【感想】日々翻訳ざんげ

田口俊樹 / 本の雑誌社
(17件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
2
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5
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ブクログレビュー

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  • kurione

    kurione

    この翻訳読みづらいな〜という程度の感想はもつものの、翻訳者という視点から捉えたことはなかった。

    精霊の守り人を英訳するときに、あちらにない表現に苦労して‥というお話を聞いて、本当に最近興味が出た次第

    複数人に訳されている古典名作も、読み比べるようなことはなかったので、訳者さんによってこんなに違うのか!と驚き。
    多少の誤訳はどうしてもあるという点にも驚き。そういうものなのか‥下訳についても初耳。知らないことだらけすぎて、面白かった。

    あとがきにもある通り、一時期、検視官シリーズとシドニィ・シェルダンが平積みされていて、私はおこづかいをやり繰りして夢中になったんだっけ。まだDNA鑑定が最新技術で、ケイ・スカーペッタが猛烈に格好良かった。懐かしいなぁ。

    久しぶりに検視官シリーズを読んだときに、?なんだか読みにくい‥と思い、よく見たら訳者さんが変わっていたんだった。その時は残念だった。
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    投稿日:2023.05.06

  • とりあえず

    とりあえず

    実は著者の翻訳した作品をほとんど読んだことがなかった。それでも本書は面白く、一気に読み終えた。たぶんその理由は、著者がやらかしたエピソードや失敗エピソードが惜しげもなく書かれており、こうしたエピソードが著者と読者の距離を一気に縮めてくれるからではないだろうか。もちろん翻訳にまつわるエピソードも興味深く、なんだか翻訳本に対して肩の力を抜いて接することができるようになった気がする。

    特に印象深いのは、原作者であるジョン・ル・カレにコンタクトをした際に怒らせてしまい、ダメージコントロール会議をエージェントや編集者と行ったという話。翻訳者でもこんなことあるんだなとか「ダメージコントロール」という言葉を使っているところに、なんだか翻訳者の存在がぐっと身近になった気がした。
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    投稿日:2022.09.27

  • hazel8483

    hazel8483

    業界裏話として興味深かったです。

    SFは特殊な訳語があったりするから
    翻訳が大変だ…というところに同情したりして。

    投稿日:2022.06.10

  • 名無し

    名無し

    このレビューはネタバレを含みます

    チャンドラーは悪文(ペーパーバック買わなくてよかった)
    翻訳書、結構絶版になっている。
    ネルソン・デミルのチャームスクールは近所の図書館にもない。
    神は銃弾、パナマの仕立て屋、SFのオルタード・カーボン
    三大難航翻訳だそう。

    red dwarf を「赤い小人」※正しくは赤色矮星
    と訳したことなど自らの誤訳も赤裸々に語る。
    翻訳は難しい。特にニュアンス。
    ネット社会になって調べ物は格段に楽になった。

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    投稿日:2022.03.13

  • iadutika

    iadutika

    このレビューはネタバレを含みます

    日々翻訳ざんげ
    エンタメ翻訳この四十年

    著者:田口俊樹
    発行:2021年2月20日
    本の雑誌社

    翻訳家についてとくに意識したことがなかった。それでも、昔のレイモンド・チャンドラーなどのミステリーものの訳者として記憶している有名な翻訳家など、何人も知っている名前が出てきた。小鷹信光、田中小実昌・・・
    著者は1950年生まれで、翻訳歴40年。ミステリーなどエンターテインメントものを中心とした翻訳を手がけているが、上記にあげた有名翻訳家は彼の大先輩となる。なお、ロバート・B・パーカー(僕は多くの作品を読んでいる)の翻訳をしている菊池光も先輩翻訳家だが、著者はよく書いていない。

    僕たち素人からすると、翻訳家は英語のことは知り尽くし、背景となる文化などにも精通し、100%理解した上で日本語にしていると思いがちだが、この本を読む限りそうではないらしい。過去、出版されて評価されている翻訳本ですら、いまだに理解できていないところがたくさんある、というようなことが何度も書かれている。驚いた。それどころか、同じものを訳している先輩翻訳家たちも、自分と同じところが理解できずに全員が省略している、などと言ったことも披露している。

    どうしても理解しがたいところは、著者に手紙を出して質問するが、その質問の英文が稚拙だからと激怒されたこともあるらしい。「こんな英語を書くやつが俺の本を翻訳しているのか!」と。
    いまではインターネットで固有名詞(団体名や地名など)もすぐに出てくるが、昔はまとめて図書館で調べまくったり、人に聞きまくったり、それでも最新情報はなかなか出てこなかったことが想像できる。

    そして、テンパってしまうと稚拙な間違いをおかしてしまい、人から指摘されるという。今から思うと赤面の至りだろう。さらに、こんな言葉を知らずに誤訳していた、などという恥ずかしい話も披露している。例えば、
    ・Downtown。これは「市当局、警察の含み」。ミステリーで刑事が容疑者に「ダウンタウンに行こうぜ」といったら、繁華街に遊びに行こうぜ、ではなくて、署まで行こう、の意。
    ・バンガロー(bungalow)はもともとヒンディー語で「簡易な藁葺き家屋」。原意は「ベンガル風の」で、イギリスでは「平屋住宅」、アメリカでは通常平屋の「小さな家」だと辞書に出ている。なのに「バンガロー」と訳すとキャンプ場に建っているようなものを連想させてしまう。「ごく普通の平屋の一軒家」とすべきだった。

