【感想】1Q84―BOOK1〈4月-6月〉後編―(新潮文庫)

村上春樹 / 新潮文庫
(290件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
44
148
72
4
1

ブクログレビュー

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  • 本ぶら

    本ぶら

    注!
    内容に触れていますが、あえてネタバレ設定にしていません。



    『BOOK1後編』は、面白さが加速する。
    いや。ストーリー自体は『BOOK1前編』と同じく、天吾は10歳上の人妻にタマを弄ばれているだけだし、青豆は相変わらずあゆみと男漁りだ(^^ゞ
    ただ、その合間、合間に、少しずつ、少しずつ、話が進み、その話と話が噛み合っていく感じが、読んでいて楽しい。

    村上春樹は、その辺りが本当に上手い。
    ぶっちゃけ、村上春樹っていうのは、あくまで人気作家であって。世間で言われているような大作家や文豪みたいなタイプの作家ではないように思う。
    昔もそうだけど、ネット等情報が反乱する今みたいな世の中では、ひとたび「それがすごい」となれば、猫も杓子も長いものには巻かれていればいいとその情報になびくことで、「すごいそれ」はさらに評価が上がっていく。
    今の世間にある村上春樹の評価の大半はそういうものだ。

    これから村上春樹を読んでみよう思っている人、あるいは、小説の面白さに目覚めていろいろ手を出している中で著者の本を手に取った人は、村上春樹だって、所詮は数いる作家の一人にすぎなくて。
    仮に、村上春樹の小説が面白くなかったとしても、無理して「すごく面白かった」なんて感想を書く必要なんてないんだと頭に入れた上で読んだ方がいいように思う。
    (もっとも、「面白かった」と書いた方が、面白くなかったのに「面白かった」と書いた多くの人たちから「いいね」は貰えるんだろうけどさw)

    いや。それは、村上春樹を決してクサしているのでない。
    というのは、村上春樹が書く小説というのは、今の小説の主流である、読者に至れり尽くせりすぎるエンタメ小説というのとはビミョーに違うのだ。
    現在、多くの人に読まれている作家の小説のように、読者の気持ちに寄り添ってきたりはしないし、読者が求めている通りのどんでん返しや伏線回収の展開なんてこれっぽっちもない。
    合わない、わからない、つまらないと感じる人がいるのは当然のことだし。
    世間の評判通りに、面白い、すごい、著者はここで書いているのはこういことだとわかったからって、そんなのエラくもなければ、カッコイイことでもない。
    世間の評判や権威を頭から一切取っ払って、自分なりの価値基準で読んだ方が村上春樹が持つ、稀有と言っていい物語る才能を楽しめるように思うのだ。

    この人は、物語を語ることが異様なくらい上手い。
    それは、そもそも、その才能に長けているというのはありつつ。
    著者が、読者を物語に引き込ませるために、なるべく読者の気持ちをざわつかせないように表現や展開を抑えて書いているからのような気がする。
    読んでいて、物語の内容に気持ちがざわつかないから、読者はストーリーに集中出来るのだ。
    そこは本当にすごい才能だと思う。



    そういえば、「BOOK1前編」の感想で、この『1Q84』は、“たんなるラブストーリー”だということは頭に入れて読んだ方がいいよ、と書いたんだけど。
    それは、「BOOK1前編」の冒頭、首都高からハシゴを降りてしまったことで1Q84の世界に行ってしまった青豆が、たまたま見かけた警官が自動拳銃を持っていることに驚くという伏線が全くストーリーに絡んでこないことを見ても明らかだろう。
    ジョージ・オーウェルの『1984年』的な管理社会の恐怖的な要素は「BOOK1」を書いている時点で、著者の頭の中から自然にテーマから外れていったんだろう。

    それによって、『1Q84』はジョージ・オーウェルの『1984年』とは何の関係もない小説になったけど。
    でも、むしろ読みやすくていい小説になったように思う。
    続きを読む

    投稿日:2024.05.02

  • appi

    appi

    徐々に色々なものが繋がり始めていることが分かってきて、ワクワクしました!

    全体的に考えたらそれほど大きく物語は動いていないのかもしれませんが、繊細な描写でひとつひとつが映像になって頭に流れて、満足度は高かったです。
    青豆、天吾それぞれが最初とは明らかに違う状況にいること(当たり前ですが)、どんなことをどんなふうに考えているか、それがここではない世界1Q84を形作っているように思えました。
    ここではない世界だけど、登場人物たちはきっと同じ1Q84を感じ取っていて、色々な人の視点から見えるそれが何なのか想像が膨らみました。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.23

  • lilymikkai

    lilymikkai

    この物語は、暴力と支配について描かれているのだと、唐突に理解した。それによって、この物語はジョージ・オーウェルの描く薄暗いディストピアにつながっている。
    これは、1984を読んだ後でなければ分からないことだった。ビッグブラザーに対するリトルピープル。そして、夫から精神的な暴力を受けた後だから、これが暴力と支配についての物語だということが雷のように私の頭に降ってきた。
    暴力というのは、見た目がどうであろうと、支配を目的として行われる。
    ふかえりの、「リトル・ピープルからガイをうけないでいるにはリトル・ピープルのもたないものをみつけなくてはならない。」という言葉に、椎名林檎の「ありあまる富」を思い出した。誰にも奪えない、盗めない価値について。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.28

  • まるこす

    まるこす

    おもしろくなってきたーーー
    作者と編集が色々頑張って描いたのかなぁ、っていう文章なのかなと感じました。
    定期的に入る設定、条件の説明がかなり繰り返されますが、作者は説明が必要という脳みそにはなかなかならないと思うんですよね。(違うかもだが)
    それにしても、天悟と青豆を交互にかきながら物語をびみょーーーーーに交差させていくの、すごいとしか言いようがないですね。
    どっちかの話を書いて分割してたら書けないような構成だなと思います。
    続きを読む

    投稿日:2023.12.12

  • sono0621

    sono0621

    少し読むのが疲れてきた。
    まだまだわからないことばかり…
    軽めの本を間に挟んでから続きをさがしにいこう…

    投稿日:2023.11.03

  • kazuhisachiba

    kazuhisachiba

    全6巻で構成される本物語の本質は,少なくとも第2巻では観察できないが,ディストピアとは現実世界とかけ離れた話ではなく,現実世界の隣に存在してもおかしくない,そんな身近な危険性を日常生活は常に孕んでいるのだ,と感じるような世界観の構築が,第2巻までで行われている.続きを読む

    投稿日:2023.09.15

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