【感想】戦争と平和4

トルストイ, 望月哲男 / 光文社古典新訳文庫
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
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ブクログレビュー

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  • 鈴華書記

    鈴華書記

    文学と歴史の板挟みにあった人間がどう手探りしたか,を知る上では参考になる作品だと思う。当時のロシアの貴族社会,フランスとの距離感,ナポレオン戦争の詳細など。

    投稿日:2023.06.14

  • runmagazine

    runmagazine

    この巻では、いよいよナポレオンがロシア本土に遠征し、領主たちの東方への避難や、ロシア軍とフランス軍の戦闘の様子が描かれる。
    砲弾が降り注ぐ激戦の中で、人間が感じる死への恐怖や負傷の痛み、或いは実在の人物であるナポレオンの戦場での心境など、非常に読み応えがあった。

    さらにここに至って、従来になく作者の歴史観と戦争観が語られている。
    その一つが、戦争についての自らの持論をアンドレイ公爵に語らせた場面。
    それは「捕虜は取らずに殺害すべきだ」という暴力的な主張に始まるが、その理由は、戦争をルールあるゲームにしてしまうから容易に戦争が開始される、もし皆が命を落とすことになれば、相当の理由がない限りは戦争にならないだろうが、しかし今のようなルールに守られた戦争は、軽薄な軍人のおもちゃになってしまう、というものだ。

    自分も、前線で命を掛けた戦闘が繰り広げられる最中に、上層部では温かく安全な部屋で敵国同士の交渉が持たれる、ということには違和感を感じるので、この言葉に大きく頷かされた。
    主張された通り、戦争はルールあるゲームでありごく一部の人間の道具に過ぎない。
    この主張を言わせるためにこそ、この小説全体が存在している、と言っても言い過ぎではない言葉の一つではないかと感じた。

    巻の前半のナターシャの贖罪の記述も、祈りの持つ力がよく伝わり心が洗われた。
    読書を通してそのような体験ができる作品は貴重である。
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    投稿日:2023.01.12

  • 一条浩司(ダギナ)

    一条浩司(ダギナ)

    第3部第1~2編を収録。ついにモスクワに迫るナポレオン軍――ロシアの一大危難に立ち向かう人々を描く。

    軍務に復帰したアンドレイは、悲しみと憎しみのためか、例の「空」のことも自由を満喫した生活のことも忘れていく。多言語が入り交じる軍務会議のなかで、「戦争の科学」など存在しないという結論に達するのは作者の信念でもあるのだろうか。いっぽうで父との軋轢が重なるマリヤは、それでも許しと信仰を兄に主張する。言動がひどい父親も決して悪人というわけではなく、この家族は本当にせつない。

    黙示録の獣の数字とナポレオンの関係は知らなかった。ピエールがそれを自分に当てはめるのはさすがにこじつけすぎて笑ってしまう。その妙な使命感から危険をかえりみず戦場を見学しに行くという奇行は、本人は真剣なのだが、どこかユーモラスに思える。

    肉体と精神の危機を乗り越えたナターシャは、幼さが消えて魅力的な女性として成長したと思う。心の流れが鮮明に描かれてきたせいだろうか、これが文章で伝わってくるのがすごい。

    人間が自発的だと思ってする行動はすべて必然的な歴史の道具であるというトルストイの運命論と、ボロジノ会戦におけるナポレオンの様子は、そのヒーローとしての幻影を打ち砕くものだ。そして迫るフランス軍と逃げていく住民の混乱と喧騒の描写は、日常から最初の砲撃、焼かれていく町の姿など、リアルで恐ろしい。そんななかで、儚げなロマンスがいくつか発生するのが見どころ。

    終盤、負傷したアンドレイが愛と許しに目覚めるシーンが圧巻。オードリー・ヘップバーン主演の同名アメリカ映画を観たことがあるが、こうした部分はどうしても映像では伝わらないので、興味のある人はぜひ原作小説を読んでほしい。
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    投稿日:2022.10.05

  • sakaiX

    sakaiX

    物語も後半に入ってきた。ナポレオンがついに動き始めてあっという間にモスクワに迫り、ピエールは戦場に向かい、アンドレイはナターシャとの婚約を破棄する。彼ら彼女らの運命も気になるところだが、個人的には物語の本筋よりも、本巻から地の文でトルストイの戦争に対する思いが徐々に述べられ始めているのが大きな特徴であるように思う。初読時はまあこういう趣向があってもいいかな程度に考えていたのだが・・・。続きを読む

    投稿日:2022.04.20

  • bqdqp016

    bqdqp016

    ナポレオンによる、ロシアへの侵攻の場面が語られている。宮廷貴族の状況、攻め込まれたロシア地域の状況、決戦地での戦闘の状況が、丁寧に描かれており、興味深く読み進められた。戦場の地図もあり、物語のイメージがわきやすい。

    「戦争においてはどんなに深く考察された計画も何の意味も持たず、すべては不意の、予測不可能な敵の動きにどう対応するかにかかっており、戦闘の全体がいかに、誰によってリードされるかにかかっているのである」p86
    「結果がどう転がろうが必ず「俺はすでにあの時に、こんなふうになると言ったんだ」という者たちが現れる」p215
    「(略奪禁止命令)そうした案件はすべて火にくべたまえ。(味方が)麦を刈ろうが薪を燃やそうが、かまうんじゃない。私はそういう命令は出さんし、赦そうとも思わんが、賠償金を取ることはできん。そういうことは、なしでは済まないんだ」p366
    「チェスの場合、ナイトは常にポーンより強いし、ポーンが2つなら1つよりも強いに決まっている。ところが戦争では1個大隊が1個師団よりも強力なこともあれば、また1個中隊よりも劣ることもある」p445
    「お嬢様は仔牛が殺されるのを見ると気分が悪くなる。優しさのあまり血を見ることができないというわけだが、そのお嬢様が、同じ仔牛の肉にソースを付けておいしく召し上がるのだ」p451
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    投稿日:2021.11.22

  • のっぴ

    のっぴ

    今回は戦いが多い。様々な人物の状況を書きながら、ボロジノでフランス軍とロシア軍が激突する。アンドレイはまたもや負傷している。
    解説にあるとおり、語り手がわりと強めに出てくる。戦争という大きな出来事には一人の人間が起こしたり、動かしたりするものではなく、その場にいる一人一人の行動の結果というような話は、なんとなく好きで物語の大きな流れを感じさせる。ラストはフランス軍が敗北のような書かれ方をしているが、これからモスクワが占領される流れのよう。続きが気になる。続きを読む

    投稿日:2021.09.21

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