【感想】新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙VI

支倉凍砂, 文倉十 / 電撃文庫
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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ブクログレビュー

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  • はねかわ

    はねかわ

    新大陸の話が進んだ6巻
    狼と香辛料Spring Logで存在が仄めかされた猫の錬金術師が羊皮紙シリーズでも登場。今後キーパーソンになってくる予感。

    投稿日:2022.03.29

  • hanemitsuru

    hanemitsuru

    ミューリとコルのシリーズ第6巻。

    2020年5月の5巻発行以来、2021年3月のこの巻まで10ヶ月間が空いています(その間にコミカライズ版が1冊出てはいますが)。ここ数年は刊行間隔の長期化が目立ち、今回もだいぶやきもきさせられました。後書きには提案したプロットが没になったことなどが書かれていましたが、「狼と香辛料VR2」に手を出していたのも関係ありそうです。
    刊行間隔については、もともとミューリとコルの「羊皮紙」、ホロとロレンスの「香辛料」が交互に発行される関係上、ただでさえ通常のラノベよりストーリーの進行が間延びしがちなので、特に気になるところです。小出しでもいいからそこそこの間隔でなにがしかの本が出てくれるとありがたく思います。
    ついでに言えば、コミカライズ版も2巻以来1年経過しましたが、続刊の音沙汰がありません…。こちらはこちらで、今年に入ってからずっと休載が続いているようで、やっぱり大変やきもきしています。

    閑話休題。
    コルとミューリの旅はウィンフィール王国の首都を目前に、「金髪」ハイランドの拠点である王国第二の都市たる港町ラウズボーンで足踏み状態です。
    ニョッヒラを出発した当時のコルの目的は聖典の俗語翻訳を足掛かりに「教会の不正を正す」ことだったはずです。しかしここに至るまでの経験が、事態がそんな単純なものではないとコルに気付かせてくれました。
    そもそもコルのパトロンたるハイランドは王家の中では極めて微妙な立場であって、コルが一方的に教会を糾弾することはハイランドの不安定な立場を一層危うくしかねないのに加え、王都へ乗り込んで国王の面前で教会を糾弾すれば多くの民を巻き込んだ全面戦争を招きかねないこと…ただ自分の正義を押し通した結果を想像し、先に進むことに逡巡しているようです。

    そんな中、ここに来て王国と教会の争いの解決策として「新大陸」の重みが増してきました。いずれの勢力にも属さない空白地への進出こそが争いの原因たる「十分の一税」を巡るのっぴきならない対立の唯一の解決策であることにコルが思い至ったのです。それは、冒険譚として、世界のどこにもなかった自分たち「人ならざる者」の居場所としてのミューリの「新大陸に対する憧れ」をともすれば凌駕するほどの真剣みを帯びてきています。

    そんな状況で、とうとう「新大陸」を実際に目指している人物が登場しました。
    新大陸に向けて旅立った想い人の後を追うべく準備している麦の大産地の前領主、ノードストンです。
    なお、彼の想い人は「香辛料」の22巻(Spring Log5巻)で言及された(のと同一人物だと思われる)猫の「錬金術師」だと思われます。

    これまで自分は、この話の背景となっているイギリスの宗教改革からおそらく「ピルグリム・ファーザーズ」の渡米までの実際の歴史は、聖職者であることを理由に「結婚」に踏み切れないコルとミューリの仲のスパイス的な、「聖典自体にダメって書いてないんだから兄様もみんなにそう教えなきゃ、そのためにもミューリをお嫁さんにして」程度の扱いだと思っていたのですが、どうやらその程度の扱いでお茶を濁すことはなさそうです。ずいぶん具体性と現実味を帯びてきました。

