【感想】沢村忠に真空を飛ばせた男―昭和のプロモーター・野口修 評伝―

細田昌志 / 新潮社
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 4.9
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ブクログレビュー

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  • komaboo

    komaboo

    このレビューはネタバレを含みます

    この本の一番のポイントが野口修が沢村の試合に関してのフェイクを認めて話すか?という点。
    野口は最後までその点に関しては話さなかった。
    ある意味、その点は素晴らしい。
    沢村忠の幻想を彼なりに守った。
    時間が経ったからと何でも話していい訳ではないよなぁ。

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    投稿日:2024.01.18

  • mitu310

    mitu310

    「野口修を書くということは、野口家について書くということです。そこに触れないと意味がない。あなたは、そのことをわかっていますか」

    「野口家というのは特殊な家なんです。古い関係者でも、その背景についてはあまり知らないし、知ろうとしない。蓋をしているものを開けることになりかねないから。いろんなものが出てしまいかねないから。あなたは、そのことを判った上で取材をしていますか」

    作家の安部譲二を自宅に訪ねた際、開口一番迫られたという。

    「喉元に刃物を突きつけられた気がした」と筆者は述懐する。

    その緊張感の中、そして、出版元が決まらない中、取材は10年の時を重ねる。

    執筆途中からは、水道橋博士の「メルマ旬報」での掲載もなされた。

    野口本人に、何度も取材をした。
    武勇伝から語りたくない歴史まで、筆者は鋭く切り込んだ。

    独特のしぐさでたばこももみ消す野口の姿に、昭和のあの大ヒット曲が重なっていく。

    キックボクシングを創設。
    「真空飛び膝蹴り」「キックの鬼」沢村忠の「日本プロスポーツ大賞」。

    芸能界にも進出し、国民的歌手・五木ひろしは「日本レコード大賞」を獲得。

    そのプロデュースを担った歴史上の人物。

    だが、その実像は知られない、語られないままになっている。

    野口本人への評価も、人によって180度違う。

    関係する人々を訪ねて、日本全国を歩きに歩いた。その旅はバンコクにまでもたどり着いた。

    現存する膨大な資料を、執念で追いかけていく。

    そして、一つひとつの事実を確認しながら、歴史の真実へと迫っていく。

    野口本人と、昭和の日本の語られなかった実像が次々と明らかになっていく。

    著者の覚悟と執念に脱帽する。

    野口修の評伝にして、筆者・細田昌志の情熱の旅路に同行できる渾身のノンフィクション。
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    投稿日:2022.04.08

  • yonosuke2022

    yonosuke2022

    格闘技興業の世界っていうのもおもしろいねえ。昭和ってなんだか少人数で日本を動かしてた感じがあるけど、そういうんでもないんだろうとは思うけど。

    投稿日:2022.03.03

  • みや文庫

    みや文庫

    最近読んで一押しな人物評伝。
    ボクシング黎明期に大きな影響を与え世界タイトルマッチをプロモートするまでに興行の世界で大成功をするもその頂点で外為法違反で逮捕され、今度はボクシングから当時はまだそういう言葉すらなかった異種格闘技戦の興行に転身し日本初の異種格闘技興行の極真空手対ムエタイの初の異種格闘技戦をタイで行い、そこからキックボクシングという新種目を着想して国内初の興業を始めようとするも最終局面でエース候補を起用できなくなり、代わりに沢村忠を見出して真空跳び膝蹴りで空前のキックボクシングブームを70年代に生み出すも競走馬の世界でダービー馬を出すという夢に取り憑かれ、さらに今度は芸能の世界に転身して無名の五木ひろしをデビューさせ大成功させ、海外にまで連れていってラスベガスツアーを成功させ、そのツテでエルビスプレスリーの招聘計画やエルビスと五木ひろしのグローバルツアーを画策し、キックボクシングの日本プロスポーツ大賞、日本レコード大賞を総なめにしそして晩年はいろいろなものを喪失していった野口修氏の波瀾万丈すぎる評伝。
    「人生は何事をもなさぬにはあまりに長いが何事かをなすにはあまりに短い」は中島敦の山月記の好きな一節ですが、ここまで濃厚に多ジャンルにいろんなこと人はなすことができるのか?そのエネルギーは何なのか?と驚嘆する評伝。合わせて戦後の昭和の猥雑なほどのエネルギーのあふれた社会の雰囲気が描かれてる作品。そして作者の最終章の締めくくりがグッとくる。格闘技ファンならずとも評伝好きな人はおすすめです。
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    投稿日:2021.06.23

  • kanamyk

    kanamyk

    格闘技に興味が薄いので、前半はちょっと読むのがしんどかった。後半、キックボクシングから芸能に話が移ってきてから、私にとってはがぜん面白くなりました。

    投稿日:2021.06.21

  • tosyokan175

    tosyokan175

    今年の3月26日沢村忠死去。死因肺がん。この本の出版は「沢村忠に真空を飛ばせた男」野口修の死には間に合いませんでしたが「飛ばされた男」沢村の存命中になされたことはよかったような気がします。きっと「キックの鬼」はこの本のこと知らないまま召されたとしても。2010年に取材開始、10年かけて著者ひとりでコツコツ積み上げた、キックボクシングの創始者、野口修の評伝です。水道橋博士とのYouTubeでの対談で、もし本という出口が設定されなければ、今でも取材続けているだろうと笑ってました。ものすごい労作です。今はまったく光の当たらない稀代のプロデューサーの個人史なのですが、結果的には大きな昭和史になっています。取材開始当時、エース沢村を立てたTBSの『YKKアワー・キックボクシング』の対抗番組、日テレ『キックボクシング』の解説者であった安部譲二に言われた「野口家っていうのは特殊な家なんです。古い関係者でも、その背景についてあまり知らないし、知ろうとしない。蓋をしているものを開けることになりかねないから。あなたは、そのことを判った上で取材していますか」という言葉。その通りに、キックボクシングだけではなく昭和(戦前も含め…)という時代の暗渠の蓋をバッカン、バッカン開けていきます。そこにはテロリズム、右翼、スト破り、などの暗い淀んだ水が蠢くように流れ、ボクシング、格闘技、興業は、その支流であったことが明らかにされます。若槻礼次郎暗殺未遂事件から始まるんですから。もちろん関係者の証言が得られず、著者の推論になっているストーリーも多々ですが、逆にそれは昭和の黒い水流は令和にも流れているのかも、と思わせてしまいます。この本が上梓されてよかった、というのは紙の本になることで、ネットという21世紀のアンダーグラウンドから引き揚げられ、正誤も含め批評・批判・研究の対象になるからです。その後のK-1や総合やあるいは芸能も含め「右翼・興業・格闘技」という三点セットで見ていくと理解しやすいのかもしれませんね。その流れの中で、野口修は地下水脈に流される葉っぱのような存在かもしれませんが、彼がいなかったら生まれなかったキックボクシングという存在、月曜日の父には興奮を、金曜日の自分には熱狂を瞬間的に与えてくれたよなぁ…きっと暴力ってすごいエンターティメントだったのかも。アニメ「キックの鬼」に登場する野口社長はカッコいい硬派なナイスミドルだったけど本書の写真で見る彼はニヒルな若々しい優男でした。ある意味、典型的な二代目物語でもあったりするような気もします。などなど…簡単には語りつくせない本です。続きを読む

    投稿日:2021.06.14

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