【感想】源氏の白旗 落人たちの戦

武内涼 / 実業之日本社
(3件のレビュー)

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  • だまし売りNo

    だまし売りNo

    源平の合戦で敗者となった源氏側の人物をオムニバス形式で描く歴史小説。源義朝、常盤御前、源頼政、源義仲、静御前を取り上げている。

    源義朝は保元の乱で父為義と戦って勝利し、為義を処刑した。これは親殺しとして世の批判を受けた。これは義朝が平治の乱で振るわなかった一因である。源頼朝以降の源氏が親族同士の殺し合いで途絶えたことは有名である。源氏には義朝の時から、同族で殺し合う傾向があった。

    上総広常は義朝の郎党であり、平治の乱で敗走する義朝にも従っていた。広常は頼朝に従ったところから描かれがちである。そこでは大武士団の長として頼朝にも傲岸不遜な人物とされ、それが理由で頼朝に誅殺されたと伝統的には描かれた。しかし、義朝の郎党として忠義を尽くした人物との前半生を知ると異なるイメージがある。むしろ、頼朝はもっと広常を大事にすべきであったのではないか。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では広常の謀反は冤罪として描かれた。それが実は真実を突いているだろう。

    源平の合戦では源義経が船の漕ぎ手を射殺すなど源氏に手段を選ばない卑怯な振る舞いが描かれることが多い。むしろ敗れた平氏の方が正々堂々と戦っている。伝統的な歴史観では平氏は公家化して弱体化したとされる。しかし、武士とは貴族の中で軍事を専門職とした家とする職能武士論が有力である。平氏は武士らしさを失ったから敗れたというよりも、平安武士らしさを貫いたから義経のような手段を選ばない存在に敗れたとなる。

    このように考えると本書の畠山重忠と巴の一騎討ちは清々しい。重忠は坂東武士の鑑と呼ばれるだけのことがある。後に重忠は謀反の冤罪で滅ぼされてしまう。この畠山重忠の乱で北条義時の大軍に奮戦して散った。重忠は秩父平氏であり、平家と重なるところがあるだろう。
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    投稿日:2022.10.10

  • たすきがけ

    たすきがけ

    このレビューはネタバレを含みます

    5人の登場人物の一人ひとりに焦点をあてた5編の短編。
    個人的には、頼政が面白かったかな。
    それぞれの想いがハッキリとしていて、とても分かりやすい内容だと思いました。

    歴史的にみると、安寧な世の中にしようと思っている人達が戦っているという、もの悲しく感じずにはいられないですが、その時代その場所にいる人たちが、信じる道を懸命に生きる。そんな生き方を感じた1冊でした。

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    投稿日:2022.09.03

  • 借買無 乱読

    借買無 乱読

    平安期末から鎌倉初期にかけて、京の都から『落ちて』行った源氏の戦人たちの物語。源義朝、常盤御前、源頼政、源義仲(木曾義仲)、静御前の話の五編収録。日本史の授業では、源平合戦や鎌倉幕府成立などでサラッとしか習わなかったので、一人の人物に焦点を当ててじっくり読んでみると、とても面白かった。続きを読む

    投稿日:2022.03.21

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