    さらに、「ファンタジーだからそういうふわっとした伝説ってあるよね」、で片付けられなくなった要素がもう一点。「月を狩る熊」についてです。
    地に満ちていた「人ならざる者」たちを滅ぼしたという「月を狩る熊」は、「人ならざる者」の中でもとりわけ巨大な一族だったのではないか、「人ならざる者」の中でも真の姿が熊である者は今では全く見かけることがない、と、ミューリやコルたちはこれまでそう考えてきました。神話の時代だからそんな存在だっていたのかもしれない、と。
    ところが、この巻からやや不自然な感じで「熊」に関する記述が増加します。例えば、かなり唐突な感じで「熊のような人物」の例えが紹介されています。ノードストンが「熊のような」と形容されている他、「風の強い曇天の夜の中、その屋敷は不気味さを増しているというよりも、冷たい風に身をうずくまらせている、傷ついた熊のように見えた。(P358)」「それはまるで冬の終わりを待つ、一頭の熊のようなのだった。(P374)」などです。
    いよいよ「月を狩る熊」の正体に迫るときが近づいているのだろうと思います。
    そして、ホロ達「人ならざる者」を滅ぼしたのは、熊の化身ではなく、「熊のような」人間の集団か、巨大で「熊のような」機械を操る技術者集団だったのではないか…、オータムが見たという巨大な足跡は、ミューリ達に無茶をさせないための、もしくは読者のミスリーディングを誘うための韜晦だったのではないか…、そんなことを思わざるを得ません。

    重みを増したと言えば、作者の別シリーズのヒロインと同一人物と思しき「猫の錬金術師」の存在も同様です。ミューリ達よりも先に新大陸を目指して旅だったとか。今後、ミューリとコルが新大陸を目指すとすれば、一足先にその地を踏んだに違いない「猫」の錬金術師の存在を避けて通ることはできないでしょう。あまり手を広げたくないのでスルーしてきたのですが、これは「マグダラで眠れ」シリーズを読まないといけないのでしょうか…。うーん。

    この巻では、新大陸の「存在」が現実味を帯びただけではありません。ミューリとコルは、大西洋を横断できるほどの船と、熟達の乗組員を手に入れて、新大陸へ「渡航」するための足掛かりを得ました(オーナーに恩を売ったのですから、手に入れたのと同じことですね)。金はエーブとデバウ商会が競うようにいくらでも出すでしょう。

    さらに、コルは地球が丸いことに気が付いてしまいました。

    こうなると、ミューリとコルの旅は王国の首都までどころではなく、本当にニューイングランドのプリマスまでたどり着いてしまうのではありますまいか。もしかして、二人の後を追って再び旅に出たホロとロレンスも同じ船に…。
    剣も魔法も登場しない経済ファンタジーだったはずのこのシリーズが突然「歴史改編SF」という別の顔を見せた瞬間です。「SPRING LOG」でこのシリーズがすべてホロの日記だった可能性を提示したのに続くコペルニクス的転回です(地球が丸いことに気が付いただけにw)。


    さて、舞台のほうがどんどん変貌を遂げていますが、その上に立っているミューリとコルの関係にも変化が見られます。
    二人だけの騎士団で、二人だけしか使えない紋章を手にし、夫婦でも恋人でも兄弟でもない宙ぶらりんな関係をきちんと昇華させることができました。
    でも、ミューリが「騎士らしく」振舞うことに目覚めて、以前ほどコルにまとわりついて困らせることがなくなって、読者としてはちょっとがっかり。やっぱりイチャイチャまではいかないとしても、お嫁さんにしてほしい美少女にまとわりつかれる状態ってラノベっぽくていいじゃないですか。

    今回はもともとハイランドのお遣いから始まった話で、緊迫感も控えめです。荒事もせいぜいミューリがコルを背に乗せて疾走するのと、暴れるふりをするのと、ジゼルさんがちょっと頑張るくらい。狼姿のミューリの描写も、麦を使っているはずの変身シーンもあっさりしたもので、こちらも残念です。
    この辺は、どこまで行ってもホロとロレンスのラブコメが中心にあった「香辛料」のほうが…というか、ホロの手練手管に一日の長があるようです。
    世界が広がって、他のシリーズの世界観ともリンクして、その上でミューリとコルの関係を、「人ならざる者」の居場所まで含めて落ち着かせようとするあまり、二人の関係がちょっと窮屈になっているように思います。10ヶ月ぶりに読むんだから、もっともっとミューリを可愛くモフモフ飛び跳ねてくれよー、というのが正直な感想です。
    だいたい、挿絵自体おっさんおばさんばっかりで、ミューリの挿絵がほとんど出てきません(6枚中ミューリは1枚半だけ)。それだけ見せ場がなかったってことです。

