigetoshi Tanaka

    お金は色々な意味で好きだし経済をもうすこししっかり勉強したいけれど、経済の本を読んでも、基礎知識が無くてほとんどついていけない。(というよりつまらなく思う)
    そんな経済音痴のワタシでも判る程度に噛み砕いて、昨今の世界情勢を経済の動きから解説してくれる本。

    普段から、グローバルなニュースに注目している方にはひょっとすると物足りない内容なのかもしれませんが、そうでもないその他大勢の方には、「え?そうだったの」と新たな発見も多いかと。
    例えば、中国の新疆ウイグル自治区の問題は、圧倒的な国土と人口を持つ漢民族による少数民族に対する弾圧のように思い込んでいましたが、実際、圧倒的なのは人口比(漢民族が92%、その他8%)であり、国土の方は逆に65%が漢民族以外の少数民族による自治区で占められているということが示されます。
    「ファクトフルネス」じゃないですが、中国という大国に対する思い込みがあると、事実関係がわかりにくくなる。
    実際のデータを見ると、中国が少数民族を経済的に抑え込もうとする、必然的な理由が見えると本書は教えてくれます。

    一般的な新書のボリュームということで、前提知識もそれほど必要なく、アメリカと中国の最近の危うい関係や、世界地図の大まかな形(もう少し踏み込むと地政学)、中東のいざこざのざっくりとしたニュースなんかが頭に入っていれば、それなりに理解できる内容です。それでも、普段日本国内のニュースにしか触れる機会の無い人には、新鮮な切り口ばかりで刺激にはなるでしょう。
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    投稿日:2023.10.24

  • yasz

    yasz

    元税務調査官であるこの本の著者である大村氏の本は楽しく読ませていただいています。歴史をお金の観点から解説してある点に興味を持っています。私たちが習う歴史の事件の内容とは一味違った見方ができるように思っています。

    どんな事件を起こしていくにも「お金」が必要で、それを提供したグループ、それを助けてもらったグループがどのように暗躍していたのかが垣間見れるので、その事件の経過についても納得できると思います。

    この本では最近に起きた事件についての解説がなされています。今後も続編を出していただいて、今後起きる事件についての解説を楽しみにしていたいと思います。

    以下は気になったポイントです。

    ・アメリカの債務残高は現在約28.5兆ドル(3000兆円)である、さらに対外債務が約43兆ドルある、対外資産を差し引く純債務は約14兆ドルである。(p19)以前はアメリカの双子の赤字(経常収支の赤字、債務残高)がニュースなどで取り上げられていたが、最近は取り上げられない。すっかり常態化されたからである(p23)圧倒的な輸出力を持っていたアメリカだが、第二次世界大戦後、わずか26年で貿易赤字国に転落した、この原因は1)西ドイツ・日本の経済発展、2)巨額の軍事費にある(p27)

    ・アメリカは未だに世界一の経済大国として君臨できている、その要因の最大のものは「現在の世界経済システムがアメリカ中心にできている」からである、IMFおよび世界銀行において、唯一の拒否権を持っている(p30)さらに基軸通貨がドルであること(p31)

    ・第二次世界大戦から現在まで、一度も戦争に参加しなかった国というのは国連加盟国において8ヶ国しかない、アイスランド・フィンランド・スイス・スウエーデン・ノルウェー・デンマーク・ブータンおよび日本である。定義によっては、ジャマイカ、オーストリアが入る。戦争がこれほど多いことが、ドルが世界的に信用されてきた要因の一つである(p43)

    ・アメリカの所有している金で14兆ドルという純債務を払うことはできない(3.7%程度しかない)この対外債務はドルが金と兌換していないからこそできた借金である、金本位制の時代ならばアメリカはとっくに破産している(p45)アメリカドルが基軸通貨であり続けているのは、アメリカの国債が飼われているから(p53)

    ・イギリスの悪の三角貿易とは、イギリスから大量の銀が流出するので、インドでアヘンを製造し、中国に売りつけ、中国から輸入した茶の代金を支払うようにしたこと(p61)中国は1937-45年の間に2000%ものインフレが起きたが、それは蒋介石政権の腐敗と無策が大きな要因とされている(p65)アメリカは蒋介石政権が台湾に敗走するのを静観するしかなかったのは、当時、ソ連がアラブの油田を手にしようとしており、イランからソ連を追い出すことが先決であった(p67)

    ・アメリカが肩入れしていた政権が腐敗して国民の支持を失った例として、中国蒋介石への支援・ベトナム戦争・イラン革命・アフガニスタンのタリバン政権樹立がある。独裁腐敗政権を誕生させてはそれが崩壊するという歴史を繰り返してきている(p68)

    ・東欧の共産主義諸国は、その多くが第二次世界大戦でソ連が占領した地域の国々である、ソ連が自力で獲得した領地とも言える、しかし中国はソ連が獲得した土地ではなく、中国共産党が独自に政権を奪取したので、東欧のようにソ連に対しての服従関係は生じなかった。これが中国の将来にとっては幸いした(p70)

