【感想】5分間ノンストップショートストーリー ホラーチック文具

染谷果子 / PHP研究所
(2件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    「友人まで消せるケシゴム」「縁を切れるハサミ」など文具にまつわる不思議で怖いお話を14話収録。5分で読めるので朝読にも最適。
    【命を宿した文具たち】
    「ケシゴム」……人間の姿形、命、そのほか何もかもを消すことができる
    「ハサミ」……縁を切りたい人に刃先を向けると、縁縄(えんなわ)が見え、刃で切ると、縁も切れる
    「マスキングテープ」……「かわいい」を広めることを使命としている
    「コンパス」……美しい円を描けるなら、どんな手段も選ばない
    「ホッチキス」……恋する相手の守護文具になることにあこがれている
    「セロハンテープ」……絆創膏を超える仕事をするのが夢

    その他、ごほうびシール、赤青鉛筆、三角定規&分度器セット、学習セット、蛍光ペン、墨液、ノートとペン、修正ペンが登場!
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    投稿日:2023.06.26

  • もんがらかわはぎ@読書垢 児童書ホラー強化中

    もんがらかわはぎ@読書垢 児童書ホラー強化中

    とある小さな文房具店が閉店した。町中に昔からある、個人経営の文房具屋。最近、客足が少なかったせいで多くの文具が売れ残ってしまっている。店主はその文具たちを不憫に思い、彼らに命を与え、活躍の場を得られるように祈ったのだった。

    ***

    児童書より。5分間で1話読み切れる短編集。ホラーチック文具という名の通り、”文具”に焦点を当てた珍しいホラーである。文具をホラーに仕立てるなんて想像ができない……というままに読んでみたが、これがなんと非常にユニーク。作者のセンスに脱帽した。

    事の始まりは、閉店してしまった文具店。その店の主人が売れ残った文具たちを不憫に思い、どうにかならないかと神様に祈りをささげる。祈りに答えた神は、棚に陳列されていた一部の文具たちに命を授けることにした。命を与えられ、自分の意志で動けるようになった文具たちは、文具としての矜持をかけて、自分の使命を全うさせてくれそうな人と共に過ごす。

    という本当にユーモラスな始まり方である。しかし、共に過ごす、という様にいい風に書いているが、人間が文具たちの使命全うのために付き合わされているというのが正しい。
    しかも、かなり強制的なレベルで付き合せてくるので、人間側に多くの被害出そうになったりしている。題材が他にないため、かなり展開が面白く読み進めていったが、非常にブラックジョークのきいた話が多いので、大人が読んでもギョッとするような話もあった。

    「ハサミ」

    律は中学1年生の男子生徒だ。最近母親の小言が多くて煩わしくて仕方がない。今日も、祖父の葬式に出席するため車で移動している間中も、最近の律についてずっと小言が漏れている。
    祖父の家につき、祖父が経営していた小さな文房具屋で昔の思い出に浸ろうとしたひと時も邪魔をされた律はいい加減うんざりしていた。
    そんな時、どこからともなくしゃべるハサミが現れて自分は煩わしい縁をすっぱり切る、神の使いの縁切りバサミだとのたまった。あっけに取られていると、母親が戻ってきてしかりつけ始めた。我慢の限界を迎えた律はハサミに言われるがまま、母親との縁を切ってしまうが……。

    中学生の時期よくある母親が煩わしいという現象。わかるーと思いながら読んでいた。主人公にちゃんとしてほしいのはわかるが、ちょっとこの母親確かにうるさい……。まあ、それは置いておいて。
    ハサミにそそのかされる形で母親との縁をつなぐ縄をばっさりと切ってしまう。切ったすぐは変わった様子はそんなになかったが、時間がたつにつれ母親の態度が変化していく。具体的にどのような状態になるのかはネタバレなので詳しくはお話しできないが、目に見えて態度が変わっていくのは不安だろう。しかも、かっとなってやってしまったのだから、焦ったことだろう。
    第三者の介入で事態はよい方向に転んだが、もしそうならなかったらどうなっていたことだろう。考えるだけで恐ろしい。

    「コンパス」

    かつて、新体操をしていたマリエは都心のマンションから、夫の故郷に引っ越してきたことを後悔していた。都会には何でもあったが、ここにあるのは煩わしい人間関係だけ。夫は人情味あふれる街だといっていたが、とにかく過干渉なのだ。マリエは現状を非常に嘆いていた。
    ある日、家でうとうととしていると窓の園から澄んだ声が聞こえる。その囁きは誘う様に名前を呼ぶ。おびき寄せられるように、玄関を開け、声がした窓辺に回り込む。するとそこには銀色の素晴らしいコンパスが立っていた。コンパスはマリエに語り掛けるとある場所に連れて行ってしまった。

    これはなかなか最後が怖い話だった。最初はコンパスとマリエが新体操を通じて友情をはぐくむいい話かなと思ったが、ところがどっこいである。最初にコンパスの語り、次にマリエの語りが入って最後に向かっていくのだが、マリエの語りもちょっとちぐはぐなところがあって変。
    途中でどういうことなのかわかったが、その所為で正常な判断力を失ってしまったのか、最悪の結末を迎えてしまう。
    中々このコンパスの話は不穏な話だが、コンパス本人は自分が素晴らしいと思っている行為をしているだけで悪意はない。悪意がないからこそ恐ろしいわけだが、巻き込まれた側はたまったものではない。
    マリエの行動がどういう風に周りから解釈されるのかと考えると、しんどいものが胸に残る。

    「ノートとペン」

    文芸部の杏は小説家志望の高校生である。しかし、文化祭の部誌に載せるための小説を期限内に書き上げることができず、書きかけの作品を提出したら、独りよがりの文章だと酷評されてしまった。
    しかし、自分は自分にしか書けない話を書くべきだ、と信じている。自分はこんな文芸部でくすぶっていては逆効果だと、文芸部をやめてしまう。
    部活動が無くなり、暇になってしまった土曜日、杏はいとこから最近はやっている文房具に関する怖い話を聞かされた。
    小説のネタにちょうどいいと、メモを取るための筆記具を求めると、地味なノートとペンを渡された。
    そのノートとペンを前にすると、文具に関する怖い話を書かずにはいられなくなった杏は、寝食も忘れ執筆に没頭していく。

    本の終盤という事もありこの物語全体を総括するような話だった。いかにしてこの物語たちがこの世に残されたかをうかがい知ることができた。
    この話に出てくるノートとペンがどの様にして、他の文房具の顛末を知っていたのかは分からないが、もしかしてどこかで大元がリンクしているのかもしれない。
    小説家を夢見る杏は書き手としてペンとノートに利用されてかわいそうだったなぁ。

    他にも「ケシゴム」、「赤青鉛筆」など怖くて面白い話がぎっしり詰まっていた。

    この本はどの話が抜けていても面白さが損なわれる本であったと思う。
    コンセプト、話ともにユニークかつ、ブラックジョークのきいた面白い本だった。
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    投稿日:2022.04.17

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