【感想】この道の先に、いつもの赤毛

アン・タイラー, 小川高義 / 早川書房
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
3
6
2
0
0

ブクログレビュー

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  • kemukemu

    kemukemu

    あー、ものすごくよくわかる、この感覚。

    どんなに用心して、どんなに計画して、どんなに予定通りに実行しようとしても、それを阻むようなことが次々とやって来きて、なかなか思い通りにはならない。

    でも、全て予定通りに進んでいくと、ある日、なんだかつまらなくなったことに気がつく。
    できることしか、やらなくたっていたから……。

    自分で用意した小さな箱の中で安心していると、ある日突然それから先がわからなくなる。

    朝のランニング途中で「この道の先に、いつもの赤毛」を見ていた毎日から、突然違う道に投げ出された、中年独身男性の物語でした〜。
    面白かった。
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    投稿日:2024.03.22

  • コルベット

    コルベット

    社会規範を守り
    判で押した日々を送る
    四十路の主人公。

    いつものことばかりの
    生活に、

    いつもではないことが
    飛び込んできて、

    彼の内に波紋を投じる。

    その波紋が
    いつしか彼の行動を、

    そして人生を変える。

    そう、
    現状を変えることには
    失敗のリスクを伴う。

    えてして多大な労力も
    払わなければならない。

    すなわち、
    現状維持を選択すれば、

    失敗のリスクを負わず
    労力も払わなくて済む。

    だから私たちは、
    本当は変わりたくても、

    無意識の内に現状維持
    を選択する。

    いつもではないこと。

    それは、
    往々に招かれざる客で
    あるが、

    本当は「変わりたい」と
    思っている私を導きに
    きた、

    運命の使者かもしれない。
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    投稿日:2023.03.26

  • Mizuiro

    Mizuiro

    このレビューはネタバレを含みます

    静かな雰囲気の小説で、心地よかった。

    毎朝同じ時間にランニングに出かけるマイカの決まりきった生活に、非日常な出来事が起こっていく。大学時代の元カノの息子が訪ねてきたり、彼女にフラれたり。

    家出したブリンクと、その家族たちがマイカの家から出て行った後の、
    「もうパーコレーターは、溜息のような音を立てているだけだった」
    この表現がたまらなく好き。

    最後の「つらい心を抱えた人。おれがそうなっちゃった。」が老人ホームの件と繋がっているところも痺れた。

    マイカの暮らしはとっても質素だけど周りは賑やかで、終わりも素敵だったし、なんだかほっこりした気分が残った。

    目から入る情報は文字だけなのに、その人がどんな風貌でどんな服を着ていて、どんな部屋に住んでいるのかや風景など、これらが想像できる小説って、やっぱりすごいな〜と思った。

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    投稿日:2023.03.05

  • あさ

    あさ

    『マイカ・モーティマーのような男は、何を考えて生きているのかわからない。……』
    という最初のセンテンスだけを思いついてこの話を書きはじめたそうだ。

    一言で言えば、まあ堅物の人付き合いの上手くできない人マイカ。
    アパートの管理と、パソコンなどの技術サービスをしている。

    運転しているときは、『交通監視システム』に、制限速度を守り、ウィンカーを出し、静かなブレーキ操作をすることをしっかり評価されていると空想しながら。
    彼女とはなにかチグハグでうまくいかず、そこに大学時代のガールフレンドの息子がやってくる…
    そこから色々なことが起き、そのガールフレンドにも何か言われ…
    少しずつ人の心がわかってくるのか、1人が寂しいと思うのか、ちょっとだけ進んだように話は終わる。

    ふだんの話がそのまま綴られていて、それでも少し変化がある感じがアン・タイラーらしい。
    やっぱりアン・タイラーはいいなと思う。もう80歳を過ぎたらしいけれど、まだまだ書いて欲しい。 
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    投稿日:2023.01.12

  • たなか・ま

    たなか・ま

    「ボルティモア郊外で、コンピューターの便利屋をしながら独り暮らす43歳のマイカ・モーティマー。人付き合いの少ない彼は、毎朝7:15になるとランニングに出かけ、その後シャワー、朝食、掃除……というように決まった日課を守って毎日を過ごしている。
    そんなある日、マイカの息子だと名乗る青年が彼の元を訪れる。さらに、恋仲の女性には、とあるすれ違いで別れを告げられ──。
    予想外の出来事が続き、日常のテンポがズレ始めたマイカの行き着く先とは」(早川書房HP紹介文より)

    まずマイカ、という名で男性というのが飲み込むのに時間がかかった。些細なことだけど、外国文学を読むとこういうことがある。

    マイカはきっちりしてて病的なくらい自分のペースを守る。なんとなく引きこもりっぽくて、見た目は冴えないのでは、と考えてしまうが女性には人気があるようで、その辺りも馴染むのに時間がかかった。

    彼なりの温かさというか、独特の感覚に馴染むと、読んでいて心地よく、また彼を応援する気持ちになってくる。自分も歳を取った証拠かもしれない。

    読みやすくて、現代的な、それなのにポジティブな世界に浸れる良い小説であった。


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    投稿日:2022.11.20

  • うみかもめ

    うみかもめ

     彼のような男は何をするかわからない。

     こんな書き出しで形容されることは、彼にとって不本意なことだろう。平凡だが、関西でいうところの、ヘンコかもしれない。

     朝のジョギングから始まるスローライフは “今時” だ。途中見かける消火栓を赤毛の女性に(違いない)見てしまう面白がり方は、成熟しきれない面も残している。無頼を気取った部分もあるだろう。しかし、突然現れた学生時代の彼女の子供を観察するにつれ、知らぬ間にずいぶん大人になってしまった自分自身に気づかされたことだろう。

     現在の彼女とのぎくしゃくした関係をきっかけに、弱気を見せる主人公。残りの人生を数えるような年齢になってしまったおっさんの僕にはメルヘンの要素も感じるが、なんとも鮮やかな人間描写に映る。

     社会が望むような大人になりたくないと思って生きていても、人は必ず大人になってしまうんだな。
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    投稿日:2022.11.13

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