    ・中国は1979年に経済特区(深圳、珠海、スワトウ、厦門)を作ったのに続いて、1986年までに経済技術開発区(14都市、天津、広州など)を指定し、経済特区よりもさらに自由度の増した地域であり、外国企業の税制優遇もある(p86)

    ・中国は世界で第4位の広い国土を持つ国だが、排他的経済水域は狭く世界で10番目である、日本は世界で8番目であり中国の倍近くを持っている。その水域とは、その国が海洋上の権利を持つ水域のことで、他の国は船・飛行機などの通過は許されるが、漁業・資源採掘などはできないことになっている(p95)

    ・EUやユーロには大きな弱点があった、1)イギリスが中途半端な形でしか参加しなかった、そして2016年の国民投票で離脱が決定した、2)ユーロ内での格差が大きい、経済基盤の弱い国をカバーしなければならない(p123)

    ・現在、世界の銀行資産の半分以上、多国籍企業の海外投資の3分の1が、タックスヘイブンを経由していると言われる。18兆ドルとも言われる(p128)タックスヘイブンを最初に作ったのはイギリスで、現在もその多くを実質的に支配しているのはイギリスである。19世紀西洋の列強が植民地への投資を増やすために、植民地の企業の税金は安くしていた、そのうち世界中の多国籍企業がイギリス植民地に本社を置くようになった。だからイギリスの海外領は、第二次世界大戦後も税制はそのままにした。1960年代頃からスイスのような秘密主義を取り入れた。具体的には、1)税金を安く、2)会社登記を簡単に、3)金融の秘密を守る、である(p133)

    ・確かにニューヨークのウォール街は金融取引量自体は世界一である、しかしその大半は国内取引である。マネーゲームの本当の総本山は、ロンドンシティである。世界経済全体のシェアを見てみれば、ロンドンのシティの方がウォール街を凌駕している。国際的な株取引の約半分、国際新規公開株の55%、国際通貨取引の35%はロンドンシティである。外国為替取扱量は、1日あたり2.7兆ドルであり世界全体の40%、アメリカはイギリスの半分。オフショア銀行預金残高は3.2兆ドルでオフショア市場の55%を占める(p138)

    ・タリバンが復活した最大の理由は、財力とその資金を末端の兵士にまで満遍なく分配していることにある。これに対して、アフガニスタンの給料が安く国家の運営がうまくいっていない、税収や国際援助で受け取った金は政治家や有力者に流れて、末端の役人や兵士には行き渡っていない(p200)

    ・占領政策を行なっていたGHQは、日本をすぐに復興させようと思っていなかった、兵器産業を廃止、重工業の復興や船舶保有も制限した。重工業の生産能力は、国内の需要に応じる範囲(昭和5年レベルの3分の1)とされていた、終戦から1年近くは事実上、輸出入を禁止されていた。(p205)これが1946年に大転換した、冷戦が始まったから(p205)

    ・1990年に海部内閣がアメリカに対する公約として10年間で430兆円、村山内閣の時に上方修正されて630兆円の公共事業を行うと明言した、これが日本経済に甚大な厄災をもたらすことになった(p223)

    ・2021年10月のIMFの発表によると、世界各国の新型コロナ対策への財政支出は1900兆円であり、世界各国政府の債務残高は、世界の1年分のGDPに迫っている。つまり世界各国の政府は、世界の人々の1年分の稼ぎの借金を背負っている。今後、増税をしなければならない国も出てくるだろう。(p247)

    ・アメリカの基軸通貨の問題は資本主義の欠陥が露呈したもの、資本主義とは常に誰かが借金をしていなければ回らない仕組みになっており、その誰かがアメリカになっているという見方ができる。つまりアメリカが巨額の借金をしているからこそ、世界経済は回っている、資本主義経済における通貨とは、各国の中央銀行がお金を貸し出すことで流通する形を取っている。銀行券とは、それだけの価値を中央銀行が保証するものでその金額の価値がある券を中央銀行が「貸し出している」ということになる。流通している通貨とは、誰かが銀行から借りたものが回っている。利子分は回っていないので、市中にで回っっているお金は、利子分が常に不足していることになる(p253)さらに貯蓄として留め置かれると、市中に出回るお金は、その分不足することになる、それを補うためにさらに誰かが銀行からお金を借りなければならない(p254)

    2022年11月8日読了
    2022年12月31日作成
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    投稿日:2022.12.31

  • 匿名希望

    匿名希望

    世界のすべてがお金でまわっている
    当然と言えば、当然ですが、最も勢いのある国にお金が集まる。今で言えば中国かもしれませんが、それでのドルが基軸通貨として地位は揺るがない。但し、海外に対して莫大な負債を持つ国の通貨が基軸通貨であったことは歴史上なかったとのこと。
    また、イギリスという国がGDPの大きさ以上にタックスヘイブンで金融国家として高い地位にあること。

    全体を読み通して、アメリカのドルが日本の景気や歴史上、ヨーロッパの在り方に深く関わってきたのだなと感じました。
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    投稿日:2022.04.30

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