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林芙美子 / 岩波文庫 (11件のレビュー)
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夲子
このレビューはネタバレを含みます
貧乏ってやつぁこういう事を言うのさね。どこまでもどこまでも追いかけてきて、いつの間にか自分に成り代わって、次の貧乏をうむのさね。自業自得とのたまう人の、なんたる無理解。金と親と別れた男についてのどこまでも続く愚痴。恋愛模様は演歌そのもの。さまようのは、住まいだけでは無いのです。 破滅型の生活、自己生産の貧乏と、持て余した若さと体力は過激思想とよくくっつく。理想の奥深くに昏く光る恨みを籠めて。当時、この書き方で口に出して歩いたら思想犯として逮捕される流れもよく分かった。 ただひたすらの困窮のサイクルの中でこの人はよくぞ文筆家になったものだ。詩に触れ続け、詩人に囲まれてきた方のようで、日記も非常に詩的だけど、啄木のように生活臭が強い。北原白秋が好きでロシア文学を良く読んだようで作品が頻出する。時代的には第一次大戦後、関東大震災の記述もある。だが世の中の出来事の記録よりも、20歳そこそこで、自分のもがき苦しむ精神を、ありのまま書き付けた胆力に恐れ入る。内容的には何の救いも無いのだが、好評を博したという事は、多くの人が共感したということか。 頭の中のBGMはずっと『からたちの花』でした。いや白秋じゃない、陽水のほう。
投稿日:2024.04.10
2035830番目の読書家
去年の12月にラジオで偶然、作家の林芙美子さんの亡くなる4日前に放送された肉声を聴きました。 昭和26年に放送された若い女性からの様々な人生に関する質問に林さんが答えていく内容です。 車の運転中でしか…も音質もそんなに良くなかったので内容はきちんと聞き取れていなかったのですが、その語り口はとても優しくかつとても力強いものでした。 聴いたラジオが非常に頭に残ったので、林さんの代表作「放浪記」を軽い気持ちで読み始めたのですが、、読むにはなかなかな覚悟の必要な内容でした汗 苦境から作家で成功するに至ったサクセスストーリー的な単純なものを想像していたのですが、一つ一つの文章表現を理解するのに時間はかかるし時系列も前後入れ替わっているなどしてなかなか読み進めるのに時間がかかりました苦笑 流石に読み終えるのに2ヶ月もかかると途中でしんどくなってくるのですが、何かこう、腕を鷲掴みされながら目を見開いて間近で訴えかけられてくるような凄みが全ての頁に溢れていました。 貧窮のどん底を這い回る日々の中、ある時はカフェのスタンドの陰で、ある時は台所のお櫃を机がわりに、ある時は下宿のささくれだった畳に腹ばいになりながら、書くことを決してやめなかったようです。その執念が随所から感じ取れます。 まだまだ飲み込みきれていない部分も多々ありますが、表現することについて強烈な気づきを得た一冊でした。続きを読む
投稿日:2024.02.20
nwako
時系列が…とか人間関係が…など気にし出すと読めないと思うが、一気に読んでしまった。 NHKの番組がきっかけで手に取ったという経緯は恥ずかしいが林芙美子さんに出会えてよかった。 ジェンダー、経済格…差、いじめや差別、政治不信などいろいろな課題があるのに放置されている今こそ読む価値があると思う。 昔の絵画(風景画など)を見るとその当時の街の風景や人の息遣いなどを視覚的に感じられることが多いが、放浪記を読むと彼女が生きた時代の東京下町の景色、街並み、地図上の位置関係や風俗が甦るようで、生きていた人々の日々の暮らしやその息遣いまでが手に取るようにわかる。歴史書にはない楽しさがあった。 長編だが、改めて年数を数えると、ほんの数年間であることに驚きを隠せない。著者のことを悪くいう人もいるが、20才前後のわずか数年間の著者の生き様、どんなに貧しく辛くとも、古書を離さなかった(学び続けようとしていた)彼女の姿に感銘を受けざるを得なかった。 続きを読む
投稿日:2023.08.06
gakudaiprof
100分で名著でとりあげられた。分厚い本で今まで読んだことがなかった。作者の自伝で単にいろいろな生活をしていることをえがいているだけであるという紹介が多かったが、実際は小説や童話や詩を書いていて、なか…なか採択されないという状態を描いたものであった。詩が書かれていることも放浪記の紹介にはなかったと思われる。 作家になるとはどのようなことなのかを知るにはいい本であると思われる。続きを読む
投稿日:2023.07.30
杏の庭
日記の体裁はとっているけども、突然場面と時間が飛ぶので、わかりづらいことが多々。 特にラスト部分は「一体全体どうなった!?」感があって……。
投稿日:2023.06.25
5757274
「文壇に登場したころは『貧乏を売り物にする素人小説家』、その次は『たった半年間のパリ滞在を売り物にする成り上がり小説家』、そして、日中戦争から太平洋戦争にかけては『軍国主義を太鼓と笛で囃し立てた政府お…抱え小説家』など、いつも批判の的になってきました。」 と筆者自身が語った(らしい)ように、正直貧乏売り物にしているだけとしか思えない内容で、序盤で嫌になってきた。樋口一葉が同じように貧乏の中で書き上げた作品とは品格が違う。 登場人物が似たり寄ったりで誰が誰かわからなくなるし、比喩などの表現技法も独特すぎてよくわからないし、何より読んでいてダカラナニ?と思ってしまう。 中盤すぎてから突然変異する作品もあるのでもう少し我慢して読もうと思ったが、いやいや読むだけに先に進まず、この時間利用して別の本読んだ方が好いやと思い、定価1,166円はブックオフに消えました。(無駄に分厚いだけの本。この千余円は紙代なのでは)続きを読む
投稿日:2022.11.24
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