【感想】夜空に泳ぐチョコレートグラミー(新潮文庫)

町田そのこ / 新潮文庫
(749件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
304
292
106
8
2

ブクログレビュー

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  • はんぺんチーズ

    はんぺんチーズ

    すごく好きだった
    正直そんなに期待していなくて、もっとかるーく本屋大賞にハズレは無いみたいな気持ちで読んでたからびっくりした
    全ての短編集が少しずつ重なっているのも、その重なり方もすごく素敵だし、
    れぞれの物語は全く違うのに、なぜか繋がりを感じる不思議な感覚
    どの物語も、切なさもあるけれどどこか希望に満ち溢れていて、心が少し軽くなるような、ふっと力が抜けるような心地よい波に揺られている感覚でした
    ずっと気になっていたけれど、手に取ってよかった
    もう一度読み返したくなる作品でした

    一つだけ個人的には、装丁がもっと違うものだったら良かったのかなとも思う。
    これが本屋大賞感?ちょっと軽い今どき感?を出しすぎている気がする、、もったいない!もっとみんなに読んで欲しい
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    投稿日:2024.05.07

  • リリー

    リリー

    登場人物が少しずつ重なっている連作短編集。
    それぞれが生きづらさや苦しさを抱えているんだけど、少しだけ希望が見えてきて生きていこうとする。
    幸せそうに見えてもみんな大なり小なり色々悩んで生きている。
    当たり前だけど、自分だけが辛いんじゃない。
    そして、真っ暗だと思ってたけどちょっと顔を上げたら光が見えたりするんだろうなと。

    1番好きなのは“波間に浮かぶイエロー”
    “私のことを好きだって言ってくれる人がいるだけで、頑張れる”
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    投稿日:2024.05.05

  • るう

    るう

    チョコレートグラミーという熱帯魚の名前が入った美しいタイトルに惹かれました。
    チョコレートグラミーは、親が口の中で稚魚を育てて外敵から守るマウスブルーダーで、縞模様の入ったミルクチョコレート色の魚なのだそうです。

    まだ見たことのないもの、知らないこと、気づいてないこと、わからないことがわたしにはたくさんあり、それが少し怖いです。
    人は、生まれる場所や環境を自分では選べないし、生まれ持った性分は変えられないし、どんなに努力しても叶えられないこともあり、直面する人生の危機が見えないのが不安なのです。
    でも、この小説を読んで思ったのは、夜空を水槽に見立ててチョコレートグラミーを泳がせることができるように、絶望的な深い闇の中にも永遠の命を見出せるのではないかということです。
    闇が深いからこそ見える美しさがあるということです。

    この作品は5編の連作短編集です。
    想像力に溢れた文章と巧みな構成で、物語の中に引き込まれました。
    5編それぞれの最初の一文がどれも素晴らしかったです。
    なかでも特に好きなのは、5編目の「海になる」の書き出しです。
    「今日はわたしの誕生日で、とてもいいお天気の日曜日だから、死ぬにはぴったりの日だなと思った。」
    続きを読む

    投稿日:2024.05.04

  • ももて

    ももて

    じわじわと誘ってくるような苦しみを日常に溶かした5編がゆるやかに繋がる短編集。

    片親、暴力、孤独…そういったどうしても救われないものを日常に溶かして、辛い日々を追体験してじんわり味わせるような書き口。作者はどんな人生を歩んできたのだろうか。続きを読む

    投稿日:2024.05.04

  • まな

    まな

    5話それぞれに、生きづらさと一筋の光があった。
    晴子には啓太が、桜子には清音が、唯子には宇崎が...生きづらさを自分一人で抱え込むのは本当に辛い、だからこそその痛みを分かち合える他者の存在ってすごく大きいな〜〜と改めて。

    私は特に『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』が大好き。いつも守ってくれていたおばあちゃんがいなくなった今、自分の力で殻を破っていこうと不器用ながらに変化する晴子と、その姿を素直にかっこいいと思える啓太。片親である母親が、父親探しを諦められていないことへのもどかしさを感じつつ、いざと言うときに助けになれるようにバイトをし始めた啓太と、その意図を見抜いて素敵だと言える晴子。
    苦しみを乗り越えることは簡単じゃないけれども、その苦しみに向き合うために、前を向くために、互いの存在が作用していて。夜、展望台でのシーンは切なくも温かくて胸が震えた。
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    投稿日:2024.05.03

  • hiroking

    hiroking

    ボロボロのみずぼらしい身なりをして、空腹を抱え、荒れ果てた地方の街を、圧倒的な絶望感を抱えながら裸足でトボトボと歩いているような、、、そんな気持ちになってしまいました。
    そんな気分にさせてしまう文書力が凄すぎます。

    現在週に一度、日経新聞のエッセイで読んでいる町田さんの素顔に近い部分は、「九州に住んでいる、食べることが大好きで、ウィットに富んだ文章を書く人」という印象を抱いてしまいます。

    過去に読んだ「ぎょらん」と「コンビニ兄弟」。同じ町田さんの作品なのだけれど、私にとってはまるで別の作家さんの作品のように思えてしまいます。

    「ぎょらん」を読み始めた時、どうにも読むことが苦痛に思われてきたのです。特に最初の2篇。登場人物たちの「とても正気の沙汰とは思えない暗くてグロテスクな生き様」、「救いようのない悲しみと苦しみ」がリアルに描かれている。リアルに見えるというだけではなく肌でも感じられ、音も聞こえ、匂いもしてきそう。しかし、徐々に読む印象が変わってきました。圧倒的な筆力に脱帽しました。それが町田さんとの出会いだったのです。

    この作品は「ぎょらん」に近いのかもしれません。ストーリーの圧倒的な暗さと感じる無力感、寂しさといった感情に呆然としてしまいました。

    作品全体の構成でも、町田さんの圧倒的な筆力に翻弄されてしまいました。カメルーンの青い魚」で先づガツンとやられてしまい、読み進めて少しづつ平衡感覚を取り戻してきた、と思っていたら徐々に精神状態が不安定になり、最後の作品で息の根を止められてしまうかのような、そんな感覚でした。脳が壊れてしまいそうでした。

    町田その子さん。恐ろしい作家さんです。
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    投稿日:2024.04.29

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