    しかし逆に、何人もの先輩翻訳家がみんな誤訳をしていたのを見つけたという、自慢話にしたくなるような話も紹介されている。

    彼自身が読者としてのめり込んだ作者や作品なども紹介されているため、それを読みたくなってくる。時間がいくらあっても足りないので困る。

    なかなか面白いエッセイ本だった。

    **********

    主語につく「が」が多すぎる。翻訳文も日本の作家の文にも。大野晋の定義は、未知の主語には「が」、既知の主語には「は」がつく。井上ひさしは、「は」はやさしく提示し、「が」は鋭く提示する、と説明。

    酔っ払って呂律が回らなくなり、I am sorry,sir.と言うべきところを、I am sirry,so.と言ってしまった。音位転換(メタセシス)と呼ばれる。著者はこれを「ごさんなめい」と訳した。
    過去、田村義進氏の名訳にこんなのがあった。
    Don’t talk Turkish.(トルコ語を話すな=わけのわからんことを言うな)をDon’t turk talkish.と言い間違えた。田村氏の訳は「何を言っトルコ」。

    犯人の動機がミステリーの主眼となるものを「ホワイダニット」という。
    (例えば、同時刻に同じ場所で同じ職業の人が殺された事件)

    「ひとりごちる」とは言わない(原形ではない)。「ひとりごつ(ひとりごとを活用させた語)」を現代語風に言い換えたもの。「濡れそぼる」「濡れそぼった」も同様で、原形は「濡れそぼつ」。

    能力以上の作業を求められると、人は本来持っている能力すら発揮できなくなる。心理学の実験でも実証されているそうで、例えば、一度に7個の数字を覚えられる人でも、一度に10個の数字を見せられると5個も覚えられなくなる。

    恐怖を心に抱えると、人は不寛容にも利己的にもなりがち。9.11は、摩天楼だけでなく、宗教も文化も国籍も人種も民族も関係ない、万国共通の大切な何かが永遠に失われてしまったような気がしてならない。

    チャンドラーは悪文だと他の翻訳家も言っていた。確かにチャンドラーの短編には、同じ言葉が不必要に繰り返されていたり、描写が無駄に細かすぎたり。ちゃんと推敲したのかと疑いたくなる。

    「ゲームの達人」が大ベストセラーになった1988年ごろ、宣伝文句の「超訳」が物議を醸した。原著にない部分を書き加えたり、ある部分を逆に省略したりすることも含まれるので、翻訳とは言えないと多くの翻訳者が憤慨した。
    この問題について「週刊文春」が渡米して著者に取材した。答えは「一向に差し支えない」だった。日本での売上は作者に著者印税として跳ね返ってくるので、聞くだけ野暮だった。

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    投稿日:2021.12.07

  • takachuu

    takachuu

     2021年2月刊。筆者の単著を読むのは初めて。筆者は英米ミステリを中心に訳し続けて40年余りのキャリアを持つ翻訳家。その筆者が、過去に自分が翻訳を手掛けた書籍を俎上に上げて、当時の苦労などを回顧したエッセイ。筆者の訳書を、私は『刑事の誇り』『卵をめぐる祖父の戦争』、(筆者が金銭的に困窮して訳した)とある自己啓発本の計3冊だけしか読んでいないし、筆者の名前を、訳者として特に意識したこともないのだが、書名に惹かれて、本書を手に取った。
     一番印象的だったのは、スパイ小説の大家ジョン・ル・カレの『パナマの仕立屋』の翻訳を担当した際、ル・カレへの質問と共に、個人的なメッセージを拙い英文で送ったら(翻訳家だから、英文を書くのも得意というわけではないそうだ)、その稚拙な英文が気難しいル・カレの逆鱗に触れたらしく、訳者降板の危機にさらされた話。やはり人の失敗談は面白いよね(オイオイ)。
     怒りを買った作家もいる一方で、著書の翻訳を通して、友好的な関係を結べた英米の作家もおり、他の著者の本の翻訳で分からないことがあったら、その作家に相談しているというエピソードは微笑ましかった。筆者が翻訳した本が、その後、映画化され、その映像を観て初めて、誤訳に気づいたという話も面白かった。
     筆者も翻訳を手掛けた『郵便配達は二度ベルを鳴らす』には、現時点で、8種類の邦訳が存在しており、同じ英文をそれぞれがどう翻訳したかを比較した趣向にも、興をそそられた。筆者は自分が手掛けた訳書についての失敗談や誤訳を包み隠さず、明かしており、翻訳家という仕事の苦労の一端を垣間見られて、非常に興味深かった一冊。(終) 
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    投稿日:2021.11.18

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