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坂本敏夫 / 集英社文庫 (4件のレビュー)
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忍田鳩子
タイトルに惹かれて古本屋で購入。間違ってなかった。 関東大震災の折、横浜刑務所から24時間の時間指定を設け前代未聞の全囚人開放。これが大きなテーマなのだが、メロスは囚人の妹だった。この妹を軸に、えが…かれているのは37歳の若き所長の生きざま。囚人に対し、ただ真摯に、更生を願いためにやっかみを買い果ては戦犯として6年服役することになる人生を読ませて頂いた。 時代だねえ。 「こんなファンタジーある?」と読む人によっては思うだろうし、間違いなく「被害者」を生み出した「加害者」たる囚人に対しここまで美麗に書くことへの嫌悪を感じる人もいるかもしれない。ただ、これをドキュメントとして読むか作家(元刑務官)の緻密な長年の取材に基づいた小説と読むかで読後感は大きく変わる。 少なくとも私は一気に読んだ。ちらちら文語が変わったり、前後が交錯して何度かページをくりかえしたりもしたが、勢いはまったく衰えなかった。 「書きたいものを書く。突き動かされて」という作家の想いが伝わる作品を読む幸福。いや、面白かったっす。続きを読む
投稿日:2023.03.01
湖永
1923.9.1 関東大震災時、横浜刑務所で囚人たちの安の為、完全解放処遇を決断した。 囚人たちが、戻ってくると信じていなければできない決断であっただろうと思う。 そして、彼らも24時間の解放の中…、何を思い行動したのか…そのまま逃げるという選択もあったはず。 災害に直面してなお、人間らしさを貫いた人たち。 それは、信じることの大切さであったのだろうか。 続きを読む
投稿日:2022.06.14
あさみちゃん
管理する人が素晴らしいから囚人たちの規範もあるのだろうけど、こんなことある?という思いが湧き上がるのを止められません。まるでファンタジー。悲しいけれど、性善説?はて?と首をかしげてしまうようなひねくれ…た世界にどっぷり浸りすぎなのでしょう。続きを読む
投稿日:2021.09.01
臥煙
大正12年の関東大震災。甚大な被害を受けた横浜刑務所、火炎の迫る中、所長は囚人たちの安全のため、監獄法で定められた囚人の解放を命ずる。未曾有の大災害下、人の善が問われる感動作。 筆者は元刑務官。囚人…を解放したことが流言蜚語を招いたとし、本省から糾弾された所長、事件の真相を長年にわたり探究した結果が本書である。 24時間という区切られた解放。震災の被害は大きく囚人たちに戻れない事情もある。自分の帰還と目の前の被害者を天秤にかける事態。 キャリア官僚の所長への反発、所長の失脚を図る本省職員。職員の反目を図りまた流言で囚人を惑わす。 多くの支援物資。囚人たちは荷役の業務に黙々と従事し、市民の信頼を得る。 災害ユートピアという概念がある。大災害時に短期間だが人は互いに協力するように遺伝子でプログラミングされているという。本書の話も正にそのスジ。人道的な所長の姿勢に感銘を受け、協力する囚人たち。 人の善意についてまた醜い部分について実に考えさせられる感動の一冊でした。続きを読む
投稿日:2021.05.24
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