【感想】フシノカミ 4 ~辺境から始める文明再生記~

雨川水海, 大熊まい / オーバーラップノベルス
(1件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • clamamus

    clamamus

     滅びゆく村の復興に領地改革推進室が全力で立ち向かうシリーズ4巻である。

     粘り強く生きる辺境にあっても、村によって状況も変われば対策も変わる。
     獣害に遭いながらも適切な対応で村を立て直すアデレ村
     長らく不作になりながら無為無策のアジョル村。
     この二つが物語の舞台となって、今回の物語は転がっていくことになる。

     主演は推進室所属のレンゲと、アデレ村村長代理のスイレンの二人。
     二人の横顔が描かれる加筆は多く、物語の骨子はこの二人の関係に据えられている印象だ。

     加えて、アデレ村との連絡役を務めることになるグレンも主役に加えていいだろう。
     彼については、ケジメを付けるかのような告白シーンがこの巻の冒頭に置かれていて、彼を陰の主役と思って一巻を眺めることもできる構成になっている。


     加筆部を今少しみると、軍子会同期のケイや、新たな(アッシュらの出身である)ノスキュラ村からの留学生・ルカなども巻の前半に新登場している。
     ただ、彼女らはあくまで顔見世であり、物語の本編には全く絡んでこない。
     彼女らの活躍の場は、おそらく後々に用意されているのだろう。編纂版(書籍版)での活躍に期待したい。

     前述したように、物語としてはやはりレンゲ&スイレンの関係が色濃い。
     表紙、カラーイラスト、挿絵のすべてにおいて二人の登場は目覚ましく、物語における中心線がわかりやすいところだ。
     それゆえに、一巻での物語の充実度も(原典版に比べて)増していて、読み応えがある一巻になっている。

     若干気になるのは、原典版以上にヒロイン度が高まっている感のあるレンゲ。
     彼女の扱いは原典とはまた異なることもあるのだろうか?
     期待を込めつつ、多少気になった箇所ではあった。


     一冊としての充実度、後半におけるド派手な展開、物語の主題、諸々を加味して星五つで評価したい一冊である。
     この巻の主題はおそらく

    「善意ある援助者が罪悪感を抱え、支援を受けた者が逆恨みから被害者ぶる」

     という構図にノーを突き付けるものだろう。
     文中でも「被害者ぶっている無自覚の加害者」「弱者という棍棒を振り回す乱暴者」(P.140)といった記述があり、その批判的姿勢は明らかである。

     物語的な整理が為されつつ、この主題を抉ったこの一巻は、物語の面白さだけでない内実も含まれているだろう。
     その意味でも興味深い一巻である。
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    投稿日:2021.09.01

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