【感想】「萌え」の起源

鳴海丈 / PHP新書
(7件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • キじばと。。

    キじばと。。

    時代小説作家として知られる著者が、日本のマンガやアニメ、あるいは時代小説や時代劇などの人気の理由を、日本の文化的伝統のなかにさぐる試みをおこなっている本です。

    タイトルは「「萌え」の起源」となっており、なぜ時代小説作家である著者がこうしたテーマをとりあげているのだろうかという疑問を感じましたが、著者略歴を見るとコバルト文庫から刊行された『聖痕者ユウ―薔薇のストレンジャー』で小説家としてデヴューしたとあり、納得しました。ただし本書は、「萌え」だけを論じたものではなく、人間と他の動物やさらにはロボットを区別することのない日本のサブカルチャーに見られる特徴や、自己犠牲的なヒーロー像など、幅広いテーマがあつかわれています。

    ただし著者の議論の基本的な構図は、日本文化についての本質主義的な理解に帰着するものであり、いささか無防備な議論といわざるをえないように思います。たとえば「萌え」について論じているところで、著者は手塚治虫の『リボンの騎士』を中心に変身ヒロインの系譜をたどり、日本のサブカルチャーには「自然体のジェンダーフリー」が成り立っていると主張しています。しかし、著者が例にあげている『秘密戦隊ゴレンジャー』のメンバーに「紅一点」のモモレンジャーについては、斎藤美奈子にかかれば「パンチラ要員」となってしまいます。

    著者は、日本のサブカルチャー作品が政治的な主張を意図してつくられたものではなく、このほうが「面白いんじゃないか」という創意によって「自然体のジェンダーフリー」が達成されていることを高く評価しています。わたくし自身は、ラディカル・フェミニズムの主張がパターナリスティックな立場につながってしまう風潮に対して「面白いんじゃないか」という作品そのもののクオリティを追求する姿勢を打ち出す実作者としての著者の態度にはほとんど全面的に賛同を送りたいと考えています。それでも、本田透の『萌える男』(2005年、ちくま新書)と同様、それぞれの立場についてのじゅうぶんな理解がなされないままに議論がなされていることのむなしさを感じてしまいます。
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    投稿日:2023.01.05

  • lemon1221

    lemon1221

    大学の卒論に向けて読んだ。
    手塚治虫世代ではないので、あまり知識がなかったのだが、日本人の精神が手塚作品には詰め込まれてると納得できた。
    また、日本人であることを誇らしく思える内容。(もちろん、他国批判ではなく)
    ポイントは、異種との共生、だと感じた。隠れて善をやるヒーロー像や、自分の利益のために働かない方が美しく感じたり、日本人にとっての当たり前が、マンガに描かれているのを実感できた。あと、恋愛が成就しないこと、モノを擬人化すること、など手塚作品の特徴もわかりやすかった。
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    投稿日:2014.10.13

  • josh kadhara

    josh kadhara

    究極的にいうと「日本人とは何か?」という一冊。

    「萌え」の起源に迫る、知的好奇心をくすぐる内容。
    ・スーパーディフォルメと根付けに見る共通点
    ・漫画の神様と萌え〜生物と非生物の垣根を越えた魅力
    ・変身するヒロインの系譜
    ・文化風俗の時代背景にみる性差倒錯
    ・弱者を守るために己を捨てる日本的ヒーロー
    ・言葉で伝えずに察することを求められる日本式テレパシー
    など

    ただし萌え系に属する単語の解説は一切行われず、知っている前提で進められるので注意。
    個人的には、唯一無二のアクション女優 志穂美悦子さんが挙げられていたことに「燃え」る。
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    投稿日:2013.04.21

  • gendenyacchi

    gendenyacchi

    タイトルに騙されてはいけない。これは立派な「歴史的日本人の文化考察」に関する本だ。著者の幅広い教養には驚く。現代のサブカル文化から昭和映画、江戸時代の歌舞伎、海外映画まで古今の様々な文化に触れ、日本人のアニミズム、自己犠牲のヒーロー像、全体の調和を良しとする和の精神を見出している。現代カルチャーの始まりには天才手塚治虫がいて、さらに歴史を紐解くと元々日本人にはそうした価値観が備わっていたことがわかる良書。続きを読む

    投稿日:2011.07.23

  • bax

    bax

    このレビューはネタバレを含みます

    [ 内容 ]
    時代小説作家が書いたジャパニメーション論。
    なぜ鉄腕アトムは太陽に飛びこんだのか――。巨匠・手塚治虫の作品群を糸口に時代小説家が描く画期的な日本文明論。
    『リボンの騎士』のサファイア、『バンパイヤ』の狼女・ルリ子、『火の鳥2772』の万能アンドロイド・オルガなど、手塚治虫の「変身するヒロイン」をキーワードに、日本のマンガ・アニメが世界制覇した原動力の「萌え」、それを生んだ日本文化の核心を探る。ルパン三世と木枯し紋次郎の共通点は?
    シュワルツェネッガーvs長谷川一夫の軍配は?
    なぜアトムは太陽へ飛びこんだのか?
    日本人による日本人のための作品が、世界中の人々の心をつかんだ最大の理由は何か!?
    時代小説家による画期的なサブカルチャー論。

    [ 目次 ]
    ●はじめに ――江戸時代の「根付」と現代のSDキャラ
    ●第一章 手塚治虫のグローバリズム
    ●第二章 変身するヒロインの系譜
    ●第三章 「萌え」とは何か
    ●第四章 和製エンターテインメントの不思議な世界
    ●第五章 ここがヘンだよ日本のヒーロー
    ●第六章 マンガを支えるテレパシー文化
    ●結びにかえて ――「百恵ちゃん」と「はやぶさ」と「アトム」
    ●あとがき
    ●参考資料

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    [ 参考となる書評 ]

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    投稿日:2011.04.22

  • bookfesta86

    bookfesta86

    『萌え』という感情は、今に始まったものではなく、大昔から日本にはあったのだ、というもの。

    萌え、マンガなどのサブカルだけでなく、『日本人は、外国人観光客にはやさしいのに、なぜ日本に居住する外国人には厳しいのか』などという問題も論じられており、興味深い。続きを読む

    投稿日:2010.04.07

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