【感想】女たちのニューヨーク

エリザベス ギルバート, 那波 かおり / 早川書房
(13件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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ブクログレビュー

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  • フォーリー

    フォーリー

    ヴィヴィアンという90歳近い主人公が、アンジェラという女性に手紙を書く形で物語が語られる。
    この2人の関係が、最後のほうまで謎だったが、そこがいい仕掛けになっていると思った。
    ヴィヴィが一番馴染めない堅物のオリーヴ。でも彼女の行動力や格言が、大事な転換点になっていたのも興味深い。
    「名誉の戦場は痛みを伴う場所なの。」
    心に刻んでおきたい。

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    投稿日:2022.09.23

  • みけ猫

    みけ猫

    パワー・オブ・ザ・ドッグの凶悪な犬の力に続き、ブロークバック・マウンテンから吹きつきける荒々しい風が私の心をものすごい力で持ち去ってすっかりカラッポにしており、正直に言って今はニューヨークの気分なんかじゃ全然なかったのですが(もっとカウボーイくれ!という気分だった)、しかし他に読むものがなかったので、しぶしぶ気持ちを切り替えて読んだ。

    でもこれも良かった!
    ★ひとつマイナスなのは、たぶんまだブロークバック・マウンテンの世界をちょっとだけ引きずっているせいで、ラストの方で主人公が長々と語る性衝動の「闇」に対する記述がいかにもこの著者らしく説明過多で嘘くさくてちょっとカンに触ったからで(この著者は性衝動に対して罪悪感があるのか、いつもくどくどと説明し過ぎるところが難点)、もし違う時期に読んでいたら、★5つの本だったかもしれない。

    いろんな人が現れては消えていく話なのだけれど、その中で、ペグの夫ビリーと、完璧な兄のウォルターの二人の描写がとても良かった。エドナの最後の冷たい仕打ちの描写も良かった。
    著者は、仲良しの関係よりも、一筋縄ではいかない相手にすり寄っていって拒絶されるところを描くのが非常にうまいと思った。
    自分が人生でそういう苦い経験をした時に作家の目で観察しているんだろうか。
    お兄さんとの関係は特にリアルに思えた。私には完璧な兄はいないので、本当にリアルかどうかは分からないんだけれど。

    最後の方の
    「みずから招いた災難しか知らない人は幸いなり」
    という文に、ドキリとした。
    私もそうだわ、と思った。
    過去ひどい目に遭ったと思うことはほぼ全部、自分のウカツさが招いたことだと思う。たぶん。
    そうか、それは幸運だということなのか、と改めて思った。

    最後の訳者あとがきで、この本を書いているときに著者の周辺で起こったことが短く述べられていたが、それはまるでまったく別のCity of Girls話をもう一つ読むようだった。ちょっと驚いた。
    古い時代だけじゃなく、今の時代にもいろいろと語るべきことは尽きないなぁ、と思う。
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    投稿日:2022.07.08

  • はっさく

    はっさく

    このレビューはネタバレを含みます

    雑誌「VERY」のシスターフッド特集の中で紹介されていた1冊。

    読み始めたら止まらない。特に中盤からぐいぐいひきこまれる。1940年代のニューヨークを舞台に、自らが世界の中心であることを証明するように、嵐のような生活をするヴィヴィアン。若さゆえの自分本位の言動に居心地の悪さを感じる前半。しかし、あるスキャンダルにより二度と癒されない傷、取り戻せない信頼があることを知った彼女。自分を見つめなおし、彼女を愛する周囲の人々との生活のなかで培った、彼女らしい生き方考え方に元気づけられる。
    ヴィヴィアンが、自分を責めるフランクに対して「あなたが役立たずだっていうのが事実だったら、それがなんだっていうの?」「それって重要なこと?」と言い放った言葉が印象的。世界はまっすぐじゃなく、だれもがそれぞれの業を抱えて生きていて、いろんなことが人生に降りかかる。公平じゃないことも、人生に降りかかる。でも、だからなんなの?と言い切れる彼女の強さ、潔さはとても清々しい。 

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    投稿日:2022.05.22

  • ukihe3

    ukihe3

    登場人物がもれなく全員素晴らしい。人間味にあふれていて魅力的で、1番好きな人を決められない。

    私はもちろんこの時代を知らないし、NYという街も知らない。なんとなくSATCを思い出した。ちょっと違うけど。でももっとうんと前の時代の話ってことは、なんて前衛的なんだろう。

    なによりも、世界は”ただそこにある”。
    そのことを描いた作品に出会ったのはこれが2回目。私はそういう世界の捉え方をする物語が大好きなんだよな〜。



    物語の大筋とは別に、日本の真珠湾攻撃がアメリカ側の視点で、しかも戦場の話ではなく一般市民の目線での戦争の影響が語られるのもなかなか考えさせられた。カミカゼについては描かれるが、原子爆弾については一切触れない辺りも興味深い。もちろんカミカゼはストーリーに関係あるが、原子爆弾は関係ないので出す必要がそもそもないけども。




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    投稿日:2022.02.11

  • korosk

    korosk

    怖い物知らずの若い時代。失敗と後悔と恥。誰の人生も真っ直ぐではなく全てが不公平だ。でも本書の登場人物たちは、みんな生き生きと自分らしく生きている、その姿に勇気付けられる。

    投稿日:2022.01.27

  • 羊さん

    羊さん

    1940年代の米国、地方の裕福な家庭に育ち有名女子大に進んだヴィヴィアンは大学を退学になり、ニューヨークで劇場を経営するペグ叔母さんの元へ放り出される。売れないミュージカルを劇場に住み込むダンサーたちと上演しながら、自分たちの思うままに暮らす叔母さんたちと仲間たちに魅了されヴィヴィアンはニューヨークを奔放に遊び回る。祖母から受け継いだ裁縫の腕を活かし、舞台衣装を作成の才能も開花させる。裕福な劇場ではないが、仲間と愉快に華やかに過ごしていたが、英国に帰国できなくなった有名舞台女優が転がり込んできたことからペグ叔母さんの劇場は一変し、ヴィヴィアンはスキャンダラスな世界へ引き込まれていく。

    全体は、2010年に80代になったヴィヴィアンがアンジェラという女性にアンジェラの父親との関係について語る長い長い手紙、という形式になっている。現代でもヴィヴィアンやその仲間たちの行動はすごいのですが、第二次大戦の頃と思うとただただ驚かされる。
    最後に出会ったアンジェラの父親との関係は、心穏やかにさせてくれる。そして、さまざまに影を落としている戦争の、そして対戦相手としての日本の存在を忘れてはならない。

    最後の方の説明で、どう考えても誤植がありちょっと戸惑う。早川書房の校正でも見落としはあるのか!
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    投稿日:2021.11.26

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