【感想】帝国という名の記憶 上

アーカディ・マーティーン, 内田昌之 / ハヤカワ文庫SF
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
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ブクログレビュー

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  • kemukemu

    kemukemu

    上下一括感想
    下巻にて

    もはや観念的なサイエンス・フィクション(SF)と言わざるを得ない。
    でも、多くの人はそれが好き……私も……

    投稿日:2023.08.14

  • takachuu

    takachuu

    このレビューはネタバレを含みます

     2021年8月刊(原書は2019年刊)。米の女性作家の長編デビュー作。ワケあって「SFを読みたい!」と思い立ち、手に取った。本書を選んだ理由は、「宇宙SFに出てくる帝国ってロマンだよな」と思ったのと「表紙に踊る、【ヒューゴー賞受賞】」の文字に惹かれたから。
     遠未来、独立した勢力である採鉱ステーション《ルスエル》から、銀河の1/4を支配する帝国《テイクスカラアン》へ、新任女性大使マヒートが派遣される。《テイクスカラアン》は皇帝の威光の下、その支配は盤石かと思われたのだが……。                    マヒートの視点で、《テイクスカラアン》の宮廷の内情が徐々に明らかになっていく構成。くすぶる皇帝の後継者問題、皇位簒奪を狙う軍人、マヒートが巻き込まれるテロ事件、マヒートに接触してくる、腹に一物抱えた帝国の官僚たち、そしてマヒート自身が抱える「秘密」……。
     以上、本書を構成する要素を列挙すると、いかにも面白そうなのだが、この上巻を読む限り、さっぱり面白くならない。
     まず主人公マヒートが、大使の割に、他人への依存心が強くて、性格や思考などのキャラクター特有の魅力に乏しい。《ルスエル》が独自に開発した神経インプラント「イマゴマシン」によって、前任大使イスカンダーの記憶と人格が、彼女に移植されているという設定なので、当初はマヒートと「イスカンダーの模擬人格」が軽口を交えた会話をするという「いかにもSF!」という面白いシーンもあるにはある。
     だが「ある理由」から、本書の序盤で、マヒートのイマゴマシンは機能不全に陥り、以降、帝国の案内役になるはずだった「イスカンダーの模擬人格」は沈黙したままである。そのせいで、マヒートは手探りで、帝国の内情を調べる羽目になるのだが、その過程もさっぱり盛り上がらず、退屈である。      
     また帝国人はスリー・シーグラス、ナインティーン・アッズなど全て名前に数字が入っているという設定。そんな人物が大量に登場するので、性別やら性格やら、個々人の判別が途中から付かなくなる「誰が誰やら」状態で、一気に物語から心が離れてしまった(一応、表紙の折り返し部分に、登場人物一覧があるが、見返すのが煩雑で仕方がない)。
     ストーリー展開も迂遠で、とにかくのめり込めない。
     文章も訳文が悪いのか、そもそも原文からして文章が悪いのか、はたまた私の読解力が足りないのか、意味がよく読みとれず、四苦八苦。10日近くかかって、何とか360ページ余りを読み切ったが、辛い読書体験だった。下巻を入手済みなので、一応、最初の方は読んでみるつもりだが、下巻もこの調子なら最後まで読み通せる自信がない。

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    投稿日:2022.05.10

  • より

    より

    図書館で。上下巻読了の感想です。
    面白かった。大使が一人で事務作業からすべてを行うのは無理じゃない?と思うけれどもそこはそれ。面白かったです。

    孤立無援の状況で異文化に一人飛び込むのは、いかほどの勇気と胆力が必要だろうか。異文化をどれほど愛していたとしても。さらに前任者が不穏な状況で不審死を遂げているってどんだけ。イマゴマシンはSF機械だけれども、本来なら新任者に引継ぎを行ったり、他部署とネゴを行うスタッフ全員分と思えばその機械にアクセスすることのできなくなったマヒートが途方に暮れたのもよくわかるなぁ。

