【感想】永遠についての証明

岩井圭也 / 角川文庫
(43件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
18
15
8
0
0

ブクログレビュー

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  • pa-yan

    pa-yan

    大好きな時代小説家 今村翔吾さんが、
    同期、意識している作家と語られていたのがきっかけで。
    初めて手に取りました。

    数学の天才(神童)とも言うべき三ツ矢瞭司。
    幼少期から友達と同じ感覚や会話ができず
    隔たりや孤独を感じていた。
    彼を癒していたのは
    無数の自然のなかに存在する数字、数学たち。

    彼の才能を見出した教師は大学へ導き、
    そこで彼はかけがえない友達と出会う。

    ここまでは良かったです。

    ただ、圧倒的な光や才能を前にすると、
    周囲の人間にも大きな影響をあたえ、
    時には嫉妬や執着、暗い影をも惹きつけてしまう。

    とても孤独で冷たくて、
    掴んでいたものが時間と共にこぼれ落ちていく。
    読んでいてとても悲しくて胸が苦しくて。

    雪の中、振り返りひとり佇む少年(青年)の表紙が。
    読後に見返すととても切ない気持ちになります。

    バリバリ文系の私は数学に関わる本を読めるか
    とても不安でしたが、
    まったく問題ありませんでした。

    むしろ「蜜蜂と遠雷」や「鋼と羊の森」のような
    音楽をテーマに描いている世界観と似ていました。

    また素敵な作家さんを知れたことに感謝です。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.08

  • RYMの人

    RYMの人

    書籍に関して「誰が書くか」にはあまり頓着がなく、『楽園の犬』のついでとして買った本作だった。しかし読み終わって後書きを読んで初めて「これが岩井圭也という作家のデビュー作なのか」と驚嘆した。自分と同じ年代の人間が、デビュー作でこれを書けるのか。あまりに驚いて、中身についての感想を書く余裕がなくなってしまった。引き込まれて、あっという間に読み終わってしまった。続きを読む

    投稿日:2024.03.16

  • yurisyo

    yurisyo

    こちらも前回の読書会でお借りしてきた。岩井圭也作品は楽園の犬に続いて2作目だが、こちらはデビュー作だそう。

    物語は、6年前に早逝した天才的数覚をもつ三ツ矢暸司が残した「コラッツ予想の証明に成功した」とされるノートからはじまる。
    彼とは大学入学からの友人であり、今や30代半ばにして母校の准教授に就任した数学者熊沢勇一の、時系列で現在の視点と、大学入学から病死する直前までの三ツ矢暸司の視点、交互に進んでいくストーリー。

    面白かった。
    読んでいて、「哲学的な何か、あと数学とか」を思い出した。
    あと、短絡的だけど、ラマヌジャンみたいだなとも思った。

    真理の追求は、時に人を蝕む。
    自分の中に絶対的な軸があって、それを外の世界へ持ち込むことなく、外側は外側として折り合いがつけられるような器用な人間なら、こんな風にはならないのだろう。
    そう言う意味では佐那は自分の軸をしっかり持って外側との折り合いをつけられている稀有なキャラクター。

    熊沢の、暸司に対する気持ちもわかる。
    自分に見えていない何か、
    たぶん正しく美しい何かを見ている友人に嫉妬し、その堕ちていくさまに溜飲を下げてしまう気持ち…。
    そこにもう少し早く自覚的であれたら、もう少し外側から俯瞰できていれば、
    ちょっとは変わったのかもしれない。
    その俯瞰するための時間が暸司が亡くなってから6年必要だったのか。

    真理の追求は信仰に近いと思う。

    それぞれが持つ相対的な何かではなく、絶対的な真理…そんなものがあるのかはわからないけど、それを追い求められる才能や才覚がもてるならそれは幸せなことなのかな。

    読後、漠然とそんな問いが残った。

    続きを読む

    投稿日:2024.03.13

  • ニセ人事課長

    ニセ人事課長

    初読みの作者さん。フォローしている方のレビューを読んで、数学者たちのお話というのに惹かれて買ってきた。
    数学は得意ではなかったが、今でも新聞に入試の問題が載ったりすると、ちょっと覗いてみたくはなる。

    大学の数学科に特別推薦生として同期で入学した瞭司と熊沢と佐那。主に瞭司と熊沢それぞれの視点で語られる、彼らの過去と現在。
    コラッツ予想にリーマン予想、群論だとかムーンシャインの一般化だとかWikipediaの説明を読んでもさっぱり理解できないが、そんなことは関係なく、面白く読むことが出来る。
    とりわけ、圧倒的な〈数覚〉に恵まれた瞭司の天才ぶりと、それに惹きつけられた熊沢と佐那が共同研究で結びついていく前半は、彼らの幸せな時期の様子が描かれて好ましい。
    一方、それぞれが自分の道を見出しその関係性が崩れていくようになる後半は、そこから引き起こされる瞭司の孤独、その繊細さや脆さも分からないでもないが、アルコールに溺れていくところがかなり苦々しく、破滅型の天才という絵柄は今どきあまり読みたくなかった。
    それでも終章、熊沢が見た景色は瞭司の魂とのつながりを感じさせ、佐那が教えた少年の登場も連綿と続く“知”のつながりを思わせて、素敵な終わり方だったと思った。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.23

  • おとん

    おとん

    「数学することの喜び、興奮」をあまり感じたことがないからなのか、「自然の根底にある数学的真理とのつながり」という大きなテーマ「真理」が最後まで具体的にイメージ出来ず残念。「証拠もなく疑念を抱いている相手には弁解のしようがない」「問題を解くことに挫折はない」「数覚」に恵まれていながら破滅していくのは、挫折ではないんだろうなぁ。やりきれない思い残る。続きを読む

    投稿日:2024.02.17

  • さかろ

    さかろ

    このレビューはネタバレを含みます

    今年に入って岩井さんの本をはじめて読み、4冊目の本作。期待を裏切らない…。
    後半の切なさや孤独感に胸が苦しくなった。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.02.13

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