【感想】世界は善に満ちている―トマス・アクィナス哲学講義―(新潮選書)

山本芳久 / 新潮選書
(11件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • y

    y

    論理的に感情を説明した本。
    なるほどな、と思いました。
    なかなか難しい内容で何度もページを戻って確認しつつ読み終わりました。
    学生と教授の対話形式なのも、難しい話に入りやすく、よかったです。

    投稿日:2023.03.04

  • あじの開き

    あじの開き

    最初から明らかになるけど「善」と言うものが私がイメージしていた定義よりだいぶ広かったのでタイトルから想像していた内容とは少し違った。

    あと頭に入ってくるものと入ってこないものがあり集中力がだいぶ必要で序盤で心が折れた。最後まで読んだけど全体的に難しく再読や必要があると思った。

    cotenの深井さんおすすめの本だったので読んでみたけど私には難しすぎたよ…死ぬまでの間にまた読んでその時に理解できるようになってるといいなぁ。
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    投稿日:2022.12.14

  • amelieginga

    amelieginga

    感情が受動的なものであるという点、東洋哲学や心理学と共通の何かがある気がする。
    感情が生まれる過程を微分し解きほぐす説明に、感情の嵐に巻き込まれないヒントがありそうだ。
    心理学やらが新たな発見だと言っているようなものと近いのではないか。心の本質的なところは、すでに遠い昔に観想されていたのだなあ。

    印象的な言葉
    ・感情passioは英語のpassive受動的の語源。passioは外界の影響を受動して生まれてくる心の動き全般のことを指していてそれをここでは感情と呼んでいる(p38)
    ・トマスの感情論を手がかりにすることによって、恐れと絶望は対象を異にした根本的に異なる感情だということがわかってきます。恐れについて言えば、差し迫った未来の困難な悪を自分は恐れているのだということに気づきます。他方、絶望について言えば、未来の善がもはや達成不可能だと思い、既に自分が失望絶望していることに気づきます。
    感情の倫理学を踏まえた上で自らの感情を振り返ってみると、何がそうした感情を呼び起こしているのか、と言うことに改めて気づくことができるようになります。絡まりあって混乱しがちな自らの感情をうまく腑分けし整理するための手がかりを与えてくれるのです(p42)
    ・私たちは「欲求されうるもの」からの働きかけを「受動」しうるからこそ(受容しうるからこそ)能動的に活動しうる。
    受動すること、この世界のなかの魅力的な美点によって心打たれることは、真に充実した人生を送っていく前提条件とも言えるでしょう。
    確かに自分からやみくもにに何かを愛そうとするより、何らかの対象の方から自分への働きかけがないかどうか、目を凝らし耳をすませ、心を開いておくことが愛を引き寄せる第一歩なのかもしれませんね(p77~78)
    ・欲望的な感情passio concupiscibilis
    対象が困難なものであるか否かに関わらない。魅力的なものと関わりたい嫌なものと関わりたくないと言う人間の心の最も基本的で自然な運動によって生まれてくるもの
    愛、憎しみ、欲望、忌避、喜び、悲しみ。
    気概的な感情: passio irascibilis
    自然な運動の達成を妨げる困難との出会いによって生まれてくるもの。欲望的な感情があって初めて生まれてくる二次的な心の動き。
    困難なものを対象とする。
    希望、絶望、恐れ、大胆、怒り。(p81)
    ・「自らのうちに有り余るほどに豊かな善が存在していてそこから他者へと分かち与えるcommunicareことができるほどだ。」
    communicareという動詞は、文脈に応じて、分かち与える、共有する、伝達するなどと訳すことができます。
    例えば太陽は自らの有する光や熱を独占したりはせず、おのずと周囲の者にも光や熱を分け与えていきます。また、泉も、こんこんと湧き上がる水を自分だけで独占したりはせず、おのずと周囲の者もいるをしていくわけですね。そのように、優れたもの、充実したもの、すなわち善いものは、自らの卓越性や充実を自らのうちのみに独占することなく、おのずと周囲へと拡散させていく。
    この原理は、善は自己拡散的であるbonum est diffusivum sui、と言う形をとってトマスの思考体系の様々なところに登場します。善の自己拡散性、善の自己伝達性、と言う言葉でまとめることができます(p252)
    ・富であれ権力であれ快楽であれ、自分だけで何かを独占したいと言う心の動きは誰にでもあるわけですが、でも人間にとっての喜びはそれだけではない。それだけで心が完全に満たされる言うような事はありえない。自分の豊かさを他者と分かち合う、そういう喜びも人生にとって大切なものとして存在するのだ、とトマスは述べているのです(p258)
    ・人間は善の自己拡散性がある。
    この世界の真相をありのままに認識することによって人間は理想的存在としての自らの可能性を十全に開花させることができ、大きな喜びを感じ取ることができる。そしてその喜びは自己閉鎖的なあり方へと人間を導いていくのではなく、真理を他者と分かち合い共有すると言う仕方で、より大きな喜びに満ちた他者との共鳴へと人間を導いていく、とトマスは述べているのです。(p259)
    ・人間が愛と言う感情を抱くのは、外界の善(欲求されるもの)の働きかけを受け、その刻印が心に刻まれていることだ、と言う話をこれまでしてきましたが、それを言い直すと、人間は不完全な存在であるからこそ、自分とは異なる善(欲求される者)の働きかけを受容し、より豊かな存在になっていることができると言うことになります。(p266)
    ・今自分に見えているものがこの世界の全てではない。この世界の内には、まだ自分には見えていない様々な価値、様々な善が存在している。ある種の訓練、例えば味覚の訓練を積むことによって、または徳を身に付けることによって、もしくは自分の心にふとした機会に訴えかけてくる何らかの善との出会いによって、より多様で豊かな善の世界へと自らが開かれていく。私たちの生きているこの世界には未知なる善が計り知れないほど埋もれているのだ。そういう感覚を持って生きることができれば、人生の奥行きというか、広がりというか、そういうものが随分と変わってくるのではないかと思います。それが肯定の哲学。
    良質なワインのおいしさがワインを飲み慣れていく中で徐々にわかってくるのと同じように、この世界の素晴らしさと言うものも最初から全て把握できるようなものではありません。そうではなく、それぞれの人生を生きていく中で徐々に明らかになっていくものなのです。(p283)
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    投稿日:2022.11.29