    自分がどういう状況に置かれているのか、帝国側の思惑も、自分の故郷の思惑もきちんと知らされないで動くって怖いなぁ。確かに彼女はよくやったと思う。犠牲は出てはいるけれども。私は12アゼリアの方が好きだけど、シーグラスの好みが野蛮人の方ならまぁ仕方ないか。
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    投稿日:2022.04.13

  • Giorno

    Giorno

    連綿とした記憶の継承を可能ならしめるというSFらしいテクノロジーにまつわるエピソードを重ねていきながら後編へと盛り上げていく。各章の冒頭に置かれる両惑星の記述や通信文などがもたらす効果はちょっと分かりにくい。続きを読む

    投稿日:2022.03.22

  • marohide

    marohide

     広大な銀河帝国を舞台としたSFでありながら、その内容は貴族の陰謀や政治的な駆け引きを主題とした宮廷劇である。また文化や言語、自己の境界などのテーマに関しては哲学的な領域にまで踏み込み非常に読み応えがあった。

     まずこのタイトルの素晴らしさよ。なぜSFのタイトルはどれもこう美しいのか。読み進むにつれそのタイトルがもつ物語上の意味が明らかになり、読後に本を閉じたその瞬間、表紙に書かれた表題を見て改めて感嘆の息が漏れる。タイトルとはこうでなくてはならない。

     物語は銀河帝国〈テイクスカラアン〉の壮麗な首都に、辺境で併合の危機に晒された〈ルスエル・ステーション〉からやってきた外交官である主人公マヒートが降り立つ所から始まる。
     本書の魅力のうち大きな部分を占めるのが、このテイクスカラアンを中心とした世界観の色鮮やかな描写であろう。洗練された貴族文化をもち、政治にまで詩作能力が要求される詩人の帝国。それでいて生贄の伝統があり、あらゆる方向に侵略の手をのばす野蛮性をも持ち合わせた危険な帝国。
     モデルとなったのはビザンツとアステカらしいが、作者自身がビザンツ帝国の博士号を持っているとのことでその描き方の説得力にも納得した。

     固有名詞が多く、初めはとっかかりにくいというのは事実である。しかし、読み進めているうちに、いつの間にかそれらの用語にも慣れている自分を発見するはずだ。それはまさしく異文化に放り込まれてから徐々に親しんでいく過程の追体験に他ならず、これらの独特な用語が小説に旨味を与えていることは間違いない。

     帝国に住む人々の描写も良い。彼らの価値観や美学が、その言動や所作などから伺えるという構造が上手いのだ。中でも主人公の文化案内役であるスリー・シーグラスがあまりにも魅力的だった。好きになってしまう。
     賢くて好奇心旺盛、負けん気が強くユーモアのある皮肉屋。エイリアンにも興味を示すなど進歩的な知性と旺盛な好奇心を持つ彼女だが、そんな彼女すらマヒートのことを平然と「野蛮人」呼ばわりするなど、決して自身の文化的価値観を超越した存在としては描いていない点が好印象だった。
     マヒートとスリー・シーグラスはその文化背景の違いからずれが生じるのだが、それを無理に理解しようとするのではなく、違うものとして丁寧にコミュニケーションを図る。その姿には心を動かされるものがあった。


     表紙を開くと扉には以下の一文がある。

    「本書をみずからの文化を滅ぼす文化に心奪われたことのあるすべての人に捧げる」

     マヒートにとって帝国は最後まで帝国であった。それは常に強大な脅威でありながら、同時に荘厳で美しい憧れの文明である。
     読者にとってもそれは同じだ。自分など、読み終わる頃には何かに圧倒されよくわからない涙が出ていた。

     他国の文化を愛することとその国の政治を是とすることはイコールではない。本書を読書時、ウクライナに対しロシアが侵攻を始めたが、ロシアの文化を愛していた自分にとっては、何か深い部分を揺り動かしてくれた一冊となった。

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    投稿日:2022.02.28

  • ma1048

    ma1048

    銀河を支配する帝国
    記憶インプラント
    SFの王道風設定だが、グダグダ駆引きが続き、SFの楽しさを感じられなかった

    投稿日:2021.10.28

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