    逆に今回いちばんいい役目だったのはノードストンですね。滅茶苦茶立っているキャラでした。西を目指す場合の船担当として、今後もずっと登場するんでしょうね、きっと。

    直前の「香辛料」のほうの22巻(Spring Log5巻)にはミューリとコルのエピソードも入っていたので、「香辛料」の23巻でミューリの可愛さ成分を補充できることを期待しておきます。


    と、長々と書きましたが、「あとがき」に作者がさらっと同じようなことを書いていました。
    「心残りは、もっとミューリとコルのやり取りを入れたかったなあとか。」
    そうですそうです。ミューリ成分を、もっと!

    「『狼と香辛料』では問題が大きくなりそうなので避けていたことに、『狼と羊皮紙』では立ち向かえて行けたらなと思っています。」
    ということで、新大陸関係や「月を狩る熊」、猫の錬金術師などの伏線をすべて回収してくれるつもりであるのは間違いなさそうです。

    「たぶん毎回話をまとめるのに非常に苦労するのは、お話の柱にそういった世界の問題と、コルとミューリの関係と、さらに毎巻ごとの三種類を盛り込まねばならないから、というのが担当K氏の分析でした。」
    今回、「そういった世界の問題」のウエイトが大きすぎて「コルとミューリの関係」がちょっと物足りませんでした。

    「もう少し刊行速度を上げられたらなと思っている次第です。」だそうですので期待して待っています。
    まずは手元にある「香辛料」の23巻(SPRING LOGの6巻)からですね。
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    投稿日:2021.12.17

  • きったん

    きったん

    成長したミューリと幼さの残るミューリのどちらも見られて良かったです。人ならざる者達や懐かしいキャラがたくさん出てきたり、他作との繋がりが見え隠れしたり、世界の謎にまた一歩踏み込んだり、、今作は分かりやすいストーリーながら盛り沢山で面白かったです。はたして収拾はつくのか!次巻を待つあいだにマグダラ読みたくなりました。続きを読む

    投稿日:2021.08.07

  • jube

    jube

    面白かった。ミュールの活躍も良いし、今回新しい種類の化身が出てくるのも楽しかった。話の組み立てが面白いので、つい忘れがちだが、化身という設定が今回本当に巧く使われている。やっぱりせっかくのチートな登場人物てんこ盛りなので、こういうのが読みたかった。続きを読む

    投稿日:2021.06.13

  • b123400

    b123400

    このレビューはネタバレを含みます

    実質けものフレンズ

    でもよく考えたらコル達の行動って最終的に結果に影響がないような気がする
    そして動物達の力借りすぎて無敵感がちょっとする

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    投稿日:2021.06.10

  • Mu

    Mu

    わーすごく良かった。
    読み終わって心が沸き立つ感じ。
    このシリーズはやっぱり面白い。

    シリーズ前巻はホロとロレンスのお話だったのだけど、そこで作者のもう一つのお話と舞台が地続きであることが分かって喜んでいた。そうしたら、『羊皮紙』の方でも錬金術師が物語に深く関わって来て、そこかしこにフェネシスの痕跡が見え隠れしてとてもワクワクしてしまった。

    そして羊皮紙の方は主人公たちが若いせいか、香辛料よりも壮大な冒険になってきた。
    おとぎ話だった新大陸に実際に渡ろうとしている者たちが現れて、この先、コルとミューリの冒険はどこまで行くのだろうか? とても楽しみだ。

    『香辛料』はいわば商人たちの騙し合いと機転の物語だったのに対して、『羊皮紙』は隠された謎を暴くミステリーなのだなとあらためて気づかされた。
    隠された謎が、誰が何のために隠しているのか? 
    それと共に隠された想いがとても心を揺さぶる。
    こういうの大好きだ。

    それにしても狼と羊と鷲と白鳥(?)と鼠と猫とか、ますますおとぎ話っぽくなってきたなあ^^
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    投稿日:2021.03.31

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