  • まりあんな

    まりあんな

    授業で指定されて読んだ本。トマス・アクィナスの感情論が分かりやすく、かつ明確に示されていた。愛があらゆる感情の根源であり、欲望されうるものの心における刻印こそが愛。欲望されうるもの=善が自分の周囲に転がっている可能性に気づくことで自分から見える世界はより豊かなものになりうる。続きを読む

    投稿日:2022.05.24

  • サマ

    サマ

    善(よいもの)に導かれた愛(好きという気持ち)がすべての感情のもとになる、というトマスの感情論をひも解いていくことで現代の私たちの生活をも照らそうとする内容。キリスト教神学の視点はほとんどなくて、宗教に抵抗のある一般層向けになっている。私は自己啓発的な話ではなくて神学のほうが読みたかったので肩透かし感はあったけど、トマスの雰囲気はなんとなく掴めるようになった気がする。精緻でありながら、アリストテレスらしい有機的な解釈、明るい哲学。
    神学大全の文章をものすごくかみ砕いて説明してくれて非常にわかりやすかった。
    続きを読む

    投稿日:2022.04.10

  • あやか

    あやか

    情動の根源は愛であり、愛がなければ感情が無くなり、世界に対して無関心になってしまう怖さを感じた。適切な情動は、どんなものであれ、善い感情であるという考えは勉強になった。悲しいという感情も、適切なものであれば、善いものなのである。続きを読む

    投稿日:2022.